01028_1961

5万分の1地質図幅説明書

宇登呂

(網走 第 28 号)

北海道立地下資源調査所
北海道技師 杉本良也
北海道技師 松下勝秀

北海道開発庁

昭和 36 年 3 月


この調査は, 北海道総合開発の一環である, 地下資源開発のための基本調査として, 北海道に調査を委託し, 道立地下資源調査所において, 実施したものである。


目次

はしがき
I. 位置および交通
II. 地形
III. 地質概要
IV. 新第三系
IV.1 遠音別川層
IV.2 粗粒玄武岩
IV.3 宇登呂層
IV.4 石英安山岩
V. 第四系
V.1 上位段丘堆積物
V.2 下位段丘堆積物
V.3 遠音別岳火山噴出物
V.4 崖錐堆積物
V.5 冲積層
VI. 応用地質
参考文献

Résume(in English)

1 : 50,000 地質図幅説明書

宇登呂

(網走 第 28 号)


はしがき

この図幅および説明書は, 昭和 34 年に実施した野外調査の結果を整理したもので, ここにその概要を報告する。 なお, 現在隣接の峰浜・春刈古丹図幅の調査を実施中なので, この図幅内の問題点は逐次明らかとなろう。 地質学的には, この地域の基盤は, 東部北海道のグリンタフ地域に, 脊陵部をしめる第四紀の火山岩類は, 千島火山帯にそれぞれ相当するものである。

この地域内の地質について公表された資料は少なく, わずかに, 門倉三能 1), 2) と北海道総合開発委員会事務局 3) とによる地質調査報告があるにすぎない。

I. 位置および交通

この図幅の範囲は, 北緯 44°0'~44°10', 東経 145°0'~144°45' に位置し, 知床半島の西側の中央部にあたり, 行政的には, 斜里町にふくまれる。

第 1 図 位置図

冲積原の発達が小規模なため, 漁業をいとなむ人々が, 海岸線に散在する。 その中心街である宇登呂は, 斜里町から約 30 km に位置し, 半島西側の最北端の村落にあたる。 また, 海岸線の背後に発達する高位段丘面には, 気候的悪条件になやまされながらも, 十数戸の人々が営農しており, 山地は森林におおわれ, 現在その一部の伐採が行なわれている。

昭和 34 年以前のこの地区は, わずかに歩道程度の道路が通じていたにすぎなかつたが, 同年宇登呂・斜里間に自動車道路が開通したので, 観光面から一躍脚光をあびるようになつた。 しかし, この海岸道路より山地に入れば, 全く交通はとだえてしまう。

II. 地形

この図幅内地域は, 冲積原の発達が不良で, ために海岸線に沿つては急崖絶壁を構成し, 景勝地となる。 そのうち, チャラッセナイ川がオホーツク海に注ぐ個所では 玄武岩床が発達するため高さ 40 数 m の飛爆をかかげ, またオショコマナイ川以東の海岸線にそつて発達する集塊岩は, 波浪によつて, いちじるしく浸蝕をうけるために, 暗礁や岩礁が発達するので(第 2 図), 観光客をたのしませている。

第 2 図 宇登呂層の海蝕崖

一方, 山地に入ると地形は構成地質と密接な関係をもち, 段丘地区・新第三紀の正常堆積岩や 第四紀火山岩の発達地区・新第三紀の集塊岩地区とに大別される。

そのうち段丘地区は, 高位段丘堆積面に相当し, 遠音別周辺に発達する。 その平坦地形は, 標高 120~140 m 面を形成する。 新第三紀の正常堆積岩や第四紀火山岩の発達する地区は, 知床半島の脊梁に向って次第に高度を増す丘陵状地形を呈する。 とくに火山岩地区では, しばしば熔岩流凹所を形成する。 これに対し, オショコマナイ川, フンベ川上流の集塊岩地域は, 急峻な地形を呈し, 谷も V 字形となる。

図幅内を流れる主な河川は, 遠音別川, シャリキ川, オぺケップ川, チャラッセナイ川, オショコマナイ川, フンベ川, ペレケ川で, いずれも北西流してオホーツク海に注ぎ, 必従谷を形成する。 だが海岸線では, 構成地層の相違により, 規模の差はあるが, 多くの場合滝を形成する。

III. 地質概要

この地域を構成する地質系統は, 新第三系およびそれ以降の地層と火山岩とである。

新第三系は, いわゆる東部北海道に発達するグリーンタフ地域に相当し, また, 千島弧状構造帯 4) の内帯にぞくする。 しかし, 知島半島の西側にあたり, かつ半島の脊梁にそつて背斜軸 1), 2) があるので, この図幅では, 忠類層に相当する地層は認められなく, これより上位の地層がみられる。

