01029_1970
5万分の1地質図幅説明書
(網走 第 29, 30 号)
北海道立地下資源調査所
嘱託 土居繁雄
[
金属鉱物探鉱促進事業団(調査時は北海道技術吏員)
]
技術吏員 酒匂純俊
技術吏員 松井公平
嘱託 金喆祐
[
北海道大学理学部 地質学鉱物学教室
]
北海道開発庁
昭和 45 年 3 月
この調査は, 北海道総合開発の一環である, 地下資源開発のための基本調査として, 北海道に調査を委託し, 道立地下資源調査所において実施したものである。
目次 はしがき I. 位置および交通 II. 地形 III. 地質概説 IV. 新第三系 IV.1 羅臼川層 [ Rgt ] IV.2 流紋岩 [ Rrl ] IV.3 イワウベツ川層 [ Igt and Ish ] IV.4 プロピライト [ Pr ] IV.5 ルサ川層 [ Ksh ] IV.6 サシルイ川層(Sag,Sms) IV.7 岩脈類 IV.8 安山岩熔岩類 V. 第四系 V.1 新期火山噴出物 V.1.1 遠音別火山噴出物 V.1.2 羅臼岳火山噴出物 V.1.3 三峰火山噴出物 V.1.4 硫黄山火山噴出物 V.2 段丘堆積物 [ Ter ] V.3 崖錐堆積物(Ta) V.4 扇状地堆積物(F) V.5 現河床堆積物および海浜堆積物(H) VI. 応用地質 VI.1 銅・鉛・亜鉛鉱床 VI.2 褐鉄鉱鉱床 VI.3 硫黄鉱床 VI.4 温泉および鉱泉 参考文献 Résumé
5万分の1地質図幅説明書
(網走 第 29, 30 号)
この図幅および説明書は, 昭和 37 年から昭和 40 年にわたって行なった野外調査の結果を, とりまとめたものである。 調査に当っては, 土居がオホーツク海側の西部一帯および羅臼川流域および北部一帯を, 酒匂が羅臼岳から硫黄山にいたる脊梁地域を, 松井が知円別川以北の地域を, 金が羅臼川以南の地域をそれぞれ分担した。 なお, 西部のホロベツ川流域およびウトロ川流域の調査は, 北海道立地下資源調査所の庄谷幸夫 研究員, 東部のモセカルベツ川流域からサシルイ川流域にかけての地域の調査は, 同所の杉本良也 主任研究員によって行なわれた。 また, 温泉調査については同所の二間瀬烈 分析科長, および横山英二 研究員に協力していただいた。
この地域は, ほとんど地質調査が行なわれたことがなく, 昭和 35~42 年の 北海道開発庁による 褐鉄鉱床賦存地域に対する地質鉱床調査が 規模の大きな調査としてあげられるだけである。
野外調査にあたっては, 斜里町役場, 羅臼町役場の方々, 斜里町ウトロのホテル桑島の桑島宣一氏から, 多くの便宜を与えられた。
報告に先だち, 調査の援助をしていただいた杉本良也, 二間瀬烈, 庄谷幸夫, 横山英二の各氏, 現地で協力していただいた斜里町役場, 羅臼町役場の各位, 桑島宣一氏に感謝の意を表する。
この図幅は, 北緯 45°00'~45°10', 東経 145°00'~145°19' の範囲内にあり, 知床半島のほぼ中央部に位置する。
行政的には, 図幅の中央部をほぼ N 45°E の方向にのびる脊梁を界して, 根室海峡側の東半部は羅臼町に, オホーツク海側の西半部は斜里町に, それぞれ属する。
図幅地域内の村落としては, オホーツク海側の西端にウトロ市街が, 根室海峡側の南端に羅臼市街があるだけである。 このほか, オホーツク海側では, 海岸に漁家が, チャシコツ原野 [ ← 本図幅地域の西端の海岸のやや内陸 ] に農家が, 遠音別 [ ← 本図幅地域の西方のホロベツ川とイワウベツ川の間 ] および 岩尾別 [ ← イワウベツ川の北東方 ] にそれぞれ農家が散在しているにすぎない。 また根室海峡側の海岸線にそっては, 羅臼市街からルサ川にいたる間に漁家が点在しており, 知円別が小さな市街地を形成している。
道路は東西両海岸線にそって開さくされているほか, オホーツク海側では, 岩尾別からルサ川に通する併用林道が, 岩尾別温泉にいたる町道がそれぞれある。 また, 羅臼市街から羅臼川にそって約 3 km の位置にある羅臼温泉まで町道が通じている。
このほか, 斜里町 遠音別から赤川 [ ← 赤イ川 or 赤ノ川 ; 知床峠付近からホロベツ川に平行に流下しイワウベツ川に合流する ] に沿い, 羅臼岳の南方尾根を越えて, 羅臼川本流にそって羅臼温泉にぬける産業道路 [ 知床横断道路 ] が開さく中である。
オホーツク海側で斜里町と岩尾別温泉の間に, また, 根室海峡側では根室 標津 と羅臼の間および羅臼と知円別の間にそれぞれ定期バスが運行している。
この図幅地域は, 千島火山帯にふくまれ, 北東から南西に連なる脊梁には, 北から硫黄山(標高 1,262.5 m), 三つ峯(1,562 m) [ ← 地質図上に記載なし ] , 羅臼岳(標高 1,6607 m)など, 標高 1,000 m 以上の新しい地質時代に活動した火山が峰をつらねている。 地形は急峻である。
西部の岩尾別および遠音別地域は, 小起伏に富むが大きくみて平坦な熔岩台地がみられる。 この面は, 侵蝕面ではなく, 溶岩流の面をしめしている。
オホーツク海および根室海峡の両側の海岸線は, 急崖で海にのぞみ, とくにオホーツク海側では 100~200 m の断崖が 10 km 以上つづいている。
新期火山岩が海岸に達していない海岸線にそって, 段丘堆積物が発達し, 綾傾斜をとる平坦面がみられる。 この平坦面は, ほぼ標高 40~100 m のもので, かなり明瞭な平坦面である。
