01002_1962
5万分の1地質図幅説明書
(網走 第 2 号)
北海道立地下資源調査所
北海道技師 小山内煕
北海道技師 三谷勝利
北海道嘱託 太田昌秀
北海道開発庁
昭和 37 年 3 月
この調査は、 北海道総合開発の一環である、 地下資源開発のための基本調査として、 北海道に調査を委託し、 道立地下資源調査所において、 実施したものである。
目次 はしがき I. 位置および交通 II. 地形 III. 地質概説 IV. ウエンナイ層 V. 新第三紀層および同時期火山岩類 V.1 枝幸層 V.2 ケモマナイ熔岩 V.3 金駒内熔岩 V.4 岡島熔岩 V.5 徳志別集塊岩 V.6 ウエンナイ熔岩 V.7 ペンケ層 V.8 辺毛内熔岩 V.9 岩脈類 V.9.1 落切流紋岩 V.9.2 ウスタイベ安山岩 V.9.3 川尻(玻璃質)石英安山岩 VI. 第四紀層 VI.1 段丘堆積物 VI.1.1 第1段丘堆積物 VI.1.2 第2段丘堆積物 VI.2 崖錐堆積物 VI.3 砂丘砂 VI.4 冲積層 VII. 地史 VIII. 応用地質 VIII.1 瑪瑙 VIII.2 亜炭 VIII.3 採石 VIII.4 観光資源 文献 Résumé
5万分の1地質図幅説明書
(網走 第 2 号)
この図幅説明書は, 昭和 35 年に延約 100 日間でおこなった, 野外調査結果を整理し, その概要をまとめたものである。
野外調査には, 地域を分担し, 幌別川から北部地域は, おもに小山内と三谷が, 南部地域は太田が担当した。 なお, 調査にあたって, 北海道立地下資源調査所技師 松下勝秀氏, 同 石山昭三氏, 同 酒匂純俊氏の援助をうけた。
報告にはいるに先だち, 調査援助を賜った, 松下勝秀, 石山昭三, 酒匂純俊の三氏, および協力を賜った枝幸町役場の各位に深謝する。
この図幅のしめる地域は, 北緯 44°50'~45°0', 東径 142°30'~142°45' の範囲である。
行政上 宗谷支庁の管轄に属し, 大部分の地域が枝幸町に, 図幅の西南の一部が歌登村にふくまれる。
浜頓別町から枝幸までは, 海岸沿いに国鉄 興浜北線が通じている。 そのほか, 海岸線に平行して国道が走り, 定期バスの便がある。 また, 枝幸から幌別川に沿って定期バスが運行し, 小頓別に連絡している。 ウエンナイ川, 問牧川などの河川には, 車馬道・歩道が通じていて, 交通は比較的便利である。
図幅地域の地形は, 大まかに次の3つの地形区にわけることができる。
1) は, 標高 500 m 以下で, ゆるい起伏にとむ山地帯を構成しており, 図幅のほぼ全域にひろがっている。 おもに新第三紀の地層と, それをおおって発達する火山岩類とからできている。 図幅北部の新第三紀層が発達する地域 (ウエンナイ川上流域から問牧川にかけての地域)では, 標高 100 m 以下の平坦な地形がみとめられる。 この地形面は, 段丘面の形態をもっているが, 堆積物がみられないこと, および地形面が枝幸層の傾斜面とほぼ一致していること (問牧川支流で枝幸層の構造がほとんど水平となっている)などから, 段丘面としてはうたがわしい。
2) は, 海岸線や河岸に沿って発達している, 模式的な段丘地形である。 南部海岸地域でもっとも模式的にみとめられる。 おおよそ標高 20 m~50 m の面と, 5 m~15 m の面の高低2段が識別できる。 両者は比高 5 m~10 m の段で境しているが, 局部的にはゆるい傾斜面で連続していることもある。 これらは, 北部海岸地域にも追跡され, さらに河川の流域でもみとめられる。 しかし, 河川流域では, 低位の面は不明瞭となっている。 いずれも段丘堆積物の砂礫層をのせている。
乙忠部図幅 1) や目梨泊図幅 2) 地域には, 第1段丘とされた 標高 120 m~180 m におよぶ堆積物をのせている段丘地形面が発達している。 ところがこの図幅地域では, このような高位面に相当する段丘地形はあきらかでない。 また, 第2段丘として一括された [ 以下の [注] 参照 ] 中には, さらに上・中・下の段化がみとめられ, それぞれ堆積物がみとめられている。 おのおのの標高は 40~80 m, 20~35 m, 5~15 m であって, 枝幸図幅地域の高位面(第1段丘)および低位面(第2段丘)は, ともに中段および下段の面に対比することができる。 また, 1) でのべた北部地域の 80 m 前後の面は, 上段の削剥面に対比される可能性がある。
