01038_1959
5万分の1地質図幅説明書
(網走 第 38 号)
通商産業技官 島田忠夫
通商産業技官 矢崎清貫
地質調査所
昭和 34 年
目次 I. 地形 II. 地質 II.1 概説 II.2 新第三系 II.2.1 車止内層(上部) II.2.2 綱走層 II.2.3 鱒浦層 II.2.4 地質構造 II.3 第四系 II.3.1 更新統 II.3.2 現世統 II.4 火成岩 II.4.1 普通輝石安山岩 II.4.2 角閃石紫蘇輝石普通輝石安山岩 III. 応用地質 III.1 天然ガスおよび鉱泉 III.2 石材および砂礫 III.3 珪藻土および亜炭 文献 Abstract
1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 33 年稿)
(網走 第 38 号)
本図幅の野外調査は昭和 31 年 8 月から 10 月までの間, 延 60 日にわたって行われ, 第三系と火成岩, および図幅地域西半部の第四系の調査は島田が, 東半部の第四系の調査は矢崎が担当した。
また火成岩の検鏡には本所 松井和典技官の, 化学分析には技術部化学課の協力を得た。
本図幅地域は網走市東部, 東藻琴村北部および小清水町北西部を含み, 地域の南部は藻琴山の北側山麓の北端にあたり, 北部は屈曲に乏しい海岸線をもってオホーツク海に臨んでいる。
図幅地域の大半はごく緩傾斜の海侵台地地形を呈し, 南側の最高標高は約 120 m であって, それからオホーツク海の方面に向かって緩く傾斜する。 たゞし北西隅には標高 100~160 m の処があり, したがって地域内においてこの部分が一番高い。
海岸地帯にはその中央部に 濤沸湖 ・藻琴湖などの湖沼地帯が存在し, その附近は湖周辺の湿地地帯と, 原生花園として著名な砂丘地帯や, その他の海岸平地帯とで低夷な地形を形成している。 このほか東部の 止別 川下流地域にも河川の氾濫原面を示す低平な地形が存在する。
藻琴湖は南北の長径約 2.5 km, 東西の短径約 0.5 km, 面積約 1.3 km2 であり, 最深部の深度 5.8 m である。 濤沸湖は東西に長く延びており, 長径約 8 km で, 面積は約 9.7 km2 である。 両湖ともに一般には中鹹度水の湖であるが, 濤沸湖の東隅にある浦士別湾は淡水湖の状態を呈している。
段丘地形としては海岸段丘は認められず, ほとんどの段丘は河成段丘で, 藻琴川中流の東藻琴附近には6段階の段丘地形が発達する。 このほか止別川下流の小清水町の旧飛行場跡附近に, 開析のかなり進んだ低位段丘の平坦面が発達し, 浦士別川下流の一部にも河成段丘が認められる。
河川のおもなるものは, 図幅地域の西部から東部にかけて, 鱒浦川・ イチャルニ川・ 藻琴川・ 丸万川・ オンネナイ川・ 浦士別川・ 止別川などがあり, 北方に緩く傾斜して起伏する台地の間を縫って, おゝむね北流する。 これらのうち藻琴川は藻琴山に源を発し, シンブイ藻琴川・チブサ藻琴川を併せて藻琴湖に入り, 丸万川および小清水町の西境を流れる浦士別川は濤沸湖に注ぎ, 両湖とも砂丘を切って海に入る。
本図幅地域内の地質系統は新第三系および第四系である。 第四系の美幌層は図幅地域全域にわたって分布発達しているのに対し, 火成岩と新第三系に属する地層は, 図幅地域西部の藻琴川以西にだけ分布し, これ以東では美幌層下に潜在している。 地層の細別区分および模式的関係を地質総括表 [ 第 1 表 ] に示す。
この地方の新第三系は中新統の車止内層・網走層, 網走層と同時異相関係にある鱒浦層・ 能取 層および鮮新統の 呼人 層に区分されるが, この図幅地域内においては車止内層の下部, 能取層および呼人層の露出を欠いている。
第四系の更新統に属するものは美幌層と河成段丘であって, 美幌層は図幅地域北西部では, 上部の軽石質火山灰層と下部の砂礫層との2部層からなるが, 北西部以外の地域では上部から下記の7部層に区分できる。