図幅内に発達する新第三紀層のうち, 遠音別川層は東部北海道グリーンタフ地域の越川層, 宇登呂層は幾品層にそれぞれ対比される。 しかも, これらの各地層は, おおむね火山活動の影響下にあり, ほとんど化石を有しないので, 時代的意味を含めた層序を組立てることは, 困難ではあるが, 一応, 第 1 表にしめすような地質総括表を作成した。

第 1 表 宇登呂図幅模式柱状概念図

遠音別川層の堆積時においては, 玄武岩床が挾在するが, 所謂硬質頁岩が卓越している。 この岩層はまた泥質団塊の含有で特徴づけられる。

宇登呂層はシルトを挾在する集塊岩 [ 以下の [注] 参照 ] で特徴づけられる。 この集塊岩の下位には, 玄武岩質集塊岩相もみられ, かつ上部の安山岩質集塊岩中にも玄武岩塊もみられるので, 遠音別川層中の粗粒玄武岩活動に引続くものと解される。 その後, 宇登呂附近にみられる小規模な石英安山岩の貫入が行なわれた。 したがつて, 新第三系の火成活動は, 基性から酸性へとうつりかわる。

[注]
隣接の羅臼図幅の幌別川河口周辺には標式的な幾品層に相当する岩相が発達する。 したがつて, その時代については問題がある。

一般に新第三紀層の走向は NS~N 35°E で, 半島の延長方向と類似するが, 宇登呂附近では EW となる。 傾斜は, フンベ川以南では 20°~35°NW~SW をしめし, 波状褶曲を行なう。 すなわち海岸線よりに背斜軸, これより以東に向斜軸がそれぞれ存在する。 これに対し, 宇登呂周辺では 25°~30°Nとなり, ドーム状構造を呈するようである。

断層系統としては, 海岸線そいに 半島とほぼ同方向の N 30°~N 40°E の走向断層やこれに直角な派生断層がみられる。 これらの構造運動は, 宇登呂層堆積後に行なわれた。

第四紀に入つては, 遠音別周辺に発達する高位段丘堆積物, 海岸線に沿う小規模な低位段丘堆積物の堆積が行なわれた。

その後, 遠音別岳火山が噴出して, 遠音別岳火山噴出物をもたらした。 この火山は, 千島火山帯に属し, 国後島と雁行する1つの弧状配列として取扱われるものである。 すなわち, この火山は, 海別岳・羅臼岳・硫黄山に連なって, 半島の中軸にそって分布する一連の火山群の1つである。 これら各火山は, 位置的には, 半島にそう大きな背斜軸の上にあり, しかも, グリーンタフなどの火山活動がいちじるしかった位置にのることにもなる。

図幅中には, 主要な鉱床胚胎層である忠類層に相当する地層の発達はみられないので, 目ぼしい鉱床は存在しない。

IV. 新第三系

この地域に発達する新第三紀層は, 火山砕屑岩類と正常堆積岩とを主要構成員とする。 岩相・岩質から, 遠音別川層と宇登呂層にわけられる。 このほか, 脈岩として粗粒玄武岩・石英安山岩があげられる。

遠音別川層は正常堆積岩が, 宇登呂層は火山砕屑岩がそれぞれ卓越する。 そしてこれら各地層は整合関係にある。

つぎに, これらの各地層について説明する。

IV.1 遠音別川層

この地層は, オショコマナイ川以南の地域に広範囲に分布する。 なかでも, 遠音別川・シャリキ川・オペケップ川の各流域に, 標式的に発達する。

図幅内では, これより下位にあたる地層は, 見当らない。 また, これより上位には, 宇登呂 [ 宇登呂層 ? ] が整合にのつている。

一般に所謂硬質頁岩を主要構成員とするが, 淡緑色砂岩・凝灰質砂岩を挾在し, 泥質団塊をふくむのを特徴とする。

第 3 図 遠音別川層中の硬質頁岩(オショコマナイ川南方の道路)

頁岩は, 泥ないし游泥からなり, 各単層は, 20~50 cm の厚さを有する美しい縞状層理(第 3 図)をもち, 新鮮なるものは暗灰色ないし黒色である。 しかし, 風化すると, 多角状の小塊片にわれ, 淡灰色ないし灰白色に変化する。