図幅地域のほぼ中央部を北東から南西にのびる脊梁が分水嶺となり, 西側の地域にはイタシュベツ川, イワウベツ川およびホロベツ川など南から北に, または南西から北西に流路をとり, オホーツク海に注いでいる。
また, 東側の地域には, 北西から南東または西から東に流路をとり, 根室海峡に注ぐルサ川, キキリベツ川, ショウジ川, ケネベツ川, モセカルベツ川, オッカバケ川, サシルイ川および羅臼川などがある。
この地域を構成する地質系統は, 地質層序表に示したとおりである。
| 時代 | 層序 | 岩質 | 火成活動 | 鉱化作用 | 備考 | |||||
|
第
四 紀 |
現
世 | 沖積層 | 礫, 砂, 粘土, 火山灰 |
昇華
硫黄 鉱床 | ||||||
| 砂丘 | 砂 | |||||||||
|
崖錐および
扇状地堆積物 | 岩塊, 礫, 砂 | 硫黄山火山 | ||||||||
| 河岸段丘堆積物 | 礫, 砂, 粘土 | |||||||||
|
更
新 世 | 火山灰層 | 火山灰, 軽石, 砂, 粘土 | ||||||||
| 火山噴出物 |
普通輝石紫蘇輝石安山岩質熔結凝灰岩,
普通輝石紫蘇輝石安山岩 紫蘇輝石普通輝石安山岩 | 知床岳火山 | ||||||||
| 段丘堆積物 | 礫, 砂, 粘土 | 羅臼岳火山 | ||||||||
| 火山噴出物 |
普通輝石紫蘇輝石安山岩,
紫蘇輝石普通輝石安山岩, 含橄欖石紫蘇輝石普通輝石安山岩, 含紫蘇輝石普通輝石安山岩, 角閃石黒雲母流紋岩質熔結凝灰岩, 瑠璃質安山岩質集塊岩 |
普通輝石
紫蘇輝石 安山岩脈 |
硫黄
鉱床 | 遠音別火山 | ||||||
| 海別火山 | ||||||||||
|
新
第 三 紀 |
鮮
新 世 前 期 |
崎無異川
集塊岩層 | 普通輝石紫蘇輝石安山岩質集塊岩 |
普通輝石
紫蘇輝石 安山岩脈, 角閃石 安山岩脈, 粗粒玄武岩脈 |
硫化鉄
鉱床 | ↖ 地変 | ||||
| 陸志別層 |
両輝石安山岩質熔岩,
両輝石安山岩質集塊岩, 角礫凝灰岩, 火山性礫岩, 礫質砂岩, 砂岩, 砂質泥岩 |
普通輝石
紫蘇輝石 安山岩脈 | ||||||||
| 幾品層 |
泥岩,
砂質泥岩,
凝灰質砂岩,
軽石質凝灰岩, 角礫凝灰岩, 砂質頁岩 | 石英安山岩脈 | ||||||||
|
中
新 世 後 期 ~ 中 期 | 越川層 | 頁岩層 | 硬質頁岩, 泥岩, 軽石質凝灰岩, 凝灰質砂岩 | 粗粒玄武岩脈 |
銅・
鉛・ 亜鉛 鉱床 | ↖ 地変 | ||||
|
頁岩・
凝灰岩 互層 | 角礫凝灰岩, 硬質頁岩, 泥岩, 凝灰質砂岩 |
斑状
石英安山岩脈, プロピライト 岩脈 | ||||||||
|
両輝石安山岩質集塊岩,
角礫凝灰岩, 凝灰岩, 石英粗面岩質角礫凝灰岩, 石英粗面岩質集塊岩, 凝灰岩, プロピライト, 泥岩, 砂岩, 緑色凝灰岩 | ||||||||||
|
奥藻別
集塊 岩層 |
集塊
岩層 | プロピライト | ||||||||
|
忠
類 層 |
石英粗面岩質
凝灰岩層 |
石英粗面岩質凝灰岩,
石英粗面岩熔岩 | 石英粗面岩 | |||||||
|
安山岩質
凝灰岩層 |
安山岩質緑色凝灰岩,
両輝石安山岩質集塊岩 | |||||||||
| 時代 | 層序 | 岩質 | 火山活動 | 鉱化作用 | ||
| 第四紀 | 沖積世 | 沖積層 | 礫, 砂, 粘土 |
硫黄
鉱床・ 褐鉄鉱 鉱床 | ||
| 崖錐堆積物 | 岩塊, 砂 |
← |
硫黄山火山噴出物
三峰火山噴出物 羅臼岳火山噴出物 | |||
| 洪積世 | 段丘堆積物 | 礫, 砂 | ||||
|
← |
遠音別岳火山噴出物
ホロベツ川熔岩 イロイロ沢熔岩 登山口熔岩 トッカリムイ熔岩 ハシコイ熔岩 立仁臼熔岩 脈岩類 石英安山岩 玄武岩質安山岩 玄武岩 | |||||
| 新第三紀 | 鮮新世 | サシルイ川層 |
安山岩質集塊岩,
安山岩質角礫凝灰岩, 流紋岩質凝灰岩, 泥岩, 凝灰質砂岩 | |||
| 中新世 | ルサ川層 |
硬質頁岩,
泥岩,
凝灰質砂岩 | ||||
|
銅・
鉛・ 亜鉛 鉱床 | ||||||
| イワウベツ川層 |
安山岩質集塊岩,
安山岩質角礫凝灰岩, 凝灰岩, 凝灰質砂岩, 頁岩, 泥岩 | |||||
|
安山岩質プロピライト | ||||||
| 羅臼川層 |
流紋岩質角礫凝灰岩,
凝灰岩, 凝灰質砂岩, 頁岩 | 流紋岩 | ||||
構成岩類は, 新第三紀以降の火山噴出物および火山砕屑物を主とし, 正規の堆積岩層は, 一部にふくまれているにすぎない。 地質構成を大きくみると, [ 1 ] 中新世岩類, [ 2 ] 鮮新世に属する火山砕屑物と古期火山岩類, [ 3 ] 洪積世に属する新期火山岩類と段丘堆積物, [ 4 ] 冲積世の崖錐堆積物, 扇状地堆積物および冲積層の4つに区分することができる。
中新世岩類は, 主として緑色凝灰質集塊岩, 緑色角礫凝灰岩, 緑色凝灰岩, 砂岩, 泥岩, 硬質頁岩, 流紋岩, プロピライトなどから構成され, 知床半島の基部地域に発達する 忠類 層および 越川 層を構成している岩相に対比される。 とくに火成岩としてはプロピライトの発達がいちじるしい。 砂岩, 泥岩などの正規堆積岩層は, 緑色凝灰質岩層の中に発達しており, 硬質頁岩層は緑色凝灰質岩層の上位に発達している。