河成段丘は東藻琴附近に標式的によく発達し, 6段の段丘面を認めることができる。
現世統に属するものは, 冲積層と海岸地帯の砂丘群とに区分した。
火成岩はいずれも安山岩に属し, 岩床・岩脈・熔岩流などの型態をとるが, 噴出の時代は網走層堆積中および美幌層堆積直後と思われる。
第三系は図幅地域西隅で数多くの褶曲構造を形成し, その軸はいずれもほゞ南北方向の傾向を示す。 これに対して上位の美幌層は緩傾斜をもって被覆し, そして図幅地域の中部と東部とではほとんど水平にみえる緩傾斜を示す。
車止内層は本図幅地域外北方の網走市西方 卯原内 川上流地域, および網走市街車止内の沢附近に標式的に露出し, 卯原内川上流地域においては, 上から次の5部層に細別できる。
本図幅地域内の地表に露出するものは, これらのうち本層上部に属する上部細粒砂岩層と, 縞状泥岩層だけである。
下部細粒砂岩層は本地域内にはみられないが, 標式地卯原内川上流においては, 主として淡青灰色細粒砂岩からなり, 基底は礫岩をもって古生層を被覆している。 次の化石を産する。
その上位の縞状緑色砂岩層もまた卯原内川流域に露出し, 暗緑灰色中粒砂岩を主とし, 細粒砂岩・粗粒砂岩・細礫岩・砂質淤泥岩を混えた互層からなり, まれに化石(Cardium sp.)を含む。
さらに上位の塊状泥岩層は, 卯原内南側の 越歳 南西部に広く露出するほか, 網走市街の車止内の沢およびトンネル附近に露出する。 無層理塊状, 暗灰色~青灰色, やゝ硬質の淤泥岩で, きわめてまれに大型介化石を産する。
さらにこの上位に, 本図幅地域内にみられる上部細粒砂岩層および縞状泥岩層が来る。
本層は図幅地域外網走市西方越歳の南方, 車止内の沢およびポンモイ石切場附近にも露出しているが, 図幅地域内では潮見北方大滝の沢上流, および 豊郷 北方イチャルニ川西の沢中流の2ヵ所の, 合計3カ所に小さく露出する。 ほとんど無層理, 部分的にやゝ凝灰質なところがある淡青灰色~淡灰色の細粒砂岩からなり, ときに中粒砂岩を挾む。 化石を比較的多く産し, 次のものを得た。
網走市ポンモイ海岸附近の競馬場の沢において, 昭和 28 年, 60 m の坑井が掘さくされた際に, 本部層から天然ガスの湧出をみた。
層厚は越歳附近で約 180 m であり, 車止内の沢では大略 180~200 m と推定されるが, 本図幅地域では露出地域が僅少のため, 層厚の推定はできない。
地質時代は上位の縞状泥岩層とともに, 中新世後期と推定され, 滝の上統に対比されるべきものであろう。
上部細粒砂岩層の上位に整合関係にある地層で, 露出地域もほとんど上部細粒砂岩層と同じである。 淤泥岩と砂質淤泥岩との細互層であって, 全般的にすこぶる軟質である。 層厚は約 10~25 m 程度に変化する。
本部層は網走層の下位にあって, 地域的に層厚を若干変化し, また岩相が網走層および鱒浦層とは異なっている点と, 全道的には両者は不整合関係にあるという点からみて, 網走層とは平行不整合関係にあるものと考えられる。
能取半島東岸より南下し, 本図幅地域北西隅まで連続して露出する網走層は, 主として火成砕屑物に富む粗粒砂岩・中粒砂岩・礫岩の互層からなり, しばしば細粒砂岩・淤泥岩・集塊岩・安山岩質熔岩流を挾んでいる。
本層中の安山岩質熔岩流は層状に網走層の互層中に挾まれていて, その下盤の地層に僅かながら熱変質を与えている。
化石はまれに二枚貝化石が得られる程度で, 時代決定に役立つものは産出していない。
地質時代は網走市周辺において, 本層の上位に, 能取層の硬質頁岩が整合にのっており, かつ, この硬質頁岩層は全道的に分布する上部中新世の, いわゆる硬質頁岩層であるから, 本層も層序および岩相上から中新世とみなされ, 川端統・増幌統に対比される。
