01040_1962
5万分の1地質図幅説明書
(網走 第 40 号)
北海道立地下資源調査所
北海道技師 杉本良也
北海道技師 三谷勝利
北海道技師 松下勝秀
北海道嘱託 高橋俊正
北海道開発庁
昭和 37 年 3 月
この調査は, 北海道総合開発の一環である, 地下資源開発のための基本調査として, 北海道に調査を委託し, 道立地下資源調査所において実施したものである。
目次 はしがき I. 位置および交通 II. 地形 III. 地質 III.1 地質概説 III.2 地質各説 III.2.1 新第三紀層 III.2.1.1 忠類岩 III.2.1.2 錐山プロピライト・グリンタフ複合岩体 III.2.1.3 奥蘂別集塊岩層 III.2.1.4 越川層 III.2.1.5 幾品層 III.2.1.6 知布泊層 III.2.2 新第三紀の火山岩類(鮮新世 ?) III.2.2.1 小海別岳集塊岩 III.2.2.2 735.3 m 熔岩 III.2.2.3 707 m 熔岩 III.2.3 脈岩 III.2.3.1 プロピライト III.2.3.2 斑状石英安山岩 III.2.3.3 粗粒玄武岩 III.2.3.4 安山岩1 III.2.3.5 安山岩2 III.2.4 第四紀層 III.2.4.1 1,019.6 m 熔岩 III.2.4.2 遠音別岳火山噴出物 III.2.4.3 海別岳火山噴出物 III.2.4.4 屈斜呂火山噴出物 III.2.4.5 段丘堆積物 III.2.4.6 朱円層 III.2.4.7 河岸段丘堆積物 III.2.4.8 崖錐堆積層 III.2.4.9 砂丘 III.2.4.10 現河床氾濫原堆積物 IV. 地史 V. 応用地質 V.1 賤金属鉱床 V.2 硫黄鉱床 V.3 褐鉄鉱鉱床 V.3.1 褐鉄鉱・鉄明礬鉱床 V.3.2 褐鉄鉱床 V.4 砂鉄鉱床 V.5 温泉 文献 Résumé (in English)
5万分の1地質図幅説明書
(網走 第 40 号)
この図幅説明書は, 昭和 34 年と 35 年の両年にわたって実施した野外調査の結果を取りまとめたものである。
野外調査に際しては, 地域を分担した。 杉本・松下は, オショマップ川以北と脊稜東部地域, 三谷は, 奥蘂別川からオチカバケにわたる脊稜西部地区, 高橋は, 海別岳・小海別岳地区を, それぞれ担当した。 なお, 海別岳地域の褐鉄鉱床については, 北海道立地下資源調査所 土居繁雄技師から, 多くの資料の提供をうけた。 明記して謝意を表する。
なお, この地域は, 濃霧地帯にぞくし, 晴天の日が少なく, 加えて道路網の未開発な山岳地帯であるため, 野外調査については満足の成果がえられなかった。
この地域は, 東部北海道のグリーン・タフ地区にふくまれ, 新第三紀の地層および火山岩類が広く分布しているが, 脊稜部には千島火山帯にぞくする第四紀の火山岩類も, かなりの発達をみせている。 したがって, この地域の地下資源としては, 賤金属鉱床・硫黄・褐鉄鉱などが知られ, それらについては, それぞれ調査報告が公表されている。 また, 一般地質については, 門倉三能・北海道総合開発委員会の調査報告書がみられる。 これらの調査報告は今回の調査を進めるにあたって, 参考となった。
この図幅のしめる地域は, 北緯 43°5′0~44°, 東経 144°45′~145°0′で, 知床半島基部の西部をしめる。 行政的には, 西部は, 網走支庁にぞくする斜里町, 東部は, 根室支庁にふくまれる標津町と羅臼町とに, それぞれ稜線あるいは河川を境としてわかれている。
村落は, わずかに東部の冲積原, および朱円堆積面上に発達し, 主として農業, 漁業に従事している。
この地域は, 北海道の3大暗黒地帯の1つにかぞえられるだけあって, うえにのべた村落の発達地区を除けば, 交通網には全くめぐまれていない。 しかし, 最近, 斜里・宇登呂間の海岸線にそって, 自動車道路が開通したので, 地域住民は, 文明の光に浴するようになった。 同時に, 観光地としても脚光をあびるようになった。 さらに, 森林資源の造成のため, 各河川にそって林道が開さくされつつあるので, 将来は交通網にめぐまれるようになろう。
なお, 鉄道路線としては, 斜里から図幅南西隅の越川まで通じている越川線がある。 この路線は, 斜里から標津まで通する予定になっているが, 全線開通の見通しは立っていない。
この図幅内の地形を概観すると, 基盤岩相と密接な関連をもった, つぎの5つの地形区に区分することができる。
㋑ の地形区は, 図幅の3分の2以上の地域を占めている。 新第三紀の火山砕屑岩類および堆積岩類が示す地形であって, 基盤の構成岩相の相違が, 地形上によく表わされている。
この地形区は, 標高 300 m から 800 m 位までの間を占めており, 第 1 図の地形復元図に示されているように, ほかの地区にくらべて開析作用がかなり顕著である。 一般に, 火山砕屑岩類の分布する地域では, 地形は急峻であって, 河川も, 多くの滝をともなった V 字谷をつくる場合が多い。 一方, 堆積岩類の分布する地域では, 小沢の発達がいちじるしいわりに地形は緩やかで, 河川もU字谷をなしている。
㋺ の地形区は, おもに, 火山地形の発達する地域であって, 脊稜山系として, ほぼ NE - SW 方向に連なっている。
地形復元図でみると, ㋑ の開析された地形区上に, 標高 700 m 以上の高さでそびえ立った山容をつくっている。 また, この地形区においては, 小海別岳および 735.3 m 山などのように, 鮮新世末期の活動であろうと考えられる山系では, 火山形態は, かなり開析されており, 小沢の発達も進んでいて, むしろ ㋑ の地形区に類似している。 他方, 海別岳・遠音別岳などの第四紀にはいって活動した山系は, 700 m 以下の開析山地を基盤として, ほぼ完全な円錐形火山形態を残して, 発達している。 そして, 火山特有の放射状谷が形成されている。
㋩ の地形区では, ㋺ の前面に, ㋑ および ㋥ の一部の地形区をおおって, 長い緩傾斜面を形成している。
㋥ の地形区は, 海岸に面して, 海岸線に斜交する NE - SW 方向の延長をもって発達する平坦段丘台地である。 この平坦面は, 標高 20~80 m と 80~160 m および 200~400 m の, 互に不連続関係をもった3つの緩斜面に大別される。 まえの2者は, それぞれ礫層を主体にした堆積物をのせており, 地質上の第2段丘・第1段と, それぞれ一致している。 200~400 m の平坦緩斜面は地形復元図にも示されているように, NE - SW方向に, 点々と平坦面を残して連なっており, 段丘面をしのばせる地形形態をつくっている。 しかし, 堆積物は, 糠真布川中流域の 357 m 独立標高点付近で認められるほかは, 残されていない。 なお, オチカバケ川から南西の地域では, ㋩ の地形区に重複しており, この地域では, 平坦段丘面もおおって, 崖錐緩斜面が形成しているようである。
㋭ は, 幾品川・奥蘂別川そのほかの大きな河川および海岸地帯に発達する現河床氾濫原低地である。 海岸低地は, 峰浜以西の地域では, 広い範囲を占めているが, 以東の地域では, 汀線から 100~200 m の幅のせまい範囲に限られ, すぐ背後に, 段丘崖がせまっている。
河川流域の低地も, ㋥ の平坦段丘地形が広く発達する南西地域では, 広く, かつ, 奥地にまではいり込んでいるが, 北東地域では, 下流域の小区域に限られている。 水系は, 海別岳と 1019.6 m 山を結ぶ脊稜山系を分水にして, 北西流と南東~東流するものとがある。
前者には, 幾品川・ 奥蘂別川・ 海別川・ 糠真布川・ オチカバケ川・ オショバオマブ川・ 金山川・ 遠音別川などの大河川があり, 大小数多くの支流をともなっている。 この水系は, 12~15 km の間で, 海抜 0 m から 800~1,200 m 以上まで急激に高度を増している。 したがって, 河床の傾斜がかなり急で, 多くの滝をつくり, 水流も急流である。
また, 後者には, 植別川, 崎無異川などの大河川および大小の支流がある。 この水系は, 前者にくらべて, 流路延長が長く, 河床面は緩斜面をなしている。 そして流路内には, いくつかの函をつくっている。
この地域を構成している地質系統は, 第 1 表のように区分され, 新第三系およびそれ以降の地層と火山岩類とで構成されている。
新第三系の最下部をしめる忠類層は, 脊稜部に発達し, 標式的なグリーンタフ岩相から構成されている。 そして岩質から基性緑色緑灰岩層・中性~酸性緑色凝灰岩層とにわけられる。 なお, この忠類層中には, 多くのプロピライトが岩脈や岩床として貫入し, プロピライトとグリーンタフとの複合岩相を示す部分をともなっている。