ふくまれる団塊は, 拳大から頭大, 時には径 1 mを有するものまであるが, いまだ化石を発見するにいたっていない。

この地層の走向は N 20°~N 35°E, 傾斜は 20°~35°NW~SW をしめし, ゆるやかな波状褶曲を行なう。 しかし, 粗粒玄武岩床の迸入する周辺では擾乱されて, 50°~70°の急傾斜をしめすようになる。

IV.2 粗粒玄武岩

第 4 図 遠音別川層中の粗粒玄武岩岩床(シャリキ川下流)

第 5 図 粗粒玄武岩の柱状節理(オシンコシン)

上述の達音別川層中に岩脈・岩床状(第 4 図)をなして露出する。 小規模なものは幅員 2~5 m のもので, 地質図には剥除した。 しかし, 規模による岩相の変化はみとめられなく, 均質である。 この岩石は一般に柱状節理が発達し, その縦断面は6角ないし8角形を呈する。 とくに, チャラッセナイ川河口の滝(オシンコシンの滝, 第 5 図)の粗粒玄武岩は, この節理の発達が顕著なため, 景勝地の1つとなる。 しかし, 風化すると, 玉ねぎ状の石理をしめし, 集塊岩と誤認されやすい岩相を呈するようになる。

この岩相の新鮮なものは, 晴黝色ないし黒色であるが, 多くは多少変質して暗緑色を呈し, 斑晶鉱物はあまり目立たなく, 堅硬緻密である。

鏡下では, 斜長石と緑泥石とが主要構成鉱物となり, 各鉱物が互に充填しあい, 明らかな填間組織を呈する。

斜長石は, 長柱状の晶癖をしめし, その横縦比は 1 : 7 で, 0.2 × 0.03 mm ほどの大きさのものが多いが, 1.4 × 0.2 mm 大の大型のものもみられる。 とくに後者は, 劈開にそって, 緑泥石・方解石が認められ, また粒状形の普通輝石を包かし, 一部は曹長石に変化する。

緑泥石は, 淡い緑色を呈し, 斜長石の粒間をうめ, 自形を呈するものは少ない。 時に内部が新鮮で, 斑晶の輪郭を有するものは普通輝石を主とし, まれに紫蘇輝石もみられる。

また, シャリキ川上流に露出する岩石は, 孔隙が発達し, 孔壁を基底として放射状の緑泥石集合体が附着し, さらにその外側には方解石・玉髄質石英が発達する。

IV.3 宇登呂層

オショコマナイ川以北の山地や海岸線にそって発達し, 宇登呂を標式地とする。

下位の遠音別川層とは整合関係にある。 というのは, 一部は断層で接するが, オショコマナイ川上流の河底に窓状に泥質団塊を含くむ遠音別川層が, 急崖には宇登呂層が発達し, しかも, この附近の宇登呂層の集塊岩礫は玄武岩質であるので, 遠音別川層中の粗粒玄武岩活動と一連のものとみなされる。 上位は第四紀の段丘堆積物・遠音別岳火山噴出物にそれぞれ不整合におおわれる。 この地層は安山岩質集塊岩を主とし, 泥質頁岩・砂岩層を挾在する。

安山岩質集塊岩層は安山岩礫で特徴づけられ, かつ同質の熔岩をふくむ。 しかし, 上述のように基底附近は玄武岩ないし玄武岩質安山岩礫が卓越し, またこの種の礫は, わずかではあるが上部(海岸線沿いの露出)にもみられる。 したがって, 現在の所, この集塊岩を一括して取扱っておくことにする。

この岩層は, 問題はあるが武佐岳地質図幅の幾品層の差無異集塊岩層に対比されるようである。

含まれる岩塊は, 一般に新鮮であるが, 宇登呂附近では, 網状の方解石・石英脈でつらぬかれ, 緑泥石化作用も顕著である。 さらに, 肉眼的には, 黒色の細粒緻密で, 斑晶のほとんど認められないものや, 多孔質粗鬆な外観をあたえるものまで, 種々ある。 一般に前者は下位, 後者は上位の層準 [ 以下の [注] 参照 ] を示す。

[注]
接隣図幅調査の進展にともない, 細分されると解される。

黒色緻密のものは, 鏡下では, 斑晶鉱物として斜長石・紫蘇輝石がみとめられ, わずかの普通輝石を随伴する。 斜長石は, 長径 0.4~0.9 mm の自形から半自形の柱状結晶で, 曹灰長石附近の成分をしめしている。 紫蘇輝石は, 長径 0.5 mm 程の柱状結晶を示すものが多いが, 0.4 mm 大の粒状形のものもみられる。 時には, その一部が緑泥石化している。