図幅地域北方の能取半島においては, 網走層中に頻繁に集塊岩および熔岩流が挾まれているが, 本図幅地域内の鱒浦・豊郷附近ではこれらが少なくなり, 全般的に泥質となり, 網走層と岩相を著しく異にした鱒浦層が網走層中に発達している。
その模式地は網走市鱒浦の 勇仁 川支流, 東の沢中流から沢口までの間である。 網走層との関係については, 網走層の下部を一見不整合状に覆う場合, 網走層の下部に整合的にのる場合, あるいは本層が 網走層の安山岩質熔岩流および火山砕屑物に富む粗粒岩に直接覆われる場合があり, したがって鱒浦層は網走層の中部の同時異相であり, 鱒浦附近では両者は指交(interfinger)関係にあるものと考えられる。
本層の当図幅地域内における分布範囲は, 鱒浦を中心として鱒浦海岸に注ぐ各沢の流域, および稲富の西部と北部の小沢であり, そのほかでは広く第四紀層に覆われて露出していない。
正確な全層厚は測定できないが, 鱒浦附近における最厚は 200 m あまりであり, 南東方へ層厚を増す傾向がみられる。
模式地における岩相は, 淤泥岩および頁岩が主であって, 細粒砂岩・中粒砂岩が従である互層で, 白色細粒凝灰岩をまれに挾んでいる。
このほか模式地以外では 淤泥岩・頁岩・スコリア質粗粒砂岩・粗鬆粗粒砂岩の互層の場合もあるが, 岩相の水平変化はかなり著しく, 鱒浦北方では塊状無層理の細粒砂岩ないしは淤泥質砂岩がよく発達し, また稲富西方では珪藻土ないし珪藻土質砂質淤泥岩がかなり広く分布発達している。
化石は未発見であるが, 鱒浦層は網走層と同様に, 中新世中期であり, 北海道中央部の川端層や釧路地区の忠類層に対比される。
網走層との関係が明らかに観察されるのは, ポンモイ海岸大滝の沢およびその南の小沢であり, その様子を次に述べておく。 そこでは網走層の下部の粗粒砂岩・礫岩の互層の上位に, それらを斜めに切って鱒浦層がのっている。 そこでは両層は走向・傾斜ともに異なり, 岩相も相違している。 すなわち鱒浦層は塊状無層理の細粒砂岩ないし淤泥質砂岩であり, または硬質頁岩・淤泥岩・中粒砂岩の互層であるが, 下位の網走層下部は火山砕屑物に富む粗粒砂岩・礫岩の互層である。 下位の網走層の層厚は大滝の沢西側潮見附近において約 150 m に過ぎないが, 一般には本層は層厚約 650 m をもち, 網走周辺では上位にそれぞれ整合に能取層・呼人層が存在するので, 網走層下部の上位にのっていて, かつ能取層・呼人層とも岩相が若干異なるこの地層を, 網走層・能取層・呼人層などと区別して, 鱒浦層としたが, 網走層との堆積関係は次の理由によって同時異相と考えた。 すなわち鱒浦川上流のポンモイ背斜の西翼では, 本層の上位に整合に安山岩質熔岩流が存在し, その上位に火山砕屑物に富む網走層がのっている。 この附近の鱒浦層は層厚を減じ, 岩相も淤泥岩・頁岩・スコリア質粗粒砂岩の互層となっている。 すなわち本層は西から東へ向かって層厚を増し, より泥質になる傾向がみられるが, このように本層の上位と下位に網走層が存在する点から考えて, 本層を網走層の中部の同時異相と考え, 一見不整合のようにみられる基底面は層間異常的な関係を示すものと考える。
本図幅を大観すると図幅地域西部に露出する新第三紀の網走層・鱒浦層は, 第四紀の美幌層下位において, ほゞ南北方向の褶曲軸を有する背斜, 向斜構造を形成している。 これらの構造を西から東に向かって配列順に挙げる。
このほか図幅地域西隅中部には稲富背斜が推定されるほか, 豊郷北東部には鱒浦半ドーム構造が存在する。 これらの構造を切る美滉層堆積前の断層には, 勇仁川西側の沢上流豊郷附近の沢中に, 小断層が2, 3確認されるが, 大きなものは鱒浦から勇仁西方を走る鱒浦断層である。 この断層は勇仁川西側の沢における観察では走向 N 30°E, 傾斜北西に 50°の正断層であり, 鱒浦トンネル附近では走向 N 62°E, 傾斜北に 64°である。