鮮新世に属する地層は, 凝灰質集塊岩層と同質角礫凝灰岩を主体とし, 流紋岩質凝灰岩をともなう。 このほか正規堆積岩としては泥岩および凝灰質砂岩を夾む。 この火山噴出物は, この図幅地域外にも広く発達しており, きわめて広範囲にわたる火山活動の所産である。 岩相から, 鮮新世とされている隣接する 春刈古丹 地域に発達する 陸士別 層中に発達する灰白色 流紋岩質凝灰岩の薄層を夾在していることから, 鮮新世の火山活動と考えられる。 さらにこれらの地層の上位に安山岩の熔岩類が発達している。
第四紀の活動と考えられる, 新期の火山噴出物は, 普通輝石紫蘇輝石安山岩質, 紫蘇輝石普通輝石安山岩質のものを主体とするが, 一部に含かんらん石紫蘇輝石安山岩もある。 また, 規模の大きな火山砕屑流や普通輝石紫蘇輝石安山岩質熔結凝灰岩も発達している。 また, 海岸線にそって, かなり明瞭な段丘地形が発達していて, 砂礫層をのせている。 このほか, 山地帯には, 崖錐堆積物が発達しており, 河川に沿っては現河床堆積物が, 海岸に沿っては海浜堆積物が, それぞれ分布している。
この図幅地域の基盤を構成しており, 西側のオホーツク海側では, ホロベツ川, ウトロ川の流域 [ 位置不明 ; 本図幅の西隣の宇登呂図幅地域内 ? ] , イワウベツ川の中流流域およびイタシュベツ川の流域に, それぞれ分布している。 また海岸線にそって露出しているばかりでなく, [ 根室海峡側の ] ルサ川の流域, キキリベツ川の流域, ケンネベツ川, モセカルベツ川, オッカバケ川の海岸に, また, サシルイ川の流域, チトライ川の流域, 羅臼川の流域および 西別 川の流域 [ ← これは図幅地域南端・東西中央付近の「 知西別 川の流域」の間違い ? ] に, それぞれ分布している。
おもに, 火山噴出物で特徴づけられていて, 正規の堆積岩層は,一部にかぎられている。
大きくみると 中新世の火山砕屑岩層および正規堆積岩層から構成されている羅臼川層, イワウベツ川層およびルサ川層, 鮮新世の火山砕屑物および火山岩類とにわけられる。
この地層は, 地域の南部で, 知西別川の上流, 羅臼川上流および同川の支流流域にそれぞれ分布している。 この地域の最下位の地層で, 凝灰緑色の流紋岩質角礫凝灰岩を主体とし, 同質凝灰岩, 凝灰質砂岩および頁岩の薄層を夾在している。 知西別 川の上流では N 10°W・60°E, 羅臼川の左股川の上流では N 40°E・15°SE の走向・傾斜をそれぞれしめしている。
この地層の上位にはイワウベツ川層が整合でのっている。 さらにこれらは, 安山岩質プロピライトで貫かれているほか 立仁臼 熔岩, ホロベツ熔岩, 遠音別岳 噴出物および羅臼岳火山噴出物などで不整合におおわれている。
岩相から, 知床半島の基部地域に発達している忠類層に対比されるものと考えられる。
この岩石は, 知西別川の上流に露出している。 先にのべた流紋岩質角礫凝灰岩を主体とする羅臼川層の一部にふくまれる, 流紋岩熔岩と考えられる。 この熔岩の上位は侵蝕されて, さらに, 新規の火山岩や火山砕屑物におおわれていて不明である。
岩質は灰緑色を呈し, 一部に流理構造が発達している。 また, ところによっては黄鉄鉱の鉱染がいちじるしい。
この地層は, イワウベツ川の中流, ホロベツ川の上・中流流域, 羅臼川の中流流域にそれぞれ発達している。 先にのべた羅臼川層の上位に整合でのっており, 鮮新世の火山噴出物および第四紀の火山噴出物で不整合におおっている。 イワウベツ川の上流では N 50°E・22~45°NW, ホロベツ川の上流では N 85~70°E・25~30°NW, 同川の中流では N 60°W・25°EN, 羅臼川の中流では N 20°E・15°E, 同川の右股川では N 5°E・20°W, 知西別川の上流では N 54°E・40°SE の走向・傾斜をそれぞれしめしている。
構成員は, ほとんど凝灰質集塊岩, 同質角礫凝灰岩からなる。 暗緑色ないし暗灰緑色を呈する安山岩質のものである [ ← 地質図上の記号 Igt の地層 ] 。 この地層中に黒色ないし暗灰色の頁岩, 泥岩および灰緑色の凝灰質砂岩の互層を夾在している [ ← 地質図上の記号 Ish の地層 ] 。 この正規堆積岩はイワウベツ川の流域, ホロベツ川の中・下流域, 知西別川および羅臼川の中流域に発達している。
岩相から, 知床半島の中部から基部地域に発達している 越川 層の一部, および同層と指交する 奥蘂別 集塊岩層に対比されるものかも知れない。
イワウベツ川の流域, ホロベツ川の上流, フンベ川 [ ← 図幅地域南西隅やや北方 ] の上流流域, 羅臼川の中流流域に分布している。
先にのべた羅臼川層およびイワウベツ川層を貫いている。 一部は岩床状をとっている。 暗緑色を呈する安山岩質のものである。
このプロピライトの活動は, 奥蘂別集塊灰岩を貫くプロピライト岩脈の活動の時期と同時期のものと考えられる。
この地層は, ルサ川の中流流域に最も広く発達しているほか, 羅臼温泉の東部地域および知西別川の支流の右股沢流域にも分布している。 この図幅地域の東側だけに発達しているのが特徴である。
ルサ川の流域では, N 10°W・36°E, N 20°E・15°W, 羅臼温泉の東部では N 20°E・30°ES の走向・傾斜をしめしている。