石基は長柱状の斜長石と粒状の輝石および磁鉄鉱・暗灰色のガラスよりなる。 時に, 紫蘇輝石と斜長石よりなる同源玄武岩状包捕獲岩をふくむことがある。

多孔質岩石は, 黒色を呈し, 斑晶のめだつものである。 鏡下では, 斜長石・紫蘇輝石・普通輝石を斑晶鉱物とする。 斜長石は, 長径 1.5~2.5 mm 大のものが多く, 清浄でなく, 曹灰長石附近の成分をもつ。 両輝石は, ともに長径 0.3~0.7 mm 大のものが多く, 新鮮である。

石基は暗灰色を呈するガラスと析木状の斜長石と粒状の輝石・磁鉄鉱よりなる。 なお晶洞の一部には緑泥石の発達することがある。

宇登呂周辺の変質岩は, 方解石脈が発達すると同時に, 斑晶鉱物・石基も方解石で交代されているのを特徴とする。 斑晶鉱物は, 斜長石と有色鉱物である。 斜長石は長径 1.5~2 mm 大の柱状ないし卓状形を呈し, 劈開にそつて方解石に交代され, 一部は緑泥石・曹長石・絹雲母におきかえられている。 これに対し, 有色鉱物は, 新鮮なものは少なく, 緑泥石(主)と方解石(従)とに変っていることが多いが, 普通輝石もみとめられる。 しかし, 多くのものは, なおその外形をとどめている。

石基は, 暗灰色を呈するガラスよりなるが, 一部が方解石・緑泥石におきかえられている。 かつ自形を呈する 0.3 mm 大の黄鉄鉱も散在する。

介在する正常堆積岩は, 一般に凝灰質な泥質頁岩・砂岩で, 層理の発達は良く, 各単層の厚さは 10 cm 程であり, とくに前者は下位の遠音別川層のように泥質団塊をふくまない。

IV.4 石英安山岩

ペレケ川の下流に, 小規模な岩脈として発達する。 宇登呂層を貫き, 上位は, 高位段丘堆積物におおわれている。 したがって, その迸入時代は, 明確ではないが, 周辺の宇登呂層の集塊岩と同様に, 方解石化・緑泥石化作用が認められるので, 宇登呂堆積直後と考えられる。

一般に淡緑色を呈する石基中に, 石英・斜長石・有色鉱物の斑晶がみとめられ, かつ黄鉄鉱が散在する。

鏡下では, 斜長石は, 2.5~3.5 mm の自形ないし半自形の長柱状結晶で, 新鮮なものは少なく, 緑泥石・曹長石でおきかえられている。 有色鉱物は, すべて緑泥石・方解石となるが, なおその外形をとどめているので, 初成的には, 輝石のようである。 石英は, 稜角形の破片状・融蝕形状を呈する。

石基のガラスの一部も緑泥石・方解石化し, 晶洞には, 玉髄質石英集合体が発達する。

V. 第四系

第四紀のうち, 上位, 下位段丘堆積物・遠音別岳火山噴出物などは, いずれも更新世に属する。 後者の火山噴出物の初期は, 苦鉄質集塊岩であり, 晩期には, 中性熔岩となる。

現世の堆積物として, 崖錐堆積物や海岸線にそって小規模に発達する冲積層があげられる。 つぎに, これからの地層について, 古いものから説明する。

V.1 上位段丘堆積物

宇登呂南方のチャシコツ原野を標式地とし, 標高 110~140 m の位置に分布する。

下位は, 新第三系の宇登呂層を不整合におおい, 上位は遠音別岳火山噴出物・崖錐堆積物にそれぞれ不整合におおわれる。

主として, 下位に発達する拳大ないし頭大の火山岩塊を主とし, その間を未凝固の砂, 粘土がうずめている。 時に赤褐色を呈し, 褐鉄鉱床の賦存を思わせる個所もみられるが, 黄鉄鉱鉱染岩塊の酸化によるものである。

V.2 下位段丘堆積物

オペケップ南方の海岸線に小規模に発達し, 標高 20 m に位置する。 なお, 海岸線にそって, 他にもみられるが, 図示する程の分布をしめさないので, 削除した。

遠音別川層を不整合におおうが, 他の岩層との関係は不明である。

頭大ないし拳大の比較的新鮮な円礫化した安山岩を主要構成員とし, その間を未凝固の粗粒な砂と粘土質物が充填している。 時には, 連続性にとぼしい砂層を介在することもある。