本層は未凝固の礫・砂・泥からなり, かつ著しく火山噴出物に富み, 岩相の水平変化が激しい。 本図幅地域のなかにおいて概観すると, 東西方向では, 西に単層として発達する砂礫層が, 東になるに従って3部層に分岐し, 火山噴出物が増大する。 また南北方向に対しては, 概して南に火山噴出物が多く, 北ではそれに比較して砂礫を増している。
本層には介化石・亜炭層などが含まれていることからみて, 上記の岩相変化を生じたのは, 堆積場所が瀕海性 - 半陸性 - 陸性附近にあったことに起因するものと考えられる。
この美幌層は図幅地域北西隅では薄層であるが, 同層中の凝灰岩を鍵層として追跡した結果では, 南東方向に層厚を増していて, 巨視的にはごく緩い傾斜をもって北西方向に傾斜しているようである。
美幌層の厚さは, 約 50 m 以上が予想され, 岩相から便法的に下位から, 黒色火山灰層・ 下部砂礫層・ 下部凝灰岩層・ 中部砂礫層・ 中部凝灰岩層・ 上部砂礫層・ 上部凝灰岩層の7部層に区別できる。 もちろんこれらは, 一連の整合関係にある堆積物であるが, 岩相の水平変化が激しいために, 一部においては岩相による区分は困難な所もある。 このことは本図幅地域内においても, 藻琴湖 - 東藻琴の南北性の低地を境としてその東部と西部に対していえることである。
黑色火山灰層 : 本層は, 図幅地域の中南部にみられ, 後述する地層とはかなり異なった分布形態を示している。 このことは本層が陸上堆積物 [ 以下の [注1] 参照 ] としての要素を多分にもっているからである。 岩相は黒色火山噴出物を主とし, そのなかに黒色亜角礫状軽石が散在する。 また風成層 [ 以下の [注2] 参照 ] と思われる細粒砂が偽層を呈して発達している部分もある。 厚さは, みられる範囲では約 20 m 内外であるが, 下位との関係は本図幅地域内においては不明である。 本層は 空間的に区切られた分布をすることと, 陸成層であるという理由から, 時間的には下部砂礫層と同一であるか下位のものであるかは, 現在の資料で断定することは困難である。 よって今回は, 一応美幌層最下位を占めるものと考えた。
下部砂礫層 : 本層は図幅地域中の新第三系の侵蝕起伏面の底凹部に沈積したもので, 層厚や分布形態はかなり現地形に左右されている。 その結果, 本層の厚さは場所によってかなり異なる。 図幅地域中とくに西部によく発達し, 東部では薄くなり, 黒色火山灰層に変わっているようである。 岩相は西部と東部とではかなり異なるが, 西部においては大豆大の小円礫からなり, 概して偽層が著しく, 中粒~粗粒砂によって充塡されている。 礫片には 両輝石安山岩・輝石安山岩・新第三系の暗灰色泥岩・灰色砂岩などもみられるが, とくに古生層と思われる粘板岩・珪岩がもっとも多く認められる。 また本層上限には厚さを 2~200 cm の間に変化する亜炭層が介在し, 比較的連続する。 その他, 場所によっては 20~60 cm の化石層(主として Ostrea sp.)が発達するところがみられるが, 東部ではみられなかった。 また東部においては, 急激に火山噴出物を増していて, 概して大豆大の珪質岩類の礫を包含する凝灰質砂を主としている。 また本層の上部は, 下部に比較して細粒砂を主とし, 所によっては暗灰色の粘土層が発達する。 層厚は東部では約 3~10 m で, 本図幅地域の西隅に向かって厚さを増す傾向がみられ, 東部になるに従って厚さを減じているが, 図幅地域北西部においては, 後述の下部凝灰岩層・中部凝灰岩層が尖滅し, 中部砂礫層・上部砂礫層と合体し, 層厚は全体で約 10 m となっている。 また最小層厚部は, 浦士別川河口附近においてみられ, その東ではふたたび層厚を増す傾向がみられる。