さらに, この岩体を岩脈状に貫ぬく斑状石英安山岩が, 図幅南西隅に小規模に分布する。
忠類層の上位には, 基性~中性の火山砕屑岩を主要構成員とする奥蘂別集塊岩層が整合していて, 脊稜の両翼に発達する。 うえにのべたプロピライトの貫入も, この時期の火山活動の産物と思われる。
集塊岩層とほぼ同時代の越川層は, おもに硬質頁岩で構成され, 図幅全域に広く発達している。 この堆積に引続いて, この地層中に随所にみられる粗粒玄武岩岩床の貫入があった。
この越川層をおおって, 砂岩・泥岩および浮石質凝灰岩を主要構成員とする幾品層と, 礫岩・砂岩を主体とする知布泊層とが累重している。 両地層は, 西翼部の海岸線周辺に発達するが, 東翼部では, 幾品層に相当する層準に, 玻璃質安山岩質集塊岩がみられる。
これらの各地層は, それぞれ整合関係をしめしている。
なお, この地域は, 知布泊層の堆積したのち, 陸化削剥時代にはいり, はげしい造構造動があって, 現在みられる地質構造の大要が決定された。
うえにのべた各地層を不整合におおって, 鮮新世末期の活動と思われる小海別集塊岩・735.3 m 熔岩・707 m 熔岩が, それぞれ図幅の南西隅と中央部の西翼部とに発達している。
第四紀層は, 火山岩類・段丘堆積物・火山灰および冲積堆積層などである。
火山岩類は, 海別火山・遠音別火山などからもたらされたもので, 一般に, 輝石安山岩で特徴づけられる。 これらの各火山は, 脊稜部に位置し, 千島火山帯の西南部にあたり, 国後島と雁行する1つの弧状配列として取扱われるもので, 阿寒知床帯 6) に属する。
段丘堆積物は, 第1, 第2段丘堆積物に, それぞれ区分される。 いずれも西翼部の海岸線付近に発達する。
また, これら段丘堆積物を不整合におおって西部の丘陵ないし平坦地帯には, 朱円層と命名した火山灰・軽石堆積物が比較的広範囲に発達する。
模式地 : 隣接 武佐岳図幅の忠類川流域
分布 : おもに, この図幅の中央脊稜部に帯状に分布し, とくに, 植別川・糠真布川源流付近に, 好露出がみられる。 両河川以北の地域では, この地層は, 断層で越川層と接しているため発達しない。
構造 : 脊稜部およびその北西側では, NS~N 20°E の走向で, 北西に 10°~20°傾斜し, 東側では, NS~N 35°E・10°~30°SE の走向・傾斜をしめし, 温泉付近を通る N 30°E 方向の背斜軸がみられる。 また, 上部の酸性緑色凝灰岩の発達する地区にも, ほぼ同じ走向をもつドーム状背斜構造がみられる。
関係 : 岩質から細分した上・下部忠類層は, 一部は NS の断層で接し, 他の一部は累重関係にある。
また, 上位の奥蘂別集塊岩層とは, 整合である。
層相 : 岩質から下位の安山岩質緑色凝灰岩と石英粗面岩質緑色凝灰岩とに細分される。
安山岩質緑色凝灰岩は, 凝灰岩を主要構成員とするが, 諸所に, やや粗粒の緑色砂岩や泥質頁岩と互層し, 厚さ 5~10 cm の縞状岩層を形成する。 また, 海別温泉の背斜軸付近には, 地質図に塗色したように, 集塊岩および角礫凝灰岩をはさんでいる。
この凝灰岩は, 通常淡緑色を呈し, 浮石片をふくみ粗鬆である。 ときには, 植別川源流付近の支流にみられるように, 緻密堅硬となる場合, ややろう盤化して漂白された部分と 未分解の淡青色の部分とが交雑して縞模様状を呈することもある。
夾在する緑色砂岩は, 細粒から粗粒の凝灰質砂岩であり, 珪長質物にとむ。 また泥質頁岩は, 暗灰色を呈し, 砂岩と互層するときは, 層理は明瞭であるが, そうでない場合は塊状となる。
これらの堆積岩類から, 化石はえられなかった。 また, 夾在する集塊岩の岩礫は, 玄武岩質安山岩で, おおむね拳大で角ばっており, 暗黒色を呈し, 堅硬である。
各岩礫の間は暗灰色の凝灰質物で充塡され, まれに, 方解石の細脈が縦断している。
石英粗面岩質緑色凝灰岩は, 凝灰岩を主要構成員とし, 石英粗面岩や角礫凝灰岩ならびに頁岩を夾在する。
凝灰岩は, 一般に淡緑色を呈し, 石英の微粒が散在する。 ガラスの多くは, 繊維状の緑泥石・炭酸塩鉱物・粘土質物におきかえられており, 石英は, 融蝕形ないし破片状の稜角形を呈する。
石英粗面岩は, 流理構造が顕著でなく, 石英の斑晶が目立ち, 淡緑色を呈し, 緻密堅硬である。
頁岩は, 暗灰色を呈し, 硬質で板状層理をしめすものが多い。 また, 珪藻質有機物片をふくんでいる。
武佐岳図幅において, 筆者の一人の杉本は, うえにのべた岩層, ならびにあとからのべる奥蘂別集塊岩層に相当する各地層をふくめて, 忠類層と命名した。 しかし, 後述するように, 奥蘂別集塊岩層と越川層とが同時異相の関係にあることが明らかとなったので, 緑色凝灰岩で特徴づけられる上述の2岩層を忠類層と再定義して使用することにした。
模式地 : 隣接 武佐岳図幅の錐山・カスシナ川流域
分布 : 奥蘂別川上流地域に分布し, 北部では, その発達が貧化する。
構造 : 通常, NS~N 10°W, 20°~50°E~W の走向・傾斜をしめし, ゆるやかな褶曲構造を形成している。
関係 : プロピライトが, 密に複雑な岩脈・岩床状をなして, 下部 忠類層の中に貫入したものであるが, 5万分の1地質図では, 細分できないので, 複合岩体として取扱った。 この種のプロピライトは, 奥蘂別集塊岩層中にも岩床状をなして産するので, その迸入時は, 奥蘂別集塊岩層堆積時の火成活動と関係するものであろう。
層相 : プロピライト・安山岩質緑色凝灰岩を構成員とする。
プロピライトは, 濃緑色を呈し, 緻密堅硬である。 また, 外観 細粒と粗粒とのものとがあり, その岩質は必ずしも一定ではなく, 不規則である。 鏡下では, 玄武岩ないし粗粒玄武岩の石理をもち, 緑泥石化・炭酸塩化作用が顕著である。
うえにのべたように, この岩石はいちじるしい変質作用をこうむっているので, その発達地域には, 鉱床・鉱兆地がみられる。
模式地 : 奥蘂別川中流域
分布 : おもに, この図幅の西南部および東南部地域に分布している。 そして, 幾品川・奥蘂別川・糠真布川・崎無異川・植別川支流などの流域で良好に発達している。
糠真布川から北部の地域では, この地層は急激に貧化し, オチカバケ川流域では尖減している。
構造 : 脊稜山系の北西側では, NS~N 40°E の走向で, 北西に 20°~50°傾斜した単斜構造をなしており, また南東側では, N 20°E~N 10°W・10°~30°SE~NE の走向・傾斜を示している。 なお, 幾品川流域には, 小さな背斜ができている。
関係 : 下位の忠類層とは, 緑色凝灰岩, プロピライト~プロピライト質基性安山岩を挾在する量比で区別した。 したがって, 岩相は漸移関係をもっている。 それで地層境界は必ずしも同時間面を意味していない。
層相 : プロピライト・ 集塊岩・ 角礫凝灰岩・ 凝灰岩および熔岩などの火山砕屑岩がおもな構成岩相であって, 硬質頁岩・泥岩・凝灰質砂岩などをはさんでいる。
プロピライトは, 植別川本流流域に発達し, 堅硬緻密で, 暗緑色ないし暗黝色を呈する。 しばしば, 種状節理 [ ? ] の発達がみられ, 小規模な, 黄鉄鉱鉱染帯を随伴する。
集塊岩は, 堅硬な溶岩状のものと, 粗鬆な凝灰質なものとにわけられる。 前者は, 暗灰色~黒色を, また後者は, 淡灰色~灰色の色調をもっている。
礫は, 人頭大以下の角礫が大半を占めているが, ときに径 70 cm~1 m に達するものもふくんでいる。 また, 粗粒緑色凝灰岩をレンズ状塊でふくんでいる。
角礫凝灰岩は, 灰褐色~暗緑色の色調を示し, 粗鬆で, 浮石礫をかなりふくんでいる。 礫は, 大部分が径 5 cm 以下の安山岩角礫であるが, 一部に緑色凝灰岩・泥岩などの亜円礫をまじえている。 粗粒玄武岩の岩床との接触部付近では, レンガ色の色調の堅硬な部分がつくられ, また, 一部は緑泥石化作用をこうむっている。
凝灰岩は, 淡緑色を呈し, 浮石礫を多くふくんだ緑色凝灰岩と, 淡灰色を呈し, 板状層理の発達した泥質凝灰岩とがある。 いずれも, 集塊岩や角礫凝灰岩中に, 不連続岩相としてはさまれている。
硬質頁岩および泥岩は, 上位の越川層の構成岩相と同じである。
この地層は, 良好な発達をもつ幾品川・奥蘂別川・糠真布川・崎無異川・植別川の各流域で, それぞれ構成岩相を異にしている。 大局的にみると, 植別川本流以北では, 硬質頁岩をはさむプロピライトが卓越し, 幾品川および崎無異川上流では, おもに角礫凝灰岩・凝灰質砂岩・泥岩で構成され, 奥蘂別川では, 下部が集塊岩溶岩の卓越した岩相, 上部は集塊岩・角礫凝灰岩・凝灰岩などの不規則互層岩相をもち, 崎無異川中流および植別川支流では集塊岩を主要構成員としている。