3) は, 河川の流域に発達する氾濫原冲積地と, 海岸にせまく発達している海浜で, 現河川で運搬された堆積物や海浜の堆積物で構成されている。
以上のおおよその区分は, 第 2 図にしめした地形復元図でも, うかがい知ることができる。 ことに, 1) および 2) は, あきらかに識別される。 さらに 1) のうちでも, 問牧川下流からウエンナイ川上流域にかけて発達している平坦面が, あきらかにしめされている。 第 3 図は, 図幅地域の起伏量の分布をしめしたものである。 これによると, 地質的に火山岩の発達する地域では, 起伏量が増加し, 傾斜地が発達していることがわかる。
図幅地域の水系の大部分は, 西から東に流れて, オホーツク海に注いでいる。 そのうち, 幌別川はこの図幅地域で最も大きく, 下流域では, いちじるしく蛇行して, 小さな河跡湖を数多く残し広大な冲積湿地をつくっている。
この図幅地域の地質構成は, 模式柱状図にしめしたとおりである。
この地域の構成岩層は, おもに西部にみられる基盤岩層, ほぼ全域に発達している新第三紀層 およびこれらを基盤とする第四紀の堆積物の3つに大別することができる。
基盤岩層は, ウエンナイ層と呼んだ地層で, 西隣の中頓別図幅 3) 地域に, 広大な分布をしめしているものの一部である。 岩相上から, 先白堊紀の日高累層群の一部と考えられる。
新第三紀の岩層は, 堆積岩類と, いろいろな火山岩類の2つに区分される。 堆積岩類は, さらに基盤岩層を不整合におおって発達する枝幸層と, 図幅の西南隅に分布しているペンケ層とに区分される。
枝幸層は, 乙忠部図幅地域に発達する夕チカラウシナイ層に 岩相・産出化石などから対比することができ, 上部中新世の地層である。 また, ペンケ層は, 主要分布地が乙忠部図幅内にあって, そこの産出化石から, 鮮新世の堆積物と考えられている地層である。
火山岩類は, 下位からおおよそ以下の順に噴出したものと考えられる。
また これらを切る岩脈として以下のものがみとめられる。
これらのうち, 下位から徳志別集塊岩までは, ペンケ層堆積前の噴出物と考えられる。 ペンケ層との直接の関係不明なウエンナイ熔岩は, 変質の状態からペンケ層より前期か同時期で, 辺毛内熔岩より古いものと考えられる。 ペンケ層堆積後の噴出と考えられるのは 辺毛内 熔岩である。
これらの火山岩類は, 堆積岩相との関係から, 新第三紀中新世後半から鮮新世後半にわたって活動したもので, 大部分のものに, いちじるしい2次的変質がみられる。
以上の岩層を削剥運搬して, 第四紀のいろいろな堆積物が発達している。 これらは, その堆積位置によって, 高低2つの段丘堆積物・崖錐堆積物・砂丘砂および冲積層の5つに区分することができ, 段丘堆積物は更新世,崖錐堆積物, 砂丘砂は更新 - 現世, 冲積層は現世と, それぞれ考えられる堆積物である。
この地層は, 図幅地域の基盤岩層で, 図幅の北西隅にわずかに分布しているほか, ウエンナイ川支流やイタコマナイ川などに, 断層によって窓状に小さく分布している。 この地層の主部は, 隣接の中頓別図幅に広く分布していて, 枝幸図幅でウエンナイ層としたのは, その一部にすぎない。 おもに, 粘板岩を主要構成員としているが, そのほか砂岩・輝緑凝灰岩を介在している。 問牧沢支流では, あとからのべる枝幸層の下位に, 黝黒色の堅硬な粘板岩が, N 70°W, 20°NE の走向・傾斜をしめして発達しており, 局部的に破砕されている。 また 灰白色の細粒凝灰岩・暗緑色の輝緑凝灰岩・暗灰色の砂岩などの薄層をはさんでいる。 ウエンナイ支流では, 暗緑色の輝緑凝灰岩および輝緑岩だけが露出している。 イタコマナイ川下流の露出では, キンコマナイ熔岩と大きな破砕帯で接し, 角礫状となった輝緑凝灰岩と, 板状硬質粘板岩がみられる。 以上のように, それぞれの露出が小範囲にかぎられ, また分布が連続していないため, 露出相互の上下関係や, 地質構造などは明らかでない。