下部凝灰岩層 : 本層は図幅地域東部に比較的広く分布する。 岩相は白色凝灰岩を主とし, そのなかに白色の軽石を包含する単層である。 本層の最下部には厚さ約 20 cm の粗粒~中粒の白色凝灰岩があり, その下位にある亜炭層の薄層とともに, この組合せは鍵層(K3 層)としてその特徴が活用される。 この K3 鍵層は美幌層最下位の鍵層である。 最大層厚部は浦士別川上流にみられ, 層厚約 3 m 内外を示すが, これから東および西において層厚を減じて, 東部では小清水市街地附近で最小層厚を示し, その東方ではふたたび多少層厚を増しているようである。 他方図幅地域北西隅では本層は尖滅している。
中部砂礫層 : 本層は, 図幅地域全体に分布する。 岩相は, 下半部は主として軽石の小円礫からなり, 上半部は粗粒砂および赤土状粘土によって構成されているが, 西部においては粗粒砂を増す。 層厚は約 7 m で, 図幅地域の南西隅東藻琴および浦士別川上流附近では層厚を増しているが, 北西隅では下部および上部砂礫層と一連の連続堆積層となっている。
中部凝灰岩層 : 本層の分布は, 図幅地域の中・東部にみられるが, 概して藻琴湖以東によく発達する。 岩相は, 下部凝灰岩層と岩質的にほとんど同一の白色凝灰岩を主とし, このなかに白色軽石礫が包含される単層である。 層厚は図幅地域中央部で約 4~6 m を示し, 丸万川河口において最大を示すが, その西側では急激に尖滅し, 砂礫層に移化する。 また丸万川河口より東側では, 徐々に層厚を減じ, 浦士別川河口で最小となるが, それより東方ではまた多少層厚を増している。
本層の最下位には本層を特徴づける約 6 cm の白色凝灰岩の鍵層(K2)があるが, 下部凝灰岩層の K3 層とは異なる副鍵層であって区別できる。
上部砂礫層 : 本層は図幅地域の北西隅を除いた地域の, 全般にわたって分布する。 中央部において比較的厚く, 東部と西部において薄くなる傾向がみられる。 岩相は, 下部は砂礫層, 中部は粗粒砂・スコリヤ砂などの粗粒砂層を主とし, 凝灰岩を挾む。 上部は赤土状粗粒粘土層によって構成されている。 層厚は 0~20 m を示し, 最大層厚部は丸万川河口附近にみられ, それより西方においては, 藻琴湖附近で層厚を減じるが, さらにそれより南西方向にふたたび層厚を増している。 丸万川河口附近より東では, 浦士別川河口において厚さ最小となり, その東側では多少厚さを増すが, 全般的に東部地域では本層が凝灰岩層に移化するものと思われる。
本層の中部には 2~6 枚の白色凝灰岩層(層厚 30~150 cm)が介在するが, いずれもレンズ状で追跡はできない。
上部凝灰岩層 : 本層は, 本図幅地域全般に分布する。 岩相は下部凝灰岩層・中部凝灰岩層などとほゞ同質の白色凝灰岩を主とし, そのなかに白色軽石礫が包含されている単層であるが, 所によっては粗粒砂礫層がレンズ状に発達する。 層厚は約 4~20 m 以上がみられ, 下部凝灰岩層・中部凝灰岩層などとほゞ同様の堆積形態を示しているようであって, 丸万川河口の西側では尖滅して, 一部は砂礫層に移化している部分があるが, さらにその西側ではふたたび凝灰岩層となり, 順次西方に層厚を増し, 厚い凝灰岩の単層となっている。 また丸万川の東側においても多少層厚を増す傾向にある。
本層は下部凝灰岩層・中部凝灰岩層などと異なり, 本層の下限には鍵層になるような白色凝灰岩がなく, その点がむしろ本層の特徴である。
東藻琴の藻琴川流域には, 良好に発達した河成段丘が6段認められる。
おのおのの段丘の標高は, 上位から次の通りである。
これらの段丘を構成するものは, 角礫・円礫および砂の互層であったり, 礫・砂・凝灰質粘土および泥の互層, または混合物であったりする。
丸万川中流および上流にも, 合計4段の河成段丘の発達が認められる。