また, 糠真布川では, ほとんどが集塊岩相であって, 数帯の硬質頁岩相をはさんでいる。
この地層は, 南に隣接する武佐岳図幅 13) において, 忠類層の部層として取扱った 盗伐沢角礫凝灰岩層と薫別川集塊岩層との2部層と同じ層準の岩相である。
層厚 : 幾品川で 150 m 以上, 模式地で 2,500 m, 糠真布川で 1,150 m 前後の厚さを示している。
模式地 : 金山川流域
分布 : 下位の奥蘂別集塊岩層の発達の悪い北東地域に, 広い範囲を占めて分布し, 南西地域では, 薄化している。
構造 : この図幅の南西地域では, N 10°~40°E の走向で, 北西に 20°~35°傾斜した単斜構造をなし, 幾品川流域には, 小さな背斜および向斜構造が形成されている。 北東地域では, N 10°~20°E 方向に延びる大背斜構造をとり, 15°~50°の傾斜を示している。
関係 : この地層の基底面は, 下位の奥蘂別集塊岩層の火山砕屑岩類から 厚い硬質頁岩と泥岩の互層岩相に移化する部分においており, 地層は整合関係をもっている。 そして, 糠真布川流域では, 奥蘂別集塊岩層とこの地層の一部が指交する状態があらわれている。
また, オチカバケ川およびその北東地域では, 越川層の硬質頁岩が, 忠類層の緑色凝灰岩と直接している。
このような上下地層の接触状態からみて, この地層と奥蘂別集塊岩層は, 側方に指交する関係をもった, ほぼ同時期の地層と考えられる。
層相 : おもに硬質頁岩と泥岩から構成され, 砂岩・凝灰岩および堅硬凝灰質泥岩や集塊岩をともなっている。
硬質頁岩は, 暗灰色の色調をもち, 厚板状層理を示している。 白色の浮石粒を多くふくみかなり凝灰質である。 風化すると, 角板状に破砕するが, ときに介殻状断口をとるものもみられる。
泥岩は, 暗灰色で, やや硬質である。 板状層理を示すものが多い。 分級が悪く, 砂粒や細礫を交えている。 また, 珪藻質有機物片をふくんでいる。
砂岩は, 中粒~細粒のもので, やや硬質である。 帯青灰色~淡灰色の色調を示している。 かなり凝灰質であり, ときに浮石礫や安山岩角片をふくんでいる。 一部の岩相に, 縞目状葉理が発達している。
凝灰岩は, 浮石にとむ粗鬆なものと, やや堅硬な泥質凝灰岩とがみとめられる。 前者は淡灰色ときに淡緑色の色調を示した塊状岩相であるが, 後者は灰白色で, 角板状層理を示している。
集塊岩は, 遠音別川上流にみられ, 拳大の亜角礫が大半をしめ, その岩相は, 奥蘂別集塊岩と同様である。
堅硬凝灰質泥岩は, 暗飴色の色調をもった玻璃質泥岩である。 ひじょうに堅硬であって, 破砕面は介殻状断口をとり, 黒曜石と類似している。
この地層は, 図幅内の脊稜山系の北西側に広く分布するが, 層相は, 地域的に多少異なっている。
地層の発達状態は, 奥蘂別集塊岩層の厚く発達する南西地域で悪く, 北東地域で厚く発達している。
南西地域では, 硬質頁岩と泥岩との板状互層であり, 上部で砂岩や泥質凝灰岩をまじえている。 また, 互層中には, ときに厚さ 30 cm~1 m の暗飴色の堅硬凝灰質泥岩をはさんでいる。 なお,局部的に層間褶曲の発達がみられる。
北東地域では, 中・上部は硬質頁岩・泥岩および砂岩の互層で, ときに砂岩をまじえている。 また, 中・下部には淡緑色の浮石質凝灰岩を数帯はさんでいる。
そして, これら両地域の中央部を占める糠真布川では, この地層の一部と下位の奥蘂別集塊岩層の一部とが互層し, また金山川上流では, 後者に相当する地層が越川層の硬質頁岩中にはさまって発達している。
全域をつうじて, 各所に泥灰質団球を散点的にふくんでいる。
化石 : 化石は団球内または泥岩中からわずかに産出する。 しかし, 鑑定が可能なものは, ほとんどえられなかった。
層厚 : 幾品川で 270 m, 奥蘂別川で 170 m, オチカバケ川で 1,520 m, オショパオマブ川で 1,300 m 以上, 金山川で 1,350 m 以上の層厚を, それぞれ示している。
模式地 : 幾品川下流域
分布 : 幾品川・奥蘂別川・オチカバケ川のそれぞれ下流, 崎無異川中流域および知布泊~オモタイ沢口間の海岸沿いの地域に発達している。
構造 : 下位の越川層とほぼ一致した構造を示している。 なお, 知布泊の沢およびオチカバケ川では, 小さな背斜・向斜構造を形成している。
関係 : 下位の越川層とは硬質頁岩の上限で境している。 両地層の関係は, 幾品川とオチカバケ川でよく観察できる。
第 4 図に示したように, 両地層の境界面はいちじるしい不規則面をつくっている。
越川層の最上部岩相は, やや硬質の板状泥岩であって, 薄い凝灰岩層をはさんでいる。 また, 幾品層の基底岩相は, 礫岩にとむ凝灰質砂岩との互層であって, 礫岩の構成礫は, 大半が角~亜角形の硬質頁岩で, ほかに浮石質凝灰岩・砂岩・安山岩などである。 そして, この基底岩相の基底面と越川層最上部の凝灰岩との間の地層間隙が漸次薄化している。 また, 両地層の傾斜は, わずかに斜交している。
ここでは, 岩相が板状でやや硬い頁岩から泥岩に移り変る部分に, 厚さ 1.5 m の含礫砂岩層をはさんでいる。 この砂岩中には, 下位の硬質頁岩と同質の角~円形礫を多数ふくんでいる。 ほかに, 浮石質凝灰岩や安山岩の円礫も, かなりふくんでいる。 この礫質砂岩の基底面は, 下位の地層層理面と平行している。 また, この地層の上下の岩相の走向・傾斜はほとんど変らない。
以上の2地点でみられる地層累積関係は, 基底岩相中に 下位地層から供給されたと思われる硬質頁岩の角~円形礫を多くふくんでいる。 この事実は, 幾品層の堆積の初めに, 越川層の一部が削剥を受けたことを示している。 しかし, 両地層の累重状態は図幅内のほかの地域ではほとんど整合的であって, 構造上の相違はみとめられない。
それで, この関係を今後の広範囲の観察結果に待つことにする。
なお, 図幅南東隅に発達する集塊岩は, 奥蘂別集塊岩をおおっている。 しかし, 崎無異川流域では, 浮石質凝灰岩・シルト岩相と漸移して, 上部に発達する。
層相 : 全層をつうじて, 泥岩・砂賀泥岩および細粒砂岩の互層から構成され, 浮石質凝灰岩・凝灰質砂岩・堅硬な暗飴色玻璃質泥岩などをはさんでいる。 しかし, 図幅南東隅は, 集塊岩で代表される。
泥岩は, 暗灰色の色調をもち, 塊状を示しているが, 一部はやや硬質で厚板状層理が発達している。 風化すると, 淡灰色となり, 茶褐色の年輪状縞目が形式されている。
砂質泥岩は, 暗灰色で, 偽層葉理が発達している。 そして「むらくも状」の偽層葉理をもった細粒~中粒砂岩の不規則塊をふくんでいる。
細粒砂岩は, 淡緑灰色の色調をもち, 塊状で偽層葉理を示している。 分級が悪く, いく分凝灰質であって, ときに浮石礫をふくんでいる。
この地層の正常堆積岩類は, 下位の地層にくらべて, 岩相の地域差はほとんどみられない。
基底岩相は, まえにのべたように, 幾品川とオチカバケ川で硬質頁岩礫を主構成員とした礫岩が発達している。 そのほか地域では, 基底岩相はみとめられなかった。
中部から下部の岩相は, 泥岩と砂賀泥岩の互層であって, とくに中部で砂質泥岩が卓越している。 互層中には, 浮石質凝灰岩と凝灰質砂岩の薄互層帯を数枚はさんでいる。
上部は, 細粒砂岩の卓越した砂質泥岩と砂岩との互層で, 浮石質凝灰岩や凝灰質砂岩を介在している。 また, 一部に細粒礫岩をはさんでいる。
この上部の岩相は, 偽層の発達がいちじるしく, ときに, 白色の浮石細片による縞状層理がみとめられる。
全層を通じて, 泥灰質団球, 硬質頁岩や泥岩ときに安山岩などの円形細礫および化石をふくんでいる。
集塊岩は, 黒色安山岩塊を暗灰色の砂質火山灰で凝固したものである。 岩礫は拳大である。 新鮮で, 鉄黒色を呈し, やや光沢をもっている。 その中に斜長石の斑晶が, ごくわずかにみとめられるが, 有色鉱物は目立たない。
この地層に対して, 1953 年 佐々保雄 3) が初めて, 幾品層と命名した。 しかし, 地層に対する明確な定義は, なされなかった。 以来, 同氏および2, 3の調査者の報告書 3), 4), 5), 7) に幾品層という地層名が用いられてきたが, 岩相上および古生物上で区別されなければならない地層を, 同じく幾品層として取扱っている場合が多い。
したがって, この図幅では, 佐々の幾品層を再定義して, 新たに幾品川流域を標式地とした地層に対して, 幾品層と命名する。
化石 : 全層を通じて, 二枚介・巻介および珪藻類の化石を産出する。 産出化石中, 同定できたものはつぎのようである。