この地層は, まえにのべたように 中頓別図幅地域に模式的に発達する日高累層群の一部である。
新第三紀の構成員は, まえににのべたように, 枝幸層およびペンケ層の堆積岩類と, 安山岩, 石英安山岩, 流紋岩などの熔岩および岩脈からなる火山岩類である。 火山岩類のうち, ベンケ層堆積前と考えられるものは, 互に類緑関係にあるものは多い。
この地層は, 図幅のほとんど全域にわたって分布しているが, とくに北部地域に広く発達している。 南部地域では, 火山岩類におおわれて, その下部にわずかに露出しているにちがいない。 模式地は北部の問牧川およびウェンナイ川である。 基盤のウエンナイ層をあきらかに不整合におおって発達しており, その関係は問牧川で観察できる。
問牧川流域では, 南北性の軸をもった傾斜のゆるい, 小さな背斜および向斜構造がみられる。 しかしほかの地域では, 南西または南東に 20°以下のゆるい傾斜をしめして発達し, 南部ほど上位層が露出する単純な地質構造をしめしている。
この地層は, 礫岩, 凝灰岩, 砂岩泥岩などで構成され, 亜炭の薄層を介在している。 全域についての概略の岩相層序は, 上位から次のようである。
(1) および (2) は, 問牧川流域に 10°以下の傾斜で, ゆるくうねりながら発達しており, 枝幸層の下部相をしめす部分である。 問牧川上流では, 礫岩からはじまる最下部が, ウエンナイ層の輝緑凝灰岩の上に, 直接不整合関係でのっているのが観察できる。 また, 局部的には, 礫岩をかいて上位の凝灰岩, 凝灰角礫岩が輝緑凝灰岩をおおっている場合もある。 (1) の礫岩は, 一般に拳大以下の円礫や角礫と, 凝灰質粗粒の砂岩の基質で構成されている。 礫の種類は輝緑岩, 粘板岩, チャートなど基盤岩層から由来したものである。 (1) の岩相は, 全般的に分級が不完全で水平的にも垂直的にも岩相の変化がいちじるしい。
(2) の岩相は, 砂岩, 泥岩, 凝灰岩, 礫岩などが互層状態をしめして発達しており, 一般に層理が明瞭となっている。 細粒の縞状凝灰岩・浮石質凝灰岩などを, しばしば介在しているのが特徴的である。
(3) は, ウエンナイ川流域に露出する岩相で, (2) の上位層と考えられる。 一般に塊状の産状をしめし, 層理の発達がわるい。 また礫岩や砂岩をしばしば介在している。 まれに炭化木片や植物化石片を凝灰岩や砂岩中にふくんでいる。 凝灰岩は浮石質の粗しょうなもので, しばしば安山岩礫をふくんでいる。
(4) は, 下幌別附近の段丘堆積物の下に露出し, 粗粒から細粒にわたる砂岩と, 泥岩の互層で構成されている。 一般に層理が明瞭で下幌別では, N 80°~60°E, 15°~20°SE の走向, 傾斜をしめしている。 この岩相からは, 次のような貝化石を産している。
この化石は, 乙忠部図幅の夕チカラウシナイ層から産するものと同一種である。
(5) は, (4) の対岸附近に露出し, 灰白色の凝灰岩, 凝灰質泥岩が主体で, 亜炭の薄層を介在している。
なお, この地層は, 目梨泊図幅の問牧層, 乙忠部図幅のタケカラウシナイ層などに対比され, 中新世の堆積物である。
この熔岩は, ケモマナイ川上流域にだけ分布し, 枝幸層をおおい, キンコマナイ熔岩におおわれる。 一般に肉眼的な斑晶が少なく, 黒色の石基中に微晶がみとめられる。 部分的に空隙がみられ, また, 板状の節理が発達している。 集塊岩状の部分がみられるが, 全般的にち密堅硬な岩石である。
この岩石を顕微鏡で観察すると, 次のようである。
この岩石は, 上にのべた観察から玄武岩質安山岩である。
この熔岩は, 幌別川北岸から枝幸町西方にかけて, 広く分布し, ケモマナイ川およびイタコマナイ川下流部に模式的に露出している。 まえにのべた枝幸層のいろいろな岩相をおおって, なだらかな山地を構成している。 ウエンナイ川流域では, ウエンナイ熔岩におおわれている。