鱒浦海岸勇仁附近から東方に北浜, 浜止別 の間のオホーツク海海岸沿いの細長い地帯には, 波打際から 50~100 m 奥の陸地に, 高さ約 3~10 m の砂丘が点々と連なって発達しているが, とくに浜止別附近では高さ約 20 m を超す砂丘も発達している。 これらの砂丘には ハマナス・エゾキスゲ・エゾスカシユリ・エゾヨモギ・スズランなどの植物が繁茂し, 6~7 月頃には美しい花園となって旅人の目を楽しませ, 原生花園として天然記念物に指定され, 北海道の名勝となっている。
冲積層は海岸における砂層, 藻琴湖・濤沸湖などの湖畔の砂・礫・粘土層, 藻琴川・ 丸万川・ オンネナイ川・ 浦士別川などの下流の湿地帯における砂・粘土・泥などからなる地層, および藻琴川・ 丸万川・ オンネナイ川・ 浦士別川・ 止別川などの流域に分布する泥・砂・礫・軽石などからなる地層があり, いずれも層厚数 m 内外であり, 最厚部でも 20 m 以内である。 このほか止別附近には, 止別川による氾濫原の粘土・砂・礫からなる冲積層が広い面積を占めて分布している。
本図幅地域中の網走層および鱒浦層のなかには, 岩床の迸入および岩脈の貫入があるほか, 熔岩流の迸出も認められる。 これらの活動時期は, 上記地層堆積中および美幌層堆積直後と考えられる。 岩石はいずれも安山岩で, 次のような種類がある。
豊郷小学校西方の沢中の澱粉工場附近に露出する岩脈は, 一部自破砕熔岩状を呈する安山岩からなり, 黒色~暗灰色, 緻密で気孔を有する。 鏡下では含有量はあまり多くないが, 0.3~0.6 mm くらいの長柱状を呈する普通輝石と, 0.5~1.0 mm くらいの長柱状の斜長石の斑晶がみられる。 石基は塡間状組織を示し, 普通輝石・斜長石・ガラスからなり, C 型 [ 以下の [注] 参照 ] に属する。
若曾根 西方チブサ藻琴川のガス徴候地附近において鱒浦層を貫ぬいている岩脈も, 上記に類似の安山岩からなる。 この岩石は暗灰色で気孔を有し, 鏡下では少量の普通輝石・斜長石などの斑晶がみられ, 石基は間粒状組織を呈し, 普通輝石・斜長石・ガラス・磁鉄鉱からなる。
これらの岩石に類似した岩脈は, このほか豊栄化石産出地附近および勇仁川西側の沢の沢沿いの各所に分布している。
稲富北方栄附近の安山岩は, 本図幅地域中ではもっとも規模の大きい岩床をなす。 この岩床は網走層・鱒浦層中に迸入するほか, 美幌層と網走層の不整合面に沿って迸入していて, 美幌層の基底部にも軽度の接触変質を与えている。 この安山岩は暗灰色, 斑状で気孔を有する。 鏡下では普通 0.5~3.0 mm くらいの柱状の斜長石と, 主として 0.5~0.7 mm くらい, まれに 2.0 mm 程度の短柱状の普通輝石の斑晶が少量ながら認められる。 石基は C 型で斜長石・普通輝石・磁鉄鉱・ガラスからなり, 間粒状ないし塡間状組織を呈するが, 部分的に磁鉄鉱がとくに多くなっている箇所が認められる。
鱒浦川上流の鱒浦層中の熔岩流は, 下盤の地層にごく軽度の接触変質を与えているのが観察される。
また同質の安山岩は, 岩脈・岩床および熔岩流の形態で, 本図幅地域の北西隅潮見西方の処々に分布している。
西倉西方の湯ノ沢沢口に露出する岩脈を構成するものは, 暗灰色, 緻密の安山岩である。 鏡下では斑晶として 0.5~3.0 mm くらいの斜長石, 0.5~1.0 mm くらいの普通輝石, 1.5 mm くらいの短柱状の紫蘇輝石, 1.0~1.5 mm くらいの周辺部が普通輝石化している角閃石がみられ, また磁鉄鉱が共生している。
石基は塡間状組織を呈し, d 型で, 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・磁鉄鉱, ときにガラスなどからなっている。
この岩脈中の亀裂から, 硫化水素臭を伴なう水と天然ガスを少量湧出している。
図幅地域南東部の網走市稲富において, 藻琴川支流のチブサ藻琴川の分岐点から約 3 km 上流の湿地帯に, 温水とともに天然ガスの湧出する箇所がある。 その箇所は美幌層の下部砂礫層の分布する地域で, 地表は 1~2 m の泥炭や粘土に覆われているが, 数 m 下方には鱒浦層の珪藻土質淤泥岩または安山岩が潜在すると思われる。 約 100 m 西方および約 400 m 南方には, 安山岩の岩脈が露出している。