層厚 : 幾品川で 550 m, 奥蘂別川で 520 m 以上, オチカバケ川で 300 m, 海岸で 370 m の層厚をそれぞれ示している。 全域をつうじて, 下位の越川層の厚い地域では, この地層の層厚は薄くなっている。
模式地 : オチカバケ川口からオタモイ沢口までの間の海岸
分布 : 知布泊からオタモイ沢口までの間の海岸沿い, オチカバケ川下流および奥蘂別川下流域などに, 小規模な範囲に発達している。
構造 : 幾品層の上位に続いて, 知布泊海岸では, N 10°~25°E・35°~50°NW の走向・傾斜, オチカバケ川から海岸にかけた地域では, N 10°~20°E 方向の軸延長をもった向斜構造と背斜構造を形成している。
関係 : この地層の下限は, 下位層の細粒砂岩から礫質岩相に移る部分においており, 幾品質とは整合漸移している。
層相 : 礫岩・含礫砂岩・砂岩および凝灰岩から構成されている。
礫岩は, 大礫質から細礫質の岩相の不規則互層である。 礫は, 径 20 cm 以下ときに 50 cm 前後の円礫~亜円礫であって, 礫量は多く軟弱である。 礫種は, 安山岩にとみ, ほかに硬質頁岩・泥岩・凝灰岩などをともなっている。 また, 砂岩相をレンズ状にふくんでいる。
砂岩は, 帯青灰色の色調をもち軟弱である。
全般に分級が悪く, 偽層葉理が発達している。 礫岩や含礫砂岩相をレンズ状にふくんでいる。
この地層は, 基底に, 厚さ 10 m 以上の巨礫をふくむ軟強な礫岩が発達している。
全層が礫質岩と砂岩との互層であって, 偽層層理がいちじるしい。 ときに乱堆積岩相を示している。
化石 : 現在のところ発見されていない。
層厚 : 知布泊海岸で 220 m 以上の層厚を示している。
この地層は, 小海別岳付近(海別川と奥蘂別川にはさまれる地域)に良好に露出している。 この地層は, 奥蘂別川で忠類層 奥蘂別集塊岩層を不整合におおい, 海別川で海別火山噴出物に不整合でおおわれている。
この地層は, 厚い集塊岩層(小海別岳頂上付近では 400 m をこえる)で特徴づけられ, 10 線沢上流では1枚, 奥蘂別川より西北方にはいる小沢では3枚の, 中性安山岩の溶岩を挾在するが, 12 線沢および海別川流域では, 集塊岩だけから構成されている。 また, この集塊岩層の噴出の中心は, 挾在する溶岩流の傾斜から推定すると, おそらく小海別岳の頂上付近にあると思われる。
この地層の地質時代が, 新第三紀鮮新世であるか, あるいは第四紀洪積世であるかを決定できる十分な確証はない。 しかし, 小海別岳が地形的にいちじるしく開析されており, しかも, この地層を貫ぬいている岩脈が, 全体としてかなり緑泥石化作用をうけている。 これらのことを考慮すれば, 鮮新世とする方がより適切であろう。
集塊岩の岩質は, 凝灰質の基質の中に鶏卵大~拳大の安山岩礫を多数ふくんでおり, まれに人頭大の礫をふくんでいる。 この礫は, 挾在する安山岩熔岩と同質であって, 灰黒色~黒色で斜長石, 輝石の斑晶を散点している。
この礫を鏡下で観察すると, 次の通りである。
735.3 m を中心として分布し, 糠真布川中流の一支流に好露出しているほかは, この岩石からなる崖錐が広く発達しているにすぎない。
下位の越川層を不整合におおっているが, 崖錐堆積物が発達するために, 段丘堆積物やほかの地層との関係は, 全く不明である。 したがって, その噴出時代が, 新第三紀鮮新世であるか, 第四紀洪積世であるかは明らかでない。 ただ, いちじるしく地形が開析されているので, 鮮新世の可能性が強い。
この岩石は, 暗灰色の粗鬆な岩石で, 斜長石や有色鉱物の斑晶の目立つ含かんらん紫蘇輝石普通輝石安山岩である。
鏡下で観察すると次のようである。
707.5 m を中心として分布し, 植別川の支流に好露出がみられる。
下位の奥蘂別集塊岩層およびこれを貫ぬくプロピライトを不整合におおって発達する。 この熔岩も, 地形の開析度から, その噴出時代は, 735.3 m 熔岩と同時代であろうと考えられる。
灰黒色緻密で, 斜長石・輝石の斑晶を肉眼でみとめることができる, 普通輝石紫蘇輝石安山岩である。
崎無異川上流の北根室鉱山の周辺や植別川中流に標式的な露出がみられ, ほぼ南北方向に帯状に発達する。
この岩石は, 奥蘂別集塊岩層の中に岩床状に貫入したものである。 その迸入時代は, 岩相と岩質上とから, 奥蘂別集塊岩層をもたらした火成活動に引続くものと解されるので, ほぼ越川層堆積時に相当しよう。 その岩質は, 錐山プロピライト・グリンタフ複合岩体のプロピライトと同様である。
奥蘂別川上流の2ヵ所に, 好露出がある。 錐山プロピライト・グリーンタフ岩体中のグリンタフを貫ぬき, その接触部付近は, 珪化・黄鉄鉱化作用がいちじるしい。
その迸入は図幅内の火成活動からみて, 奥蘂別層堆積以後に行なわれた, とみるのが適当である。
この岩石は, 淡緑白色を呈し, 粗粒堅硬で, 新第三紀迸入の完晶質岩石の辺縁相に相当するような岩相をしめす。
鏡下で観察すると, 次のようである。
越川層を貫ぬく岩脈および貫入岩床として, 越川層の分布する地域には, 随所に露出する。 概観すると, 岩床状のものが圧倒的に多く, なかには, 玄武岩といわればならぬものもみられるが, 粗粒玄武岩で代表される。
この粗粒玄武岩が幾品層に迸入している事実は, またみとめられていないので, その貫入は, 幾品層堆積以前に行なわれたものと考えられる。
この岩石の新鮮なものは, 柱状節理が発達し, 黒色を呈するが, 多くは多少変質して帯緑黒色をしめす。 また, 風化すると, 玉ねぎ状石理をしめして, 集塊岩相をおもわせる。
糠真布川中流の一支流に露出し, 越川層を岩床状に貫ぬき, 海別岳火山噴出物におおわれている。 その貫入時期は, 新第三紀末と考えられる。
この岩体は, ひじょうに小規模なもので, 普通輝石紫蘇輝石安山岩からなる。
この岩脈は, 12 線沢左岸に, 高さ 50 m の断崖をつくって露出している。 小海別岳集塊岩層を貫いているので, その貫入は, 鮮新世 ? であろう。 その露頭においては, 乱れた細かい柱状節理がみられ, 岩質は黒色緻密で, ほとんど斑晶はみとめられない。
この岩石を鏡下で観察すると, 次の通りである。
この図幅内に発達する第四紀層は, 洪積世の海別火山噴出物・ 屈斜呂火山噴出物・ 段丘堆積物・ 朱円層などや冲積世の河岸段丘堆積物・ 崖錐堆積物・ 砂丘・ 冲積氾濫原堆積物などである。
1,019.6 m から北部につらなる脊梁にそって, 比較的広範囲に分布する。
下位は, 忠類層・奥蘂別集塊岩層・越川層を不整合におおい, 上位は, 遠音別岳火山噴出物の基底熔岩におおわれる。 その活動期を決定する資料にとぼしいが, 海別岳・遠音別岳火山と同様に脊梁部に位置し, かつ, 第三紀層が, 標高 700 m まで露出しているので, 第四紀洪積世として取扱った。 たが, 両火山よりも山体が開析されているので, 旧期の形成であろう。
暗黒色を呈し, 堅硬にして, 斑晶の目立たない含かんらん石紫蘇輝石普通輝石安山岩である。
図幅北東隅より南部にかけて広範囲に分布し, 下位の越川層およびこれを貫ぬく粗粒玄武岩を不整合におおって発達する。 しかも, この基盤は, 標高 600 m 付近までみられ, 火山噴出物の厚さは, 図幅内では, 300 m 位となる。 その噴出時代は明確ではないが, 地形上 山体の開析が相当進んでいるので, いちおう洪積世とした。 隣接の春苅古丹図幅の調査が進むにつれて, 噴出時代やその機構などについての火山発達史がより明確に把握されよう。
図幅北東隅に小規模に分布し, 隣接 宇登呂図幅に連なるものである。 粗粒玄武岩を不整合におおい, 基底熔岩におおわれる。
一般に無層理で, 拳大の亜角礫の安山岩塊の間を, 黄灰色の同源の凝灰質物が充塡する。 岩塊は均質で, 暗灰色を呈し, 粗鬆である。
図幅南東隅に分布し, 隣接 宇登呂・春苅古丹・羅臼の諸図幅に連なるものである。 すでにのべたように, 越川層は標高 600 m 付近までに分布するが, これを不整合におおい, 集塊岩を整合におおって発達する。
この熔岩は, 通常柱状節理が良く発達しており, 斑晶が目立ち, 上述の岩石よりも珪長質である。
基底熔岩の南東部にドーム状をなして凸出し, 山麓は崖錐堆積物でおおわれている。 この熔岩は, 暗灰色を呈し, 堅硬で, 斜長石・有色鉱物の斑晶がみとみられる含かんらん石普通輝石紫蘇輝石安山岩である。