この岩石は, 角閃石石英安山岩であるが, 岩相にはかなり変化がみられる。 すなわち, 暗灰色~灰白色で, 石英, 斜長石の斑晶の目立つ石英安山岩から, 灰白色~黄白色の凝灰質または角礫凝灰質岩で, 角閃石の目立つ岩相まで変化している。 とくに東部の海岸地域では角閃石流紋岩様凝灰質岩相が卓越し [ 以下の [注] 参照 ] , 西南地域では, 粗粒石英安山岩相が多い。 これらは, 一般に層状の流理面が発達している。 幌別川沿岸の露出では, N 30°~40°E, 20°~30°NW の走向・傾斜をしめす, 弱い流理面がみられる。 またケモマナイ川下流部では, N 30°~50°NE から NS 40°~50°E の, かなり明瞭な流理面が発達している。 局部的に風化がいちじるしく, 砂岩状となっている場合がある。 また鉱化されて変質し, 珪岩ようになっている部分がみられる。 しばしば蛋白石のボールや瑪瑙のレンズをふくんでいる。 とくにイタコマナイ川では瑪瑙を採掘したらしい。
この岩石を,顕微鏡で観察すると次のようである。
この熔岩は, 幌別川河口附近から南の海岸に, 段丘堆積物におおわれて分布している。 幌別川河口や川尻, ニシナイ川下流などでは, 枝幸層をおおっているようであるが, 直接の関係はあきらかでない。
岩質は, 白色~灰白色を呈し, しばしば板状節理が発達し, 流理構造の明瞭な流紋岩熔岩である。 流理面は 10°~15°の傾斜でゆるくうねっているが, 局部的に急傾斜の部分もみられる。
ウエンナイ川下流にも, この熔岩と酷似した流紋岩質岩が露出している。 これは, まえにのべた金駒内熔岩の下部相と考えられる, 角閃石石英安山岩で, 岡島熔岩と顕微鏡的に区別される。 しかし, 金駒内熔岩と岡島流紋岩の厳密な区別が困難な場合があって, 一部に金駒内熔岩と岡島熔岩とは, 同時異相的関係にあり, 互に類縁関係をもっているものと考えられる。
この岩石を顕微鏡で観察すると, 次のようになる。
この岩石は, 乙忠部図幅の北部から連続して, 幌別川の南部山地を構成している。
図幅の南東部では岡島熔岩の上位に重なっている。 また幌別川河岸では, 金駒内熔岩をおおっているようである。 全般的に安山岩質集塊岩を主体としているが, 下部には, 凝灰質砂岩の薄層をはさんでいる。 また上部では熔岩を介在している。 下部に介在している凝灰質砂岩の層理から, 全般的にほぼ水平な構造をもっているが, 南東部ではゆるく西に傾いている。
この岩石の肉眼的特徴は, いちじるしく細粒であり, 局部的に流理構造がみられることである。 この集塊岩をおおう辺毛内熔岩にくらべて, 斑晶もいちじるしく細粒である。 また多孔質の部分もみられ, 一部では珪化作用をうけている。
この岩石を顕微鏡で観察すると, 次のようである。
この熔岩は, 幌別川から北部地域で, 下位の岩層をおおい, なだらかな山体をつくって発達している。 金駒内熔岩をおおっていることはあきらかであるが, 徳志別集塊岩との上下関係は不明である。 したがって, ペンケ層との関係もあきらかでない。 ただ, やや変質していることから, 辺毛内熔岩よりは古いことはあきらかである。 したがって, ペンケ層と同時期か, やや後期のものと考えられる [ 以下の [注] 参照 ] 。
岩質は, 一般には暗灰色または漆黒色を呈し, 斜長石の斑晶のみとめられる, 普通輝石紫蘇輝石玻璃質安山岩である。 しかし局部的に岩相が変化していて, 普通の両輝石安山岩質の部分もみられる。 ことに問牧川下流では, 模式的な両輝石安山岩となっている。 量的には玻璃質安山岩にとんでいる。
一般に流理構造が発達しているが, それぞれの地域で, 流理面の走向・傾斜がことなり, 一定でない。
この岩石を鏡下で観察すると, 次のようである。
この地層の分布の主体は, 隣接する乙忠部, 音威子府図幅 4) 地域内にあって, この図幅では, その一部が西南隅にわずかにみられるだけである。 下位層との関係は図幅内でみられないが, 徳志別集塊岩をおおっていることはあきらかである。
おもに細粒の礫岩および粗粒砂岩で構成され, 凝灰岩を介在している。 一般に粗しようで軟質である。
隣接図幅の, この地層中からは Macoma tokyoensis (MAK.) を特徴的に産出している。 産出化石や下位層との関係などから, 鮮新世前半の地層と考えられている。