先にのべたイワウベツ川層の上位に整合にのり, サシルイ川層, 立仁臼 熔岩, トッカリムイ熔岩, イロイロ沢熔岩などのほか, 新期火山噴出物に不整合でおおわれている。
岩質は, 硬質頁岩の薄層と凝灰質砂岩の薄互層で, 一部に塊状の黒色泥岩の薄層を夾在している。
岩相から, 知床半島の中部以南に発達している越川層の上部の頁岩層に対比される。
この地層は, 東部地域に広く発達している。 [ 根室海峡沿岸の北方から ] トッカリムイ海岸, ルサ川の下流流域, キキリベツ川の流域, ケンネベツ川の流域, モセカルベツ川沿い, オッカバケ川の流域, サシルイ川と羅臼川とにはさまれた山地などに, 広く分布している。 このほか, 図幅の西端部の [ オホーツク海沿いの ] ウトロ地域および [ 北方の ] イダシュベツ川の下流流域にも分布している。
トッカリムイから知円別にいたる間では N 5~10°W・10~30°E, オッカバケ川の河口では N 5°W・20°W, 同川の中流流域では N 5°E・20°SE, 羅臼川の下流流域では N 70°E・28°SE および N 50°W・22°SW の走向・傾斜を, それぞれしめしていて, 大きくみて, 東に傾斜する単斜構造をしめしている。
一方, 西部地域では走向・傾斜は明らかでないが, 全体として北西に傾斜しているようである。
岩相は普通輝石紫蘇輝石安山岩質集塊岩を主体としているが, ところによっては角礫凝灰岩のところもある [ ← 地質図上の記号 Sag の地層 ] 。 東部地域では泥岩層, 凝灰質砂岩層を夾在しているほか [ ← 地質図上の記号 Sms の地層 ] , ショウジ川の流域やキキリベツ川の流域では, 灰白色の流紋岩質凝灰岩の薄層を介在している [ ← 地質図上では記号 Sms の地層になっている ] 。
このような岩相から, 知床半島地域に発達している鮮新世に属する 幾品 層, および 陸士別 層に対比されるものと思われる。
これまでのべた各地層を貫いて, 岩脈類が発達している。 岩脈は玄武岩(Ba), 玄武岩質安山岩(An), および石英安山岩(Dc)である。
玄武岩 [ 岩脈 ; Ba ] は, ホロベツ川の流域ではイワウベツ川層およびサシルイ川層を, ルナ川の流域と羅臼川の下流流域ではルサ川層およびサシルイ川層を, それぞれ貫いている。 岩脈の貫入方向は N - S または NE - SW の延長方向をしめすものが多い。 黒色を呈する緻密 堅硬な岩石である。
玄武岩質安山岩 [ 岩脈 ; An ] は, トッカリムイ海岸に露出しており, サシルイ川層を貫いている。 岩脈の延長方向は N - S である。
石英安山岩 [ 岩脈 ; Dc ] は, 図幅西端部 [ ← 河口は本図幅の西隣の宇登呂図幅地域内 ] にあるペレケ川の支流, および羅臼川支流の清水沢の上流 [ ← 羅臼鉱山の北方 2 km ] に, それぞれ露出している。
前者 [ ← ペレケ川の支流の石英安山岩 ? ] では, イワウベツ川層, サシルイ川層を貫き, 段丘堆積物でおおわれている。 後者 [ ← 羅臼川の中流・上流の石英安山岩 ? ] ではイワウベツ川層を貫き, 新期火山噴出物でおおわれている。
ペレケ川支流の石英安山岩は, 暗灰緑色を呈し, 炭酸塩化および緑泥石化作用をうけている。 石英と斜長石の斑晶がみとめられる。
清水沢に露出している石英安山岩は, 灰白色を呈し, 珪化されて石基は玉髄質石英集合体で交代されている。
以上のべた岩脈類の迸入時期は, 野外の観察から, サシルイ川層堆積以後である。
鮮新世に属する安山岩熔岩類として, 立仁臼熔岩(Tad), ハシコイ熔岩(Had), トッカリムイ熔岩(Ttd), 登山口熔岩(Tod), イロイロ沢熔岩(Ird), ホロベツ川熔岩(Hod)があげられる。
立仁臼 熔岩 [ Tad ] は, 羅臼川と知西別川とにはさまれた山地を形成している。 イワウベツ川層, ルサ川層およびサシルイ川層を不整合でおおい, 段丘面で切られ, 段丘堆積物でおおわれている。
岩質は暗灰青色を呈する緻密 堅硬な, 普通輝石紫蘇輝石安山岩である。
ハシコイ溶岩 [ Had ] は, [ サシルイ川の河口の 1 km 南方の ] 飛仁帯 の西方山地を形成している。 サシルイ川層の上位に発達しているが, 直接の関係は明らかでない。
岩質は暗灰色を呈する, きわめて堅硬な岩石で, 一見 玄武岩様の外観をとる普通輝石紫蘇輝石安山岩である。 サシルイ川層を構成している 安山岩質集塊岩層を構成している岩塊の岩質とよく似ているので, サシルイ川層中の熔岩かも知れない。 今後検討する必要がある。
トッカリムイ熔岩 [ Ttd ] は, 図幅地域の北東隅に位置するトッカリムイ岳(標高 569 m)を形成する熔岩である。 サシルイ川層の上位に発達しているが, その直接の関係は不明である。
岩質は, 黒色ないし暗灰色を呈し, 一部は多孔質な普通輝石紫蘇輝石安山岩である。
登山口熔岩 [ Tod ] は, サシルイ川と羅臼川とにはさまれた山地に分布している。 イワウベツ川層, ルサ川層, サシルイ川層を不整合におおっている。
岩質は, 暗灰青色から暗緑色を呈するやや粗粒な角閃石安山岩である。 羅臼温泉付近に発達するものは, 温泉作用をうけて緑泥石化がいちじるしく, 粘土化がすすんでいる。
イロイロ沢熔岩 [ Ird ] は, イダシュベツ川の北東約 1 km のところにあるイロイロ沢流域, およびイタシュベツ川の中流流域に分布している。 サシルイ川層の上位にのり, 三峯火山噴出物や硫黄山火山噴出物でおおわれている。