海別岳火山は, 忠類層, 奥蘂別集塊岩層および小海別岳集塊岩層をおおって噴出した火山である。 火山構造の見地から基盤岩類をみると, 植別川源流において, 忠類層が海抜 1,050 m 付近までみられる事実が注目される。 この事実は, 火山噴出物の厚さがひじょうに薄い -- わずか 350 m しかない -- ことを示しており, 興味深い。 また, 地形的にもいちじるしい非対称地形を呈しているが, これは, 海別岳火山が, 基盤岩類で構成された山地の低所を埋めて, おもに西方に熔岩を流したことに, 原因を求めることができる。
次に, 噴出中心について検討してみよう。 流紋岩質熔結凝灰岩は, 噴出中心は不明である。 下部熔岩は, 植別川源流部に露出がみられないことから, 海別岳頂上より西北方にあったと推定される。 しかし, 中部および上部熔岩は, 熔岩流の傾斜から, 海別岳頂上付近にあったと考えられる。
海別岳火山の噴出時代は, 次の3つの理由から, 洪積世と考えられる。
この熔結凝灰岩は, 植別川源流部に小露出しかみることができず, 厚さ, 噴出源などは不明である。 また, この熔結凝灰岩は, 海別川およびシュマトカリベツ沢において熔岩流にはさまれている事実がないので, 下部熔岩よりも古期の噴出物と思われる。 この熔岩凝灰岩は, 強い熔結作用をうけており, 灰白色であって, 斜長石・石英・角閃石・黒雲母の斑晶をふくんでいる。
この岩石を鏡下で観察すると次の通りである。
この噴出物は, 海別岳西北麓に好露出をみる。 この噴出物は, 挾在する集塊岩によって, 少なくとも3枚の熔岩を識別できる。 熔岩は, 一般に, 板状節理がよく発達しており, 岩質は灰黒色緻密で, 斜長石・輝石の斑晶を肉眼的にみとめることができる。
この岩石を鏡下で観察すると, 次の通りである。
この噴出物は, 海別火山の主体を構成し少なくとも6枚(おそらく 10 枚以上)の熔岩からなり, 砕屑物をはさんでいない。 糠真布川源流部では, この噴出物の中部に, 灰長石大晶(最大 5 cm, 平均 1 cm)を多量にふくむ熔岩流を2枚はさんでいる。 この特徴的な熔岩は, 現在までの調査では, 糠真布川源流部にしか見出すことができない。 灰長石大晶をふくむ熔岩は, 多孔質赤褐色の基質中に, 径 1 cm 前後の灰長石大晶をきわめて多量にふくんでいる。 この熔岩の基質の赤褐色の部分は, 風化がいちじるしく, 組織および構成鉱物を識別することが困難である。 これら2枚の, 含灰長石大晶の熔岩流のうち, 上位の熔岩流の上下には, まれに灰長石大晶(最大 3 cm, 平均 1 cm)をふくむ熔岩流(灰長石大晶をふくむ点をのぞけば, この噴出物の一般的な岩相を示している)がみられ, リズミカルな火山活動を示すものとして興味深い。
これらの熔岩は, 灰長石大晶を多量にふくむものをのぞいては, 黒色緻密で, 板状節理がみられることもある。 また, 肉眼的に, 斜長石・かんらん石・輝石の斑晶がみとめられる。
この岩石を鏡下で観察すると, 次の通りである。
この熔岩は, 海別岳頂上付近に小規模に露出しており, 板状節理がみられる。 岩質は, 黒色緻密であって, 肉眼的に斜長石・輝石の斑晶が識別できる。
この岩石を鏡下で観察すると, 次の通りである。
模式地 : 西に隣接する斜里図幅内の幾品川流域
分布 : この図幅の西隅の幾品川下流域にわずかに分布している。
構造 : N 60°~70°W・10°~17°NE の走向・傾斜を示している。
関係 : 下位の新第三紀層とは, 走向・傾斜を異にしており, 幾品川では, 新第三紀最上部の知布泊層を欠いて, 幾品層と直接している。 すなわち, 新第三紀の各地層を斜交不整合におおっている。
層相 : 灰白色の色調をもった軟弱な軽石質堆積物と細粒火山灰層との乱堆積状互層であって, ときに, 礫層・中粒~細粒砂層および有機質泥層を介在している。 軽石堆積物中には, 木炭化した木幹や埋木などをふくんでいる。 この地層の基底部分は砂礫にとむ火山砕屑岩相であって, 安山岩・硬質頁岩凝灰岩・泥岩などの礫をふくんでいる。
砂層や泥層は, レンズ状岩相でふくまれている。
この図幅で屈斜呂火山噴出物として取扱った地層は, 上にのべたように, 明らかに水流の影響を受けた水成堆積物であって, 隣接図幅地域 10), 14) 内に発達する同層準の熔結凝灰岩~浮石流岩相とは, 岩相がひじょうに違っている。
層厚 : 幾品川流域で 150 m 以上に達している。
この図幅内では, 地形でのべたように, 現海岸線と斜交して, 3段の連続する平坦面が形成されている。 これらの各平坦面は, 河床面からの比高および開析状態にかなりの相違をみせている。
これらの平坦面の中で, もっとも古い標高 200 m から 400 m 付近までほぼ連続する平坦面は, 糠真布川中流の 357 m 独立標高点付近で, 段丘堆積物と思われる厚さ 5 m 前後の礫層を残している 17) ほかは, 崖錐堆積物でおおわれるが, 開析が進行して, 礫層はみとめられなかった。 したがって, この図幅では, この平坦面をつくっていたと思われる段丘堆積物は省略した。
図幅内で広い範囲に追跡できる高位の段丘堆積物であって, NE~SW 方向の延長をもった 80 m~160 m の平坦面をつくって, 発達している。
知布泊からオチカバケ川口にいたる間の, 海岸沿い台地に標式的に発達している。
岩相は, 大礫~細礫質礫相と砂相とで構成されている。 礫種は, 安山岩を主体とし, ほかに硬質頁岩, 砂岩, 泥岩, 軽石などをともなっている。 礫径は, 30 cm 以下のものが大半を占め, ときに 50 cm 以上の巨礫もふくまれている。
この段丘堆積物の基底面は, 現河床から 3~8 m の高さをしめしている。
この堆積物は, 知布泊からオタモイ沢口の間の海岸崖では, 20°前後の傾斜角をもった盆状向斜構造を形成している。 この構造軸は, 基盤をなす新第三紀層の向斜軸と斜交している。
層厚は, 5 m 以上に達している。
第1平坦段丘面の前面で, これに並列した標高 20~80 m の平坦面をつくって発達している。
岩相は, 砂礫層を主体とし, 不連続な砂層, 泥層を介在している。
礫層は, 亜角~亜円形で, 径 30 cm 以下の礫を砂や泥で充塡しており, 礫種は, 第1段丘堆積物の礫層と変りない。
この堆積物の基底面は, 現河床から高さ 3 m 以下の地点を占めているが, 奥蘂別川下流の6号付近では, 現河床面が, 礫層の中位にあって, 基底面は下降している。 このことから, 第1段丘堆積物と同じく, この堆積物も向斜構造を形成していることがうかがわれる。
層厚は, 3 m 以上に達している。
この地層は, 西に隣接する斜里図幅の台地やデルタ地域に広く分布する地層と同層準であって, この図幅内の西方地域の平坦段丘面および背後地の丘陵山地を広くおおって発達している。
構成岩相は, 大半が, いちじるしく偽層した軽石質堆積物であり, 最上部に 50 cm ていどの火山灰質赤土をともなっている。
また, 堆積物中に, 厚さ 10~30 cm の軽石層を2枚はさんでいる。
この堆積物は, 岩相上ではまえにのべた屈斜呂火山噴出物と類似している。 しかし, 朱円層中の葉理面は, ほとんど水平であり, 固結度もかなり異なっている。
この地層を, 隣接地域に追跡すると, 斜里図幅 14) では止別砂礫層と斜里層, 斜里岳図幅 10) では札鶴層, さらに西方の小清水図幅 11) では美幌層と, それぞれ命名された岩相の一部または全部に連続している。 また, 小清水図幅地域で島田が美幌層と呼んだ岩相は, 美幌や女満別地域に標式的に発達する美幌層に対比されており, 岡崎 9) は, この地域で美幌層中に介在される泥炭および泥層の花粉考察の結果, 北海道東部地域の釧路付近を標式地とする釧路統に対比している。
この図幅内では, 朱円層は, 奥蘂別川下流域で, まえにのべた第2段丘堆積物をおおって発達していて, 釧路統に対比することは困難である。
一方, 朱円層および同層準の止別砂礫層・斜里層 14) は, この図幅および斜里図幅内では, 標高 20 m 以上の平坦台地を形成している。
これらのことから, この図幅では, 朱円層の地質時代を, 洪積世末期と考えておく。
層厚 : 奥蘂別川下流域で, 8 m 以上の層厚を示している。
幾品川の中流 -- 隣接 武佐岳図幅との境界付近 -- や奥蘂別川流域に, 小規模に発達する。 そのほか, 金山・オショバオマブ川にも, この種の堆積物がみられるが, 地質図に記入するほどの規模でないので, 削除した。
構成岩石はほとんど大差なく, 安山岩礫を主とする。 礫の大きさは, 頭大から拳大のものが多く, その間を未凝固の砂質物が充塡している。
海別岳・小海別岳・735.3 m 山などの火山噴出物の周辺を取り巻いて, 広い範囲に緩斜面をつくって発達している。