V.3 遠音別岳火山噴出物

図幅南東隈より中央部にかけて広範囲に分布し, 高位段丘堆積物や遠音別居をおおっている。 その噴出時代は明確ではないが, 火山自体が相当開析されているので一応更新世とした。 隣接の春刈古丹図幅調査の進展につれ, より明確になろう。

下部は苦鉄質の集塊岩, 上部は中性の熔岩で, それぞれ代表される。

V.3.1 安山岩質集塊岩

図幅のほぼ中央部, チャラッセナイ川流域を標式地とする。 下位は高位段丘堆積物をおおい, 上位は崖錐堆積物・安山岩熔岩に, それぞれおおわれている。

一般に無層理で, 拳大の亜角礫の安山岩塊の間を黄灰色の同源の凝灰質物が充填する。 岩塊は均質で, 暗灰色を呈し, 粗鬆である。

斑晶鉱物は, 斜長石・紫蘇輝石・普通輝石である。 斜長石は曹灰長石附近の成分をしめし, 柱状自形のものが多く, 累帯構造は顕著でない。 時には有色鉱物をポイキリテックに包かすることがある。 紫蘇輝石は長径 0.5 mm 大で, 単斜輝石の反応縁をもち, 自形を呈する。 普通輝石は, 0.5~0.9 mm 大で, 自形ないし半自形を呈し, 大部分が C^Z = 42°~44°である。

石基は主としてガラスからなるが, その中に, 析木状の斜長石と粒状形の両輝石・鉄鉱を包かする。

V.3.2 紫蘇輝石普通輝石安山岩

図幅の南東隈に分布し, 遠音別岳につらなる。 この熔岩の分布地区には, 小規模な凹地がみられ, その実体を観察するにいたっていないが, おそらく熔岩溢流時の形成によるものであろう。

一般に淡暗灰色を呈し, 斑晶のめだつ岩石で上述の集塊岩よりも珪長質である。

斑晶鉱物の量地は, 斜長石 > 普通輝石 > 紫蘇輝石である。 斜長石は, 長径 1 mm 大の長柱状結晶を示し, 曹灰長石の成分を示す。 紫蘇輝石は長径 0.5 mm 大の自形結晶が多く, 単斜輝石の反応縁をもつ。 普通輝石は, 長径 1.0 mm 大で, 割目の発達がいちじるしく, C^Z = 42°~45°である。 時にこれらの斑晶鉱物が聚斑状の集合体を形成することがある。 石基は, 中粒ないし細粒で, 中性長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱・鱗珪石およびガラスよりなる。

V.4 崖錐堆積物

チブスケ周辺に発達し, 遠音別岳火山噴出物の崖錐を主要構成員とする。 各岩塊の間の充填物が少なくて, 空隙にとむため, 降雨季や融雪時には崩落し, 通行の一大障害となつている。

V.5 冲積層

絶壁でオホーツク海にのぞむため, 海岸線にそって発達する冲積層は, 非常に小規模であり, 広い所で 20 m 程にすぎない。 挙大ないし頭大の火山岩礫を主要構成員とし, 砂層の発達はみられない。 ために, 砂鉄鉱床の賦存は, まったく期待できない。

VI. 応用地質

知床半島の主要鉱床胚胎層である忠類層の発達が認められないので, 顕著な鉱化帯や鉱床はみられない。 わずかに, 宇登呂周辺とオペケップ川附近に, 鉱兆地が認められるにすぎない。 すなわち, 前者では, 宇登呂層が, いちじるしい方解石化・緑泥石化の諸作用をうけ, 一部では, 方解石・石英の網状細脈も発達するが, 賤金属は認められない。

また, オペケップ川の北 200 m の粗粒玄武岩岩脈中(第 5 図)には, N 70°E・60°SE の走向・傾斜を示す幅 5 cm の不毛石英脈がみられるが, いまだ硫化鉱物はみられない。

第 6 図 玄武岩中の平行石英脈(オペケプ川南方道路そい)

さらに, 既述のように, 海岸線にそう冲積層の発達が, 小規模であり, かつ礫を主要構成員とするため, 砂鉄鉱床はみられなく, また将来発見される可能性もない。

参考文献

1) 門倉三能 :
知床半島地質調査報告文, 鉱調,No.23,P.1~44, 1916
2) 門倉三能 :
知床半島の地形および地質, 地学雑,Vol.28,P.801~818, 1916
3) 北海道総合開発委員会事務局 :
知床半島地下資源調査報告(概報), 1954
4) Minato,M,et al :
Geotectonic synthesis of the green tuff regions in Japan, Bull. Earthq. Res. Inst. Tokyo Univ. Vol.34,P.237~264, 1956
5) 杉本良也 :
5万分の1玄佐岳地質図幅,同説明書, 北海道立地下資源調査所, 1960