岩質は暗灰青色を呈する緻密 堅硬な, 紫蘇輝石普通輝石安山岩である。
ホロベツ川熔岩 [ Hod ] は, 図幅地域の西南部のホロベツ川の南方流域 [ ← ウトロ山(標高 588 m or 599 m)から北東に延びる地域 ] , 斜里町と羅臼町とを境する尾根に分布している。 イワウベツ川層, 安山岩質プロピライト, サシルイ川層を不整合でおおい, 遠音別火山噴出物でおおわれている。
岩質は, 暗灰色を呈し, 板状節理の発達がいちじるしい普通輝石紫蘇輝石安山岩である。
以上のべた熔岩類は, 上の地層と関係が不明なものが多く, 全部が鮮新世火山活動の所産かどうか, 疑問な点も少なくない。 したがって, これらの熔岩をもたらした火山活動の時期を検討する必要があろう。
この図幅地域に発達する第四系は, 新規の火山噴出物, 段丘堆積物, 扇状地堆積物, 現河床堆積物および海浜堆積物である。
図幅地域の山稜部には, 新しい感じの外観をもつ安山岩の熔岩や, 集塊熔岩が分布しており, さらに, その裾野に火山砕屑流が発達している。 これらは, さきにのべた古期火山噴出物にくらべて, かなり火山としての形態をのこしていることや, 分布のようすが全く違っている。 したがって, 古期火山噴出物とは時期の違った火山活動による所産とみられる。 この新期火山噴出物のなかには, 洪積世の噴出によるものと, 洪積世から現世にわたるものの二つがあると考えられる。
発達のようすから, 遠音別岳火山噴出物, 羅臼岳火山噴出物, 三峯火山噴出物, 硫黄山火山噴出物にわけられる。
この火山噴出物は, 南に隣接する 春苅古丹 図幅 [ or 八木浜図幅 ] の北西隅にある, 遠音別火山体を形成している。
この図幅地域では, 西南隅に分布しており, 下位から含かんらん石紫蘇輝石普通輝石安山岩(Ond1), 普通輝石紫蘇輝石安山岩(Ond2), および紫蘇輝石普通輝石安山岩(Ond3)の3つの熔岩に区分される。
含かんらん石紫蘇輝石普通輝石安山岩 [ Ond1 ] は, ペレケ川の上流流域およびフンベ川 [ ← 図幅地域南西隅やや北方 ] の上流流域に分布している。 鮮新世のサシルイ川層とホロベツ熔岩を, 不整合におおっている。
岩質は, 黒色を呈する細粒の緻密な岩石で, 斜長石 > 普通輝石 > 紫蘇輝石 ≫ かんらん石の斑晶がみられる。
普通輝石紫蘇輝石安山岩 [ Ond2 ] は, 遠音別岳の東側の山峯を形成している熔岩で, 図幅地域の西南部で, 斜里町と羅臼町とを境する尾根に広く分布している。 中新世の羅臼川層, 流紋岩, 鮮新世のホロベツ川熔岩を不整合におおっている。
岩質は, 淡灰色を呈するやや粗粒な岩石で, 斜長石 > 紫蘇輝石 > 普通輝石の斑晶がみられる。
紫蘇輝石普通輝石安山岩 [ Ond3 ] は, 遠音別岳火山噴出物の最上位の熔岩で, 図幅地域の西南隅に分布している。 平坦な地形面を形成している。 柱状節理の発達がいちじるしい。
岩質は, 暗赤紫色を呈する粗粒な岩石で, 斜長石の大きな斑晶(3 mm)をふくんているのが特徴である。
この火山噴出物は, 羅臼岳火山体を構成しているほか, その一部はオホーツク海に流入し, 熔岩台地を形成し, 一部は火山砕屑流として東・西両地域に広く分布している。 一部は冲積世の所産と考えられる。
羅臼岳火山噴出物は, 下位から 普通輝石紫蘇輝石安山岩熔岩(Rad1) , 紫蘇輝石普通輝石安山岩熔岩(Rad2) , 紫蘇輝石普通輝石溶岩(Rad3) , 普通輝石紫蘇輝石安山岩質砕屑流(Raj) , 普通輝石紫蘇輝石安山岩質熔結凝灰岩(Raw) , および羅臼岳山頂の 紫蘇輝石普通輝石安山岩(Rad4) にわけられる。
紫蘇輝石普通輝石安山岩熔岩(Rad2) は, オホーツク海に流入し, 遠音別と岩尾別の平坦な熔岩台地を形成している。 岩質は暗灰色を呈し, 一部は熔結凝灰岩様の外観を呈している。
安山岩質砕屑流 [ Raj ] は, 羅臼岳を中心として東・西・南の三方に広く分布している。 暗灰色を呈する普通輝石紫蘇輝石安山岩の角礫の間を 同質の細い砕屑物でうめたもので, 方々に流れ山と考えられる小突起部が散在している。
羅臼岳と硫黄山の間の尾根を形成している火山噴出物である。 普通輝石紫蘇輝石安山岩(Mid1~Mid3) が多く, 紫蘇輝石普通輝石安山岩熔岩(Mid4) は小規模である。
一部の 普通輝石紫蘇輝石安山岩熔岩(Mid2) は, 東に流下し, オッカバケ海岸近くにまで達している。
いずれも暗灰色の柤粒な岩石で, 一部は多孔質のところもみられる。
この火山噴出物は, 硫黄山を構成しているもので, 図幅の北部地域に広く分布している。
下位からカムワッカ川の下流流域, [ イダシュベツ川の北東約 1 km にある ] イロイロ沢および [ 硫黄山の東方 500 m から北流する ] ウブシノツタ川に分布する 普通輝石紫蘇輝石安山岩質集塊岩(Iod1) , 東部地域に広く分布する 普通輝石紫蘇輝石安山岩熔岩(Iod2) , 北部地域に広く発達する 普通輝石紫蘇輝石安山岩熔岩(Iod3) , 硫黄山をつくっている 紫蘇輝石普通輝石安山岩(Iod4) , および硫黄山の南にあるドームを形成する 紫蘇輝石普通輝石安山岩(Iod5) に分けられる。
いまなお, 硫黄活動がつづいている活火山である。