朱円層の上位をおおっている。 また, この堆積物の末端は, 標高 180 m の地点にあって, 第1段丘堆積物を不整合におおっている。
構成岩相は, その背後山地を構成する火山岩角礫であって, 径 50~10 cm の岩塊を砂礫で充塡している。
奥蘂別川口付近の海岸線に平行して, 現汀線から 50~200 m 後退して分布している。
この砂丘は, 西に隣接する斜里図幅内からの連続であって, 2列で発達している。
標高は, 10~15 m である。
海岸低地および現河川流域にそって発達している。
砂・礫・粘土を構成岩相とし, ときに泥炭を介在している。
これまでのべてきたことに基づいて, この地域の地史を推察する。
知床半島地域の新第三紀中新世中期以前の地史については, 地層の発達がないので明らかでない。
この地域にみられる最初の堆積物は, 緑色凝灰岩および角礫凝灰岩を主体にして, 泥岩や砂岩を混えた海成火山性堆積層の忠類層である。 この火山砕屑物をもたらした火成活動は, 海底火山噴出であって, その岩石学的性質は, 初期の中性~塩基性の岩石から後期の酸性へと, 順次変移している。
忠類層の堆積に引き続いて, 奥蘂別集塊岩層および越川層の堆積がおこなわれた。 この両地層は, ほぼ同じ時期の地層であって, この図幅の南部地域では, いちじるしい火成活動によって, 塩基性~中性岩石の集塊岩や溶岩が海底で噴出した。 一方, 北東部地域では, 凝灰質泥岩(硬質頁岩)を主体にした細粒堆積物が厚く堆積した。 そして, この後期には, 全域に泥質岩の堆積物が累積した。
越川層の堆積後, この地域の一部分は, 削剥作用をうけ, つぎの幾品層の基底岩相中に, 多量の硬質頁岩礫を供給した。
また, 越川層堆積時の末期から以降にかけて, プロピライトが忠類層や奥蘂別集塊岩層中に岩脈状に迸入し, なお, これと前後して, 石英安山岩の小岩体が貫入した。 これら面岩は, いちじるしい鉱化作用をうけている。
これらの鉱化作用をともなった火成活動とは別に, 越川層堆積後, ほぼ全域にわたって粗粒玄武岩が岩床状に迸入した。
幾品層堆積期の海域は, 下位の越川層時期のものよりもいく分浅海化していたようであって, 堆積物は, 下位の地層にくらべて, やや粗く, 分級も悪くなっている。
この幾品層時期の海域は, 中新世から鮮新世に地質時代が進むにつれて, 一層浅化し, 堆積物も, 泥岩から砂岩へと漸変している。
そして, 新第三紀最後の極浅海成の礫岩と砂岩との異常岩相を示す知布泊層の堆積まで 引き続いている。
これらの新第三紀の地層堆積後, 大きな地殻変動がこの地域におこり, 褶曲や断層によって, 地層はかなり複雑な地質構造を呈するようになった。
この地殻変動と相前後する, 鮮新世末期から洪積世前期にかけて, 火成活動が各所におこり, 普通輝石紫蘇輝石安山岩の熔岩や集塊岩が噴出された。
この火成活動は, 洪積世初期にいたって一層激烈化した。 そして, 千島弧の方向に並んで, 海別岳・遠音別岳などの火山が形成し, 熔岩や集塊岩を噴出した。 この時期の活動は, かんらん石普通輝石紫蘇輝石安山岩質であるが, 海別岳では, その活動の初期に角閃石黒雲母流紋岩を噴出している。
洪積世の火成活動が静まる時期から, この地域は, 昇降運動による海岸段丘形成期にはいり, 3段の平坦基盤上に砂礫層を堆積した。 なお, この段丘形成時にほぼ同じくして, 隣接地域では, 屈斜呂火山の活動がはげしく行なわれて, 図幅地域にも浮石質や細粒の火山灰を降灰させた。
段丘化作用の終了後, この地域をふくめた斜里 - 知床半島地域は, 撓曲性の地殻運動に支配され, 段丘堆積物が盆状の構造に変移した。 この運動が大きな規模で行なわれたものが 止別 デルタ形成運動 14) であって, デルタ内に朱円層と呼ぶ 屈斜呂火山噴出物の再堆積と考えられる軽石質岩相や砂礫層が厚く堆積した。
朱円層の堆積に引き続いて, 平坦化作用や河岸段丘を形成するような基盤の動きがおこり, 朱円層が低い平坦台地を形成するにいたった。
この平坦台地形成期から以降が, 冲積世にふくまれるものであって, 山岳地帯の周辺には崖錐堆積物が形成され, また各河川流域および海岸低地には, 河床氾濫原堆積物が累積しながら, 今日にいたっている。
この地域は, 古くから, 銅・鉛・亜鉛・褐鉄鉱・鉄明礬石・硫黄・砂鉄鉱床の賦存地帯として, 注目されてきた。 したがって, 海別・北根室・海別鉄鉱山などの旧稼行鉱山をはじめ, 探鉱中のものや古い坑道が多数存在している。
これらのうち, 賤金属鉱床およびその鉱兆地は, 主として, 新第三紀の奥蘂別集塊岩層より下位の地層, ならびにこれらを貫ぬくプロピライト中に発達し, 鉱脈型式をとる。 通常, 黄銅鉱・黄鉄鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱・石英・重晶石の鉱物組成をしめし, 亜鉛にとむのが特徴である。 しかし, 重晶石を主とする鉱脈が, 賤金属鉱脈付近に並走することもある。
褐鉄鉱・鉄明礬石・硫黄鉱床は, 第四紀の火成活動と密接するもので, 海別岳周辺に発達する。 海別鉱山・海別鉄山は, その代表的なものである。 そのうち, 鉄鉱床は, 鉄明礬石をともなう褐鉄鉱床と, 鉄明礬石をともなわぬ鉱床とに大別される。 前者は, 削剥され, 後者は現地形にそって分布するので, 鉱床形成は, 新旧2時期 16) におよぶことが推定されている。
また, 奥蘂別川以西の海岸線にそっては, 砂鉱鉱床がみられる。
このほか, 海別鉱山付近およびオショバオマブ川中流には, 温泉が湧出しているが, 立地条件にめぐまれぬため, 利用されずに放置されている。 また, 植別川中流・崎無異川上流には, それぞれ炭酸塩沈澱物をともなう鉱泉が湧出している。
図幅南東隅の崎無異川流域に位置し, かって, 北根室鉱山の支山として, 坑道探鉱が行なわれた。 そのうち, 本流に位置する鉱床を崎無異鉱床, 小支流のものを田中鉱床と呼んでいる。
田中鉱床は, プロピライトと角礫凝灰岩とを母岩とする。 前者中に賦存するものは, 鉱脈型式, 後者は, 坑道が埋没しており, 硑 が沢をうめて露出にとぼしい。 しかし, 硑からみて, 網状型式をとるようである。
鉱脈型式のものは, 下流に位置し, 坑道掘道を行なっているが, 角礫凝灰岩の個所で埋没している。 着鉱鉱体は, 走向 N 75°W, 傾斜 75°SW, 𨫤幅 10~15 cm で, 走向延長に 15 m 追跡される。 その𨫤先は, N 30°E の断層できられ, 西押坑道まで転位する。 そこでは, N 40°W の走向をしめし, 𨫤幅数 cm となる。 しかし, 𨫤押しを行なわず, 角礫凝灰岩をぬうように掘進している。 一方, 北向き坑道では, 数 cm の石英・黄鉄鉱からなる微脈がみとめられるにすぎない。
崎無異鉱床は, プロピライト中に胚胎し, 2条の鉱脈からなる。
露頭は, 上・下流にみられ, いずれも, N 30°W・60~75°NE の走向・傾斜をもっている。 下流部は, プロピライトの節理にそって, 黄鉄鉱(ほかの金属鉱物をともなわぬ)の鉱染がみられ, 酸化して赤褐色を呈する。 上流部も, これと同様であるが, この中に𨫤幅 25 cm の重晶石 ≫ 石英(微量の賤金属をともなう)帯が発達している。
上流の露頭に対し, 立ち入れを掘進して着鉱し, さらに𨫤押しを行なったが, N 10°W の断層に逢着して中止している。
要するに, これら2鉱脈とも, 鉱化帯としては, 走向延長をもっているが, 有用鉱物の濃集する部分は不連続である。
そのほか, 珪化・黄鉄鉱鉱染帯が, 植別川中流に発達する上部忠類層および奥蘂別集塊岩層中のプロピライトに, それぞれみとめられるが, 顕著ではない。
海別鉱山がこれにぞくし, 海別岳の東山麓に位置する。 かって, 峰浜から自動車道路を開さくして, 採鉱と探鉱が行なわれたが, 現在は休山中である。
鉱床の賦存する位置は, 長径 400 m, 短径 200 m の爆裂火口と考えられるような地形の所で, 壁面とその小さな湿地帯周辺に, 昇華型と沈澱型の硫黄の露頭がみとめられる。 鉱染型硫黄は, 現露頭ではみられないが, 昇華硫黄の一部分が局部的に鉱染鉱床のようなみかけをしている所があり, このような部分では珪化帯が発達し, 母岩の変質も広い範囲にわたって行なわれているので, 下部には鉱染型鉱床の胚胎する可能性もある。
褐鉄鉱に鉄明礬石をともなう鉱床と, 褐鉄鉱だけからなる鉱床に大別される。
これには, 海別鉄山 12), 16) と知布泊南西の鉱床がある。
海別鉄山は, 糠真布川の上流 4 km に位置し, 川沿いには, 海別鉱山に通する自動車道路が開さくされているので, 立地条件にはめぐまれている。