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN (Scale, 1 : 50,000)

UTORO

(Abashiri-28)

By Ryōya Sugimoto & Katsuhide Matsushita (Written in 1961)


Résumé

The area is situated along the coast of the Ohōtsuku Sea in the central western side of the Shiretoko Peninsula. Utoro, centre village of this area, is a fishing port. Some flat lands with maximum height of about 100~140 m above sea level have been bringing under cultivation since the end of the 2nd World War and others are covered with an energic forest.

The only communication linking Shari with Utoro, is a national road along the sea-shore.

Geology

The mapped area is covered wholly with the younger Tertiary and the Quaternary, both of them being rich in volcanic materials, representing the characteristic feature in the Inner Zone of the Kurile Arc.

The geological classifications and their successions are summarized as follows ;

Quaternary
Recent
Alluvium
Talus deposits
Pleistocene
Onnebetsu-dake volcanics
Tertiary
Pleiocene~Miocene ?
Utoro formation
Miocene
Onnebetsu-gawa

Tertiary System

The Onnebetsu-gawa formation is exposed at the cliff on the seashore south of the mouth of the Osyokomanaigawa and in its back mountanious part. The base of the formation can not be seen in this area.

It consists mostly of stratified, gray and hard shale intercalating a thin layer of green tuffaceus sandstone and containing marly nodules 0.3 or 1 m in maximum diameter. In this stage, volcanic activity is of limmited scale. Dolerite is only detected in form of small sheets or dikes.

The formation, although no fossils to determine the age of deposition are discovered, is assigned stratigraphically and lithologically to Miocene in age and is correlative to the Koshikawa formation in the Shiretoko Province.

The Utoro formation occupies the north-eastern part, and is comformable to the Onnebetsugawa formation. In this stage, volcanism following the previous stage is violent, and has been powerfully influenced by marine eruptions ; this formation consists chiefly of andestic agglomerate and sometimes intercalate thin beds of tuffaceous silt and sandstone.

At the early phase, explosive activity of basic magma gave rise thick bed of basaltic andesitic agglomerate, and in next phase the igneous constituents are generally of intermediate character.

The pyroclastics are largly fesh, but at Utoro they have suffered the alterations such as propylitization, silicification, impregnation of pyrites and carbonatization.

Although there are no palaeontological evidences to determine the age of deposition, from the lithic characters and stratigraphical relations, this formation may be correlative to the Ikushina formation in the Shiretoko province.

The thin sheets or dikes of dacite which are altered and slightly mineralized, occur in this formation.

Quaternary system

This system includes the five members, which are named the Upper and Lower terrace deposits, Onnebestu-daka volcanics, Talus deposits and Alluvium.

The terraces which are originated from multiple upheaval movements are developed largly along the coastal line with NE-SW trend, and are seen two steps of flat surface, which inclined toward the northwest.

The Onnebetsudake volcanoes belong to the Kulile volcanic zone and their products are divided by rock facies into two members ; at the early phase of the volcanic activities femic andestic agglomerates were formed and at the late felsic andestic lavas.

The Alluvium is of valley-filled deposits along the streams and of coastal deposits along the Ohōtsuku Sea, which are built up of gravel and various volcanic blocks.

Geological structure

Although the structures of the Utoro formation is not directly known within the area mapped because of the massiveness of the rocks, but is roughly inferable from the intercalated thin layer of tuffaceous silt. On the other hand, that of the Onnebetsu formation is clear.

General viewing, the structure of the Tertiary system is simple showing gentle undulation.

Some faults are classified into two types ; strike fault parallel to the folding axis and cross-faults perpendicular to the axis.

These movements is caused by post-Ikushina orogeny.

The Quaternary deposits rest on the eroded surface of the folded Tertiary system and have been slightly tilted.

Economic Geology

Altered rocks and calcite veins of net-work type are detected at Utoro, but they accompany no base metals.

As the alluvium of coastal deposits consist chiefly of very coarse materials, economical iron placier deposits are not reserved.


昭和 36 年 3 月 25 日 印刷
昭和 36 年 3 月 31 日 発行
著作権所有 北海道開発庁