オホーツク海岸では宇登呂からホロベツ川にいたる間に, 根室海峡海岸では [ 図幅地域北端付近の ] トッカリムイから [ 図幅地域南端付近の ] 羅臼にいたる間に, それそれ標高 50~100 m の平坦な段丘面が発達しており, 砂礫層をのせている
このほか, イワウベツ川の下流および羅臼川の下流の河岸にそって, 現河床からの比高 5~10 m のところに, 明瞭な平坦面が発達している。 この平坦面に礫層をのせている。 堆積物は砂礫のみからなり, まえの海岸にそって発達している段丘堆積物とは, まったく性質が違う。
図幅地域の西南部, 羅臼川の支流の清水沢の北部山地, 羅臼温泉地域, キキリベツ川とモセカルベツ川とにはさまれた [ 根室海峡側の ] 海岸地帯, ルシャ川 [ ← 図幅地域北端の根室海峡側の海岸に近いトッカリムイ岳付近から西方・北西方に流下し, オホーツク海側に河口をもつ川 ] の上流の各地域に発達している。 背後の山地から供給されたいろいろの大きさの礫が, 多量に堆積したもので, 緩傾斜の特徴ある地形をつくっている。
地域の北西で, オホーツク海に注ぐイタシュベツ川口周辺に発達している。 背後の山地から供給されたいろいろの大きさの礫が多量に堆積したもので, 中には品位の低い硫化鉄鉱や, 硫黄鉱石も混じっている。
図幅地域内を流れる大小各河川の流域, および海岸にそって分布している。 礫, 砂, 粘土から構成されている。
この地域は, 知床グリーンタフ地域の一部に属するが, 銅・鉛・亜鉛鉱床にとぼしく, 新ウトロ鉱山があるだけである。 しかし, 規模の大きな褐鉄鉱鉱床が所々に存在しており, このような未開発褐鉄鉱鉱床の存在している地域は, 日本には最早ない。 このほか硫黄鉱床があり, 昭和 11 年に噴出した溶融硫黄は, あまりにも有名である。
以上の鉱物資源のほか, 図幅地域内の所々に温泉が湧出している。
銅・鉛・亜鉛の鉱床としては [ ホロベツ川河口の南方 2 km・ウトロ山の北方 2 km の位置に ] 新ウトロ鉱山がある。 斎藤昌之(1956)によれば, この鉱床は, いわゆる黒鉛式鉱床で, 露頭部から約 5 m 下部を𨫤押し採鉱し, 50 m ほど掘進していたという。 その状態は, 安山岩質プロピライトと黒色頁岩の断層帯に胚胎しているが, 膨縮が少なく, 幅 30 cm で 40 m 確認され, さらに𨫤先にのびている。 下部の状態ははっきりしないが, 上部の坑道水準の約 20 m 下から竪入坑道をきって, 上部坑道の坑口付近に着鉱しているようすから判断すると, 縮小しているようにもみえる。
図幅地域の地質構成と, 褐鉄鉱鉱床の分布をみると, 褐鉄鉱鉱床が存在しているところは, 火山体の周縁部で, 基盤岩類の露出する両者の境界付近, つまり溶岩流などの火山噴出物の縁辺部に相当するところに、 ひじょうに多く存在している。
羅臼岳周辺地域の基盤は, 新第三紀の流紋岩質緑色凝灰岩を主とする羅臼川層, 安山岩質緑色凝灰岩から構成されているイワウベツ川層 およびこれを貫ぬく安山岩質プロピライトからできている。 これらの基盤岩類をおおって羅臼岳火山噴出物が発達しており, 羅臼岳火山体の縁辺部の各所に, 温泉や鉱泉の湧出があり, その中にはいまなお褐鉄鉱を沈澱しているものもある。 火山体を構成している熔岩がきれて, 基盤岩類が露出する西方縁辺部にウトロ鉱山 [ ← 羅臼岳の西南西方 3 km ] が, 東南方の山麓の縁辺部に羅臼鉱山の褐鉄鉱鉱床が, それぞれ存在している。
羅臼岳の北方約 7 km のところに硫黄山がある。 この火山の基盤は, 新第三紀 鮮新世のサシルイ川層, 同時期の紫蘇輝石普通輝石安山岩, 同質集塊岩および凝灰岩から構成されている。 この基盤岩類を不整合におおって, 硫黄山火山噴出物が発達している。
この火山体の山麓でも, 基盤岩の露出地域にうつりかわる付近に, 多くの含鉄温泉や鉱泉が湧出しており, 規模の大きな褐鉄鉱鉱床が存在していて, いまもなお含鉄温泉や鉱泉から, 褐鉄鉱が沈澱形成されている。
硫黄山火山体の北西方山麓で, 基盤岩の露出がみられる縁辺部に, 知床鉱山の第1から第5までの褐鉄鉱鉱床が, また火山の西南方の山麓がきれて, 基盤の鮮新世に属するサシルイ川層や, イロイロ沢熔岩が露出する付近に, イタシュベツの褐鉄鉱鉱床と, イロイロ沢褐鉄鉱鉱床 [ 位置不明 ] が, それぞれ存在している。
これらの褐鉄鉱鉱床は, 鉄明ばん石層と褐鉱鉱層とが互層しているものと, ほとんど鉄明ばん石をともなわない褐鉄鉱層だけから構成されているものの, 2つの型がある。
前者に属するものには, 羅臼鉱山の褐鉄鉱鉱床, ウトロ鉱山の褐鉄鉱鉱床があげられ, 後者に属するものには, 知床鉱山の褐鉄鉱鉱床, イロイロ沢褐鉄鉱鉱床およびイタシュベツ褐鉄鉱鉱床がある。 しかし, 知床鉱山の第2鉱床やイタシュベツ鉱床の一部にみられる, 褐鉄鉱が円錐状に沈澱固定している鉱泉の湧出口周辺には, わずかであるが鉄明ばん石の沈澱がみとめられ, 湧出口をはなれたところでは, ほとんどみられない。
褐鉄鉱の固結のていどをみると, 鉄明ばん石をともなう褐鉄鉱は, 固結の度合が高く, 緻密 堅硬なものが多い。 これに反して, 鉄明ばん石をともなわないものは, 前者にくらべて固結の度合は低い。
また, 一般に鉱層の上部から下部にむかって, しだいに固結の度合が高い傾向をしめしている。