この鉱床は, 鉄鉱として第二次世界大戦中に採鉱・探鉱を行なったが, 終戦のため休山となった。 当時の貯鉱が, 山元に約 2,000 t ほど残っている。 だが, 鉄鉱としては, 硫黄分が多いので, 今日まで放置されてきた。
鉱床周辺は, 奥蘂別集塊岩層・越川層・崖錐堆積物・段丘堆積物で構成される。 前二者は, 鉱床の下盤, 後二者は鉱体をおおっているようである。
鉱床は, 新第三紀層の風化砂礫面上に沈澱(一部交代)したが, その後, 削剥作用をうけて, 現在みられるように凸状に鉱体がとり残されたものであろう。
一方, 鉱体の分布をながめると, 独立標高 357 m から西方に, 帯状に配列する。 これは, おそらく含鉄鉱液の流路を指示するものとみなされる。
鉱体は, 5鉱体が知られており, 主として, 褐鉄鉱と鉄明礬石の互層からなる。 しかし, その互層状態は必ずしも一定しない。 たとえば, 標高 375 m 付近に分布するものは, 鉄明礬石のはさみがうすくなる。
これら各鉱体の規模は一様ではないが, 低位面に発達する単位鉱体は, 600 m2~1,000 m2, 高位面のものは, 4,000 m2 におよび, その厚さは 2~4.5 m である。 貯鉱をあわせて, 約 50,000 t が見込まれる。
鉱石の品位は, 下表にしめすように, 不均質で, かつ, 硫黄・燐の含有度が高い。
| 試料 | Fe % | S % | P % | K2O % | 分析者 |
|
既採鉱鉱体
(褐鉄鉱 + 鉄明礬石) | 35~45 | 5~7.5 | 0.5~0.75 | 2.5~4.5 |
地質調査所 北海道支所
伊藤聡・狛武 18) |
| 褐鉄鉱 | 46~52 | 2~5 | 1.2~1.5 | 1~3 |
北海道立地下資源調査所
佐藤厳・二間瀬洌・横山英 16) |
| 鉄明礬石 | 33~41 | 6~10 | 1.1~1.3 | 4~6 |
このほか, これと同型式の鉱床が知布泊西方の第1段丘堆積物の発達区域にみられる。 その実体は, 充分明らかにされていないが, 幾品層の上位に鉄明礬石が発達し, さらに上位の第1段丘堆積物の構成礫中に, 褐鉄鉱礫が多くふくまれている。 まだ, まとまった鉱床を発見するにいたっていない。
海別岳山麓 16) に, ほぼ現地形に支配されて, 褐鉄鉱床が諸々に散在している。 この型式の鉱床は, 鉄明礬石を随伴しないのが特徴で, 品位も Fe = 50 % 前後をしめす。 したがって, 鉱量次第では, 採鉱に値いする。 現在, 北海道立地下資源調査所 土居繁雄技師が, 調査を進めているので, 逐次その実体が明らかにされよう。
鉱床は, 奥蘂別川河口から旧海別川河口にいたる間の海岸線の冲積原にみられ, その背後は砂丘堆積物で境されている。
鉱層は, 地表下 30~50 cm 下部に発達しており, 着磁率 12 % 以上のものは, 厚さが 1 m 以上に達することが確認れている 17) 。 その水平的拡がりは, 延長 800 m, 最大幅員 25 m である。 そのうち, 旧海別川河口に近づくほど, 高品位となり, 鉱層も厚くなる。 この部分を第二次世界大戦中に採掘した。 さらに, 海岸線と直角な南北方向の賦存状況をみると, 概して, 海岸線よりも砂丘よりの方が, 良鉱層となっている。
鉱石は, 磁鉄鉱・チタン鉄鉱・有色鉱物・斜長石・石英からなり, TiO2 = 8~12 % である。 高品位鉱は粒度 115 メッシュ, 低品位鉱は 60~115 メッシュである。
オショバオマブ川中流と植別川源流付近に湧出している。
前者は, 越川層の硬質頁岩と粗粒玄武岩の境界付近から湧出し, 泉温は, 42 ℃(気温 16 ℃ 測定)で, 含硫化水素食塩泉 [ 北海道立衛生研究所 分析 ] にぞくする。 交通にめぐまれぬため, まったく放置されている。
一方, 植別川源流付近に位置する海別温泉の周辺には, 数個所の湧出口があり, そのうちの最上流のものは, 海別鉱山開発時に利用され, 現在も当時の浴槽がある。
泉温 47 ℃ で, 含重曹石膏泉にぞくし, 下表にしめすような組成をもっている(分析者 : 北海道立地下資源調査所 佐藤厳技師)。
| pH | 6.3 |
| HCO3 | 446.2 mg / l |
| free CO2 | 189.2 |
| Cl- | 7.5 |
| total Fe | 0.324 |
| SO42- | 1182.9 |
| Mn | 2.36 |
| Si | 65.0 |
| Ca2+ | 427.2 |
| Mg2+ | 77.1 |
| Na+ | 167.0 |
| K+ | 12.7 |
| 残渣 | 2388 |
峰浜から温泉まで, 自動車道路が通じているが, 悪路と遠距離のため, ほとんど利用されていない。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Abashiri - 40
By Ryōya Sugimoto, Katsutoshi Mitani, Katsushide Matsushita & Toshimasa Takahashi (Geologicai Survey of Hokkaido)
The topography of this map area can be divided into the following five morpholgic provinces having close relations to the lithology of the basement :
The geology of the map area consists of the Neogene system accompanied by younger beds and volcanic rocks. No beds older than Neogene have been found. The Neogene system is included in the green tuff region of eastern Hokkaidō, and the Quaternary volcanoes and volcanic rocks belong to the Akan-Shiretoko zone. The geologic system can be divided as follows.
| Quaternary | Alluvium | Alluvial deposits, Sand dune deposits |
| Tallus deposits and River Terrace deposits | ||
| Diluvium | Shuen bed | |
| Terrace deposits | ||
| Kuttcharo volcanics | ||
| Unabetsu-dake volcanics, Onnebetsu-dake volcanics and 1019.6 m lavas | ||
| Neogene ? | Pliocene ? | 753.3 m lavas, 707 m lavas and Kounabetsu-dake agglomerate |
| Neogene |
Pliocene
~ Miocene | Chiptomari formation |
| Ikushina formation | ||
| Koshikawa formation | ||
| Okushibetsu agglomerate formation | ||
| Suizan propylite - green tuff complex mass | ||
| Churui formation |
The Chūrui formation, the lowermost member in the map area, is zonally distributed in the central backbone range. However, in the district north of the headwaters of the Kanayama River, this formation is not developed due to faulting. Lithologically, the formation can be subdivided into andesitic green tuff and liparitic green tuff in descending order ; the former is intercalated with agglomerate and tuff-breccia, and the latter with liparite.