おそらくこの附近には第三紀層を切る断層が存在していて, そこから湧出するものと思われるが, 2 1/2 " の鉄管を約 4 m 打込んである坑井から, 約 3 m3 / D 程度の可燃性天然ガスとともに 25 ℃ の温水が 700 m3 / D 程度湧出している。
この附近の面積約 100 m2 の地域には, 一面に可燃性のガスが湧出し, どこを掘っても深度 4~5 m で同程度のガスと地下水が湧出する。
こゝの天然ガスと, これに附随する地下水の分析値は次のようである。
| 天然ガス分析値(%) | |||
| CO2 | O2 | CH4 | 残 |
| 0.7 | 0.1 | 44.2 | 55.0 |
| 地下水分析値( [ pH・R pH 以外の ] 単位 : mg / l , 分析 : 地質調査所 化学課) | ||||||||||||
| pH | R pH | HCO3- | Cl- | I- | Br- | CO32- | SO42- | K+ | Na+ | Ca2+ | Mg2+ | KMnO4 cons. |
| 8.2 | 8.2 | 149 | 249 | 0.0 | tr. | 10.6 | 2 > | 9 | 210 | 12.4 | 3.4 | 10.0 |
このほかこの天然ガス湧出地から約 400 m 上流の火成岩岩脈露出地において, 岩脈の亀裂中から少量の硫化水素臭を伴なう鉱泉が, 痕跡程度のガスとともに湧出している。 昔時これを沸かして鉱泉浴場として利用したことがあった由である。
また昭和 29 年頃に鱒浦川中流のポンモイ背斜の軸頂部附近で, 道路工事の際に網走層の粗粒砂岩中から可燃性のガスが湧出し, 工事人が焚火をしたことがある。
また藻琴駅前の郵便局附近で井戸を掘さく中に, 一時圧力の強いガスが多量に噴出し, 櫓を吹き飛ばしたことがあるというが, これは附近の地質からみて, 多分第四紀層中の溜りガスではないかと考えられる。
稲富北部に広範囲にわたって露出する安山岩は, 道路補修, 築港, 護岸などの工事用石材として利用できるものと思われるが, 目下のところはほとんど利用していない。 軽石ブロック工業の主材料として, 本図幅地域内の美幌層の P3, P2, P1 各層中の軽石が利用できるが, 現在は藻琴湖西岸の一部を採掘し活用しているにすぎない。
各種コンクリート工事用の砂・砂利としては, 美幌層中の下部砂礫層が利用できるであろう。
窯業原料用珪藻土の比較的良質のものは, 稲富西方の沢附近に分布している鱒浦層中にみられるが, これも目下利用されていない。
本図幅地域の北西部においては, 美幌層が上部の火山灰層と下部の砂礫層とに分れるが, その境界附近に亜炭層がやゝ厚く発達している。 亜炭の層厚は一般に数 cm, ときに 1~2 m であって, 膨縮の変化が甚だしい。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Abashiri, No. 38
By TADAO SHIMADA & KIYOTSURA YAZAKI (Written in 1958)
The mapped area is situated in the northeast part of Hokkaidō facing the Sea of Okhotsk. It is covered mainly by the Bihoro formation of Quaternary, and in part by Tertiary sedimentary deposits. The stratigraphy of the area is shown in Table 1.