鉱石には塊状鉱と粉状鉱とがある。 塊状鉱は鉱層の下部に, 粉状鉱は最上部に, それぞれ発達している。
塊状鉱は黒褐色, 暗褐色, 黄褐色などを呈し, 緻密 堅硬なもの, 塊状 多孔質なもの, 塊状をとっていても粉状になりやすいものなど, 多種多様である。 一般に黒味をおび褐色を呈するものは緻密 堅硬で, 明るい褐色を呈するものほど軟質となる。
塊状多孔質な鉱石には笹, 白樺, 蘇苔類などの植物の印痕がよくみられる。
褐鉄鉱は含水酸化鉄鉱物の針鉄鉱で, 硫黄含有量の高い褐鉄鉱は針鉄鉱のほか鉄明ばん石がふくまれている。
鉄明ばん石は, 一般に鮮黄色ないし帯褐黄色を呈し, ときには帯黄褐色のものもある。 緻密 塊状のものが多く, ときには粉状となることもある。
| 地域名 | 鉱山名または鉱床名 | Fe % | SiO2 % | S % | P % | K2O % | As % | 分析者 | 備考 |
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| 地域名 | 鉱山名または鉱床名 | Fe % | SiO2 % | S % | P % | K2O % | Na2O % | 分析者 | 備考 |
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褐鉄鉱の品位は, 鉄は 47~57 % で, その含有量は良好である。 硫黄は一部に 1 % をこえるものもあるが, 全体を通じてとくに多いというほどでない。 燐についても硫黄と, ほぼ同じことがいえる。 カリは一部に 2 % 以上の含有量をしめすものもあるが, 0.1~1.0 % をしめすものが多い。 また砒素はきわめて微量である。
鉱量は褐色鉄鉱約 350 万トン, 鉄明ばん石約 60 万トンが期待できる。 この鉱量は, 知床半島における全鉱量の 95 % を, この図幅地域でしめている。
図幅地域内に存在している硫黄鉱床には, 硫黄山の鉱床と, 硫黄山中腹の爆裂火口から噴出した溶融硫黄鉱床があげられる。
前者の鉱床は, 標高 1,000~1,300 m のところで, 爆裂火口の側壁に存在している。 長径 100 m, 短径 20~30 m の範囲をもった昇華硫黄鉱床で, いまもなお硫気ガスが噴出していて硫黄鉱床を形成しつつある。
地形的にみて, 爆裂火口の側壁という急斜面に存在していることと, 規模が小さいことから, 稼行価値はない。
後者は, 昭和 11 年の 2 月から約 10ヵ月間に 硫黄山の北西部中腹の爆裂火口から多量の溶融硫黄を間歇的に噴出した。 カムイワッカ川に流下した硫黄の総量は, 数ヵ月中に 20 万トンに達する。 純粋にちかい硫黄が河床を埋め, また, 熱湯とともに海に流れこんだ粉状硫黄は, カムイワッカ川口付近の海岸一面に波浪により打ち上げられ, 一時は全く硫黄の砂浜をつくったという。
図幅地域内は千島火山帯にふくまれ, 新期火山活動がおう盛に行なわれた地域で, 遠音別火山, 羅臼岳火山, いまなお噴煙をつづけている硫黄山火山などが脊梁に連なっている。 このため所々に温泉や鉱泉の湧出がみられる。
主なものとしてはオホーツク海側にカムイワッカ川の中流および河口近くの温泉, チャシコツ原野の鉱泉および温泉, イワウベツ川の中流にある岩尾別温泉, ウトロ鉱山の鉱泉があり, 根室海峡側では羅臼川の中流に羅臼温泉がある。 つぎに主なものについて説明する。
カムイワッカ川の河口ちかくに湧出している温泉は, 泉温 48 ℃ 前後で褐鉄鉱を沈澱している。
岩尾別温泉は, イワウベツ川の上流の川岸のイワウベツ川層の中から自然湧出している。
泉温は 40~60 ℃ で, NaCl と NaHCO3 が主要成分で, このほか陽イオンとして Ca + Mg が 7~8 %, 陰イオンとして SO4 が 15 % ふくまれている。
チャシコツ原野の温泉は, 深度 318 m の坑井から揚水しているもので, 泉温は 34~36 ℃ である。 NaCl が主成分で, このほか HCO3 が約 10 %, Ca および Mg を含んでいる。
この温泉の NaCl の起源は, おそらく残留海水の影響によるものであろう。
羅臼温泉は, 羅臼川の本流とその支流にそって 30 数ヵ所から 40~100 ℃ の温泉が湧出している。
羅臼川ぞいおよび元湯の沢に湧出しているものは泉温が高く, 湯の沢ぞいに湧出するものは低温のものが多い。 化学的にみると, H2S ガスをふくむものと, CO2 ガスをふくむものとに区別される。 前者は高温(78~100 ℃)であるのに対し, 後者は低温(38~50 ℃)をしめすものが多い。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN (Scale 1 : 50,000)
(Abashiri - 29, 30)
by Shigeo DOI, Sumitoshi SAKŌ, Kōhei MATSUI and Cheoul Woo KIM (Geological survey of Hokkaidō)
The area of the sheet map is located in between Lat. 45°00' - 45°10' N and Long. 145°00' - 145°19' E, where signifies the central portion of the Shiretoko Peninsula.