The Chūrui formation corresponds to the Rubesu green tuff, the Kasushinai-gawa rhyolite and the Mataochi-gawa nevaditic liparite, which are treated as the members of the Chūrui formation in the adjacent Musadake sheet.
The lower part of the Chūrui formation is characterized by intrusion of propylite which occurs as irregular dikes and sheets, forming the Suizan propylite-green tuff complex.
Overlying this complex, the Okushibetsu agglomerate is developed, as is seen in the southwestern and Southeastern parts of the map area. In the district north of the Nukamappu River, the agglomerate suddenly becomes thin and pinches out in the drainage basin of the Ochikabake River. Intrusion of the above-mentioned propylite may be a product of the volcanic activity of this stage. The Okushibetsu agglomerate consists chiefly of pyroclastic rocks, such as agglomerate, tuff-breccia, tuff and lava, and is intercalated with hard shale, mudstone and tuffaceous sandstone. The volcanism is characterized by propylitized andesitic rocks, but is locally represented by basalt or basaltic andesite, or andesite is occasionally intercalated with basalt or basaltic andesite, thus showing quite complicated lithology. The Okushibetsu agglomerate occurs in the horizon identical with that of the Tōbatsu-zawa tuff-breccia and the Kunbetsu-gawa agglomerate, which are regarded as the members of Chūrui formation in the Musadake sheet adjacent to the south.
The Koshikawa formation in conformable with the underlying Okushibetsu agglomerate, but in the drainage basin of the Nukamappu River, it is partially interfingered with the latter. Hence, the two formations are considered roughly contemporaneous. The Koshikawa formation is widely distributed in the northeastern area where the development of the underlying Okushibetsu agglomerate is poor ; in the southwestern area the formation thins away. The formation consists largely of hard shale and mudstone, accompanied by sandstone, tuff, and hard, compact, tuffaceous mudstone. It characteristically contains marly modules which are sporadically found throughout the distribution area. Fossils occur in the nodules and in the mudstone, but they are scarce and hardly identifiable.
The Ikushina formation contacts the underlying Koshikawa formation in a local unconformity. It is distributed in the lower reaches of the Ikushina River, Okushibetsu River and the Ochikabake River, and along the sea coast between Chiputomari and Otamoi-zawa, as well as in the southeastern corner of the map area. The formation along the coast is composed of mudstone and alternation of sandy mudstone and fine-grained sandstone, intercalated with pumiceous tuff, tuffaceous sandstone, and hard, compact, dark-brown, vitric mudstone. In the southeastern corner, andesitic agglomerate occurs on the above-mentioned facies. The present writers have re-defined the previous Ikushina formation and have newly adopted the name Ikushina formation for the beds having the type locality in the drainage basin of the Ikushina River. The formation is fossiliferous, and identified species are Portlandia thraciaeformis (STORO), Patinopecten sp., Clinocardium chaliforniense (DESH), Serripes laperous (DESH), Conchocera bisecta (CONR), Buccinum sp., etc..
The Chiputomari formation is a newly named formation resting on the Koshikawa formation in a conformable or transitional relation. It is typically developed along the coast between the Ochikabake River and the entrance to the Otamoi-zawa. It consists chiefly of conglomerate, gravelly sandstone, sandstone and tuff.
The formations stated above, excepting the Ikushina formation, contain very few or no fossils, so their geologic ages have not been determined as yet. Even the fossils from the Ikushina formation are deficient for age determination. Consequently, on the basis of the lithologic characters, the writers tentatively assign these Neogene formations to the age ranging from Miocene to Pliocene.
In a general view, the map area is gently folded. An anticlinal axis, striking approximately N 30°E, occurs in the backbone range where the oldest Chūrui formation is developed. In the east and west limbs of the antic line are found the younger formations lying one upon another. There are several other anticlines and synclines, striking N - S or N 20°E ; of which the anticlinal structure of the Koshikawa formation in the northwestern corner of the map area and the dome structure of the upper Chūrui formation in the eastern area are noticeable. Faults can be classified into two systems, one is of a N - S or N 20°E trend and the other showing a N 30°~ 50°W trend obliquely intersecting the former. These structural movements took place after the Chiputomari formation was deposited.
Dike rocks belonging to the Neogene system are as follows : porphyritic dacite in the green tuff of the Suizan propylite - green tuff complex, propylite in the Okushibetsu agglomerate, and dolerite in the Koshikawa and older formations.
The Kounabetsu-dake andesitic agglomerate, 735.3 m lavas of olivine bearing hypersthene augite andesite and 707 m lavas of augite-hypersthene andesite are assigned to the Pliocene age.
The Onnebetsu-dake, Unabetsu-dake and 1019.6 m Volcano are Quaternary volcanoes. The ejecta constituting these volcanoes are roughly contemporaneous and are extensively developed in the backbone range.
The ejecta of Onnebetsu Volcano can be classified into the agglomerate, the upper and lower lavas, and the 615 m parasitic lava dome, all showing andesitic characters.
The ejecta of Unabetsu Volcano can be classified into the welded tuff (hornblende-biotite rhyolite) and the lavas of three horizons, lower, middle and upper. The lower and upper lavas are andesitic, whereas the middle lava is basaltic (intercalated with a part containing large crystals of anorthite).
The ejecta of Kuttcharo Volcano, consiting of soft and loose pumiceous deposits alternating with coarse-grained volcanic ash, showing random accumulation, are distributed limitedly in the western corner of the map area.
The terrace deposits are developed at an oblique angle to the coast line as mentioned before, and can be divided into the first terrace deposits, 80~160 m above sea level, and the second terrace deposits, 20~80 m above sea level. Another level plane is recognized at an altitude of 350 m, but its deposits are found only locally, so that it is not shown on the geologic map.
The Shuen bed is developed widely covering the flat terraces and the hilly hinterland in the western part of the map area. It consists largely of strikingly cross-bedded pumiceous deposits, accompanied by about 50 cm thick red soil volcanic ash origin at the top.
The Quaternary deposits, volcanic rocks and pyroclastic rocks mentioned in the foregoing paragraphs are assigned to Pleistocene.
Deposits belonging to Alluvium are river terrace deposits, talus deposits, sand dunes, and alluvial deposits, all consisting of sand, gravel, clay and andesite blocks.
Underground resources are such ore deposits as copper, lead, zinc, limonite, jarosite and sulphur. Besides, iron sand deposits occur in the alluvial plain which is widely developed along the west coast. These ore deposits were previously mined or prospected, but none of them is being worked at present.
Base metal deposits are the epithermal veins occurring in the propylite in the southeastern part of the map area. They were prospected as a branch mine of the Kitanemuro Mine.
The main veins strike N - S or N 15°E, roughly coinciding with the direction of the propylite intrusion and the strike of the strata, although feeders show an E - W direction without extending much.
Constituent minerals are barite, calcite, sericite, quartz, chlorite, pyrite, chalcopyrite, zincblende and galena. Some veins consists of barite, quartz and calcite, without containing sulphide minerals. The mineral combination of sulphides resembles black ore, and is characterized by richness of Zn.
Silicification and pyrite impregnation, showing a strike of roughly N - S or N 20°E, are noticed also in the Chūrui formation and the Okushibetsu agglomerate which are distributed in the drainage basin of the Uenbetsu River.
As far as our present knowledge goes, the upper limit of such mineralized zone indicates the Koshikawa stage.
Sulphur deposits are found near the headwaters of the Uenbetsu River, 2 km northeast of Unabetsu-dake.
Outcrops of sulphur deposits are seen at more than ten localities. They show two types of deposition ; sublimation and precipitation. The lower Chūrui formation is supposed to be their country rocks. However, there is a possibility of occurrence of impregnation type sulphur deposit in the lower part. Sulphur of the sublimate type and the precipitate type was once worked by the Unabetsu Mine, but the mine is almost abandoned at present.
The Unabetsu Iron Mine is a representative mine for limonite and jarosite ores. The deposits are located at 300~350 above sea level, and are partly covered by terrace deposits and talus.
The ore bodies are distributed in the direction of N 70°W, but, having been subjected to erosion, their outcrops occur only intermittently. In many cases, ore is banded on account of alternating limonite and garosite. Being thus favorably situated, ore reserves amount to 50,000 tons, but no mining operation has been attempted as yet.
Similar outcrops are found west of Chiputomari, although details are unknown.
Limonite ore deposits, without being accompanied by jarosite occur around Unabetsu Volcano, near the boundary between the basement and the ejecta of the volcano. They have been formed later than the aforesaid deposits. Active prospecting for limonite is being carried out at present.
Iron sand deposits are distributed along the coast west of Minehama. Iron sand having more than 10 % magnetic concentration rate and 8~12 % TiO2 can be traced over a wide range.
Hot springs are found in the vicinity of the Unabetsu Mine, but they are not utilized. In the middle reaches of the Unabetsu River and the Samuta River, mineral springs characterized by carbonate precipitates are known.
昭和 37 年 3 月 25 日 印刷 昭和 37 年 3 月 31 日 発行 著作権所有 北海道開発庁