The Neogene formations of the area are assumed as Miocene age.
The Kurumatomanai formation crops out to a small extent in the northwest corner of the area mapped. At the Ubaranai district 20 km west of the area mapped, the formation is divided into five members, but in the area, the lower part of the formation is concealed. The upper two members, that is, the fine sandstone bed and laminated siltstone bed are exposed in this area. The upper fine sandstone bed consists chiefly of massive fine sandstone, and is more than 100 m thick. The laminated siltstone bed, the uppermost of the formation is composed of laminated siltstone and sandy siltstone, and is about 25 m in thickness.
The Abashiri formation is distributed in the northwest part of the mapped area, and rests unconformably on the Kurumatomanai formation. It is composed of alternation of coarse sandstone, conglomerate, medium sandstone, and pyroclastic rocks such as andesitic agglomerate, and is about 650 m in thickness. This formation is correlated to the Kawabata formation of Central Hokkaidō.
The Masuura formation is distributed also in the west parts of the area. It consists of alternation of fine sandstone, siltstone, hard shale and diatomaceous siltstone, and is more than 230 m in thickness. The Masuura formation is the heteropic facies of the Abashiri formation.
The Neogene formations are intruded or interbedded by andesite.
Several folded structures showing the trend of N - S are seen in the Neogene formations. A fault running NNE through Masuura in the northwest part of the area is a main fault appeared in the area mapped. It is a normal fault dipping at 50~60°northwestward.
The Bihoro formation which covers almost all parts of the mapped area is correlated to the Kushiro series widely developed in the Kushiro district in Southwest Hokkaidō. It lies nearly horizontally, and unconformably rests on the Abashiri and Masuura formations. In the Masuura district, the formation is divided into the sand and gravel bed and the tuff bed in ascending order. But in other parts, it is divided into seven beds, namely black ash bed, lower sand and gravel bed, lower tuff bed, middle sand and gravel bed, middle tuff bed, upper sand and gravel bed and upper tuff bed from the base upwards.
River terrace deposits composed of sand and gravel are present along the rivers. Several steps of terraces are recognizable, and particularly six steps are developed along the river Mokoto in the western part of the area.
Recent deposits are the sand dune deposits occurring in a belt along the seashore and the alluvial deposits along rivers, swamps and lakes.
Many dikes, sheets and lava flows of andesite occur in the western part of the area. They are intruded into or inter-bedded in the Abashiri and Masuura formations of Neogene, and some of them have weak thermal effects also upon the basal part of the Pleistocene Bihoro formation.
A seepage of natural gas is seen in the valley of Chibusa-mokoto-gawa (river), 2 km southwest of Inatomi. Analytical values of the gas and underground water in which the gas is dissolved are as follows.
| Composition of gas (volume %) | |||
| CH4 | CO2 | O2 | N2 etc. |
| 44.2 | 0.7 | 0.1 | 55.0 |
| Contents of underground water (mg / l [ except for "pH" and "R pH" ] ) | ||||||||||||
| pH | R pH | HCO3- | Cl- | I- | Br- | CO32- | SO42- | K+ | Na+ | Ca2+ | Mg2+ | KMnO4 cons. |
| 8.2 | 8.2 | 149 | 249 | 0.0 | tr. | 10.6 | 27 | 9 | 210 | 12.4 | 3.4 | 10.0 |
Data measured at the seepage are as follows :
| gas volume : | 3 m3 / day |
| water volume : | 700 m3 / day |
| water temperature : | 25.0 ℃ |
At the upper stream about 400 m from this gas seepage, there is a mineral spring issuing from fissures of an andesite dike.
Building stone is obtained from andesite.
Sand and gravel suitable for engineering works are abundant in the lower beds of the Bihoro formation.
Diatomaceous earth, which belongs to the Masuura formation, is exposed to the west of Inatomi.
Peat seams are intercalated in a part of the Bihoro formation, and are exposed near the seaside of the northwest corner of the area.
The thickness is variable, but generally thin.
昭和 34 年 7 月 20 日印刷 昭和 34 年 7 月 25 日発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所