The most part of the sheet area is occupied geomorphologicaly by precipitous mountainous land with the low land and terraces at the limited areas. The backbone ridge of the Peninsula trends in the direction of N 40°E along which the volcanoes of the Quaternary such as the Ioh-Zan(1562.8 m), Rausu-Dake (1660.7 m), and nameless mountain(1390 m) are arranged.
The geology of the sheet area is composed of the formations of the Neogene and Quaternary as well as volcanic rocks.
The formations of the Neogene as the basement complex are divided into the Rausu-gawa, Iwau-betsu-gawa, Rusa-gawa and Sashirui Formations from the lower to the upper in which the lower three formations are of the Miocene and the uppermost formation of the Pliocene.
The Rausu-gawa Formation, the lowest of the sheet area, is distributed in the upper reaches of the Chi-nishi-betsu river, the Rausu river and the upper reaches of its tributaies. It constists mainly of rhyolitic tuff breccia associated with rhyolitic tuff, tuffaceous sandstone and also intercalated rhyolite lavas.
The Iwau-betsu Formation distributed in the vicinities of the Iwao hot spring, Horobetsu river, and also the middle courses of the Rausu and Chi-nishi river, is composed mainly of andesitic-tuff breccia intercalated with shale and mudstone. The andesitic propylites intrude into these beds.
The Rusa-gawa Formation covering the Iwau-betsu Formation with unconformity, is distributed in the vicinities of the lower course of the Rausu river and the middle course of the Chi-nishi river as well as the Rusa. It consists of hard shale with thin beds of mudstone and tuffaceous sandstone.
The Sashirui-gawa Formation of the Pliocene covers all of the formations above mentioned with unconformity. It is distributed in the vicinities of the lower courses of the Rusa and the Kikiri-betsu, the middle as well as the lower courses of the Kenne-betsu, the Mosekaru-betsu, the middle as well as the lower courses of the Otsukabake, the Sashirui, the Chitorai, and the lower course of the Rausu, the middle and the lower courses of the Idashu-betsu, the lower course of the Horo-betsu, the Pekere and the middle course of the Funbe. It is composed of the andesite aggromerate and tuff breccia intercalated with rhyolitic tuff, tuffaceous sandstone and mudstone beds.
Every formation above mentioned is intruded by various dikes of dacite, basaltic andesite and basalt. Furthermore, the latest lavas of the Tachi-ni-usu lava(clinopyroxene-hypersthene andesite), the Hashikoi lava(clinopyroxene-hypersthene andesite), the Tokkarimui lava(clinopyroxene-hypersthene andesite), the Tozan-guchi lava(hornblende andesite), the Iroiro-zawa lava (hypersthene-clinopyroxene andesite) and the Horo-betsu-gawa lava (clinopyroxene-hypersthene andesite) covers all of the Neogene formations and igneous rocks.
The formations of the Quaternary are divided into five of terrace deposit of the Diluvium, talus deposit, fan deposit, river bed deposit and beach deposit of the Alluvium. The terrace deposits are seen along the coast with the flat plane of 30 - 100 m high above sea level and are composed of sand and gravels. Some of the talus deposits might be of the Deluvium. The fan deposit is only found at the estuary of the Idashu-betsu river and is composed of gravels, boulders and sand derived from the Mitsumine and the Ioh-zan volcanoes.
The volcanic rocks of the Quaternary are divided into the Onne-betsu, the Rausu-dake, the Mitsumine and the Ioh-zan effusives. The Onne-betsu effusives distributed in the southwestern corner of the sheet area, are composed of olivine bearing hypersthene-clinopyroxene andesite, clinopyroxene-hypersthene andesite and hypersthene-clinopyroxene andesite. The Rausu effusives building the Rausu volcanic body cover extensively the central portion of the sheet area. They are composed of clinopyroxene-hypersthene andesite, hypersthene-clinopyroxene andesite and their deviatives as breccia and welded tuffs. The Ioh-zan effusives building the Ioh-zan volcanic body, is distributed extensively at the northern portion of the sheet area. These effusives are composed of clinopyroxene-hypersthene andesite and clinopyroxene andesite some of which might be of the alluvium though regarded as of the Diluvium in the present case.
The natural resources in the sheet area, are the metallic as well as non-metallic ore deposits such as copper-lead-zinc, sulpher and limonite including hot springs. The Shin-Utoro mine having been prospected is among of the copper-lead-zinc ore deposits. It is the vein type deposit emplaced within the green tuff bed of the Iwau-betsu Formation about 2 km north of Mt. Utoro. The veins with intense argillization constituts of galenas and zinc-blende having the low quality in average though the high quality in some portion.
The limonite ore deposits are associated with sulpher deposits, pyrite-impregnation deposits, chalybeate hot springs and mineral springs along the coast of the Sea of Okhotsk where the Shiretoko mine, the Idashubetsu mine, the Utoro mine are arranged. The Rausu mine and the Rausu-ko deposit are found on the side of the Nemuro Stait. These deposits are divided into two types such as the alternation of limonite and jarosite and the limonite bed without jarosite. The former type of the deposit is represented by the Utoro mine. The quality is fairely good assaying 47 - 57 % of iron. The reserves are estimated to be 3,500,000 tons approximately.
The sulpher deposits are found in the vicinity of the Ioh-zan volcano of which the north crater wall emplaces the Sublimate sulpher deposit and the west slope of the volcano outcrops the melted sulpher deposit at its middle way. The former would not be able to work because of small in scale and the later formed in the 1936 activity had been worked out so that the deposit has already been exhausted.
The Iwao-betsu and Utoro hot springs are situated at the western part of the sheet area while the Rausu hot spring at the east. The Iwao-betsu hot spring with the temperature of 40 - 60 ℃ and the Rausu hot spring of 36 ℃, are utilized for bathing at the inns. The hot springs at the Rausu with temperature of 40 - 100 ℃ gush out from more than 30 spots in the vicinity of the Rausu river and its tributaries and are utilized for bathing at the private as well as official inns.
昭和 45 年 3 月 28 日 印刷 昭和 45 年 3 月 31 日 発行 著作権所有 北海道開発庁