この熔岩は, 図幅南部山地の山頂部を形成しているもので, 乙忠部図幅から連続して分布している。 まえにのべた徳志別集塊岩を直接おおって発達している。 乙忠部図幅地域では, いちじるしく珪化作用をうけた岩相がみられる。 しかしこの図幅地域では, 黒色~暗灰色を呈する粗ぼうな紫蘇輝石・普通輝石安山岩で, 斜長石の斑晶が徳志別集塊岩より, いちじるしく大きいのが特徴である。 風化すると一般に灰白色となっている。
この岩石を顕微鏡下で観察すると, 次のようである。
この図幅の火山岩地域には, 岩脈様の産状を呈する火山岩がいくつかみとめられる。 それらは, 次の3つである。
これらは, いずれも中新世後半から鮮新世にわたるものと考えられる。 また, まえにのべた熔岩類と類似した岩相をしめしているものもあって, 熔岩類と類縁関係にあることがうかがえる。
図幅北端の落切西方に, NE~EW 性の岩脈が, 枝幸層を貫ぬいて, 突出した山体を形成している。 この岩脈を構成する岩石は, 黒色で流理の鮮明な, 節理のよく発達した流紋岩である。
この岩石を鏡下で観察すると, 次のようである。
この岩石は, 枝幸町からウスタイベ北方の海岸に, 岩脈状の産状をしめして分布している。 黒色または暗褐色のガラス質安山岩であるが, 岩相の変化がはげしく, 斜長石斑状安山岩から真珠岩質安山岩にわたる岩相がみとめられる。 ウスタイベ北方の海岸では, まえにのべた金駒内熔岩を貫ぬいているのが観察できる。 一般に流理構造が発達している。 ことに枝幸町市街地の海岸では, 明瞭な流理面がみられ, いちじるしく褶曲している。
この岩石を鏡下で観察すると, 次のようになる。
この岩石は, 幌別川河口~ツシマコタン間の海岸に露出しているもので, 節理のよく発達した石英安山岩である。 NS 性の走向と直立性の流理構造がみとめられる。 この岩石は, 黒色のガラス中に, 斜長石斑晶が多数散在している。 また, ブロック状に灰色非ガラス質安山岩 [ 以下の [注] 参照 ] をとりこんでいる。
この岩石を鏡下で観察すると, 次のようである。
図幅地域に発達する第四紀層は, 次のように区分される。
図幅地域の段丘面は, まえにのべたように高低2段に区分できるが, いずれも段丘面が模式的に発達している乙忠部図幅地域の, 第2段丘中の面に対比される。 したがって, 第1段丘・第2段丘堆積物はともに, 乙忠部図幅地域の第2段丘堆積物の一部に対応することになる。
この段丘堆積物は, 海岸線に沿って, 模式的に発達する第1段丘面(標高 20~50 m)を構成している。 南部海岸地域にもっとも模式的に発達している。
この堆積物は, おもに礫・砂・粘土などからできている。 平均 5~6 m の厚さをしめしているが, かならずしも一定していない。 一般に, 下部は礫層または礫交り砂層からなり, 上部は, 火山灰質粘土層となっている。 局部的には, 下部の砂礫と, 上部の粘土層との間に, 泥炭層をはさんでいることがある。
砂礫層は, 人頭大以下の円礫や亜角礫と, 粗粒の砂で構成されている。 礫は, 粘板岩・チャート・砂岩・緑色岩など先白亜紀層のもののほか, 安山岩・流紋岩などの第三紀火山岩もみとめられる。 この砂礫層の厚さは, おおよそ 1 m~2.5 m ていどである。
泥炭層は, 問牧川下流では, 35~50 cm の厚さのものがみとめられ, 新鮮な木片をふくんでいる。
火山灰質粘土層は, 灰白色の火山灰起源と考えられる粘土と, 渋黄褐色のローム質粘土などである。 一般に, この段丘堆積物の最上部には, ローム質粘土(いわゆる重粘土)が発達している。 火山灰質粘土層の厚さは, もっとも厚いところで 3.5 m 以上となっているが, 一般には 2 m 前後である。
この堆積物は, 標高 5 m~15 m の第2段丘面をつくっている。 第1段丘堆積物と同様に, 南部海岸地域に模式的に発達している。 そのほか, 枝幸町市街をのせる面, ウスタイベ附近の面, 枝幸市街南方の面などを構成している。
砂と礫とで構成されているが, 局部的には, 砂層だけ, あるいは礫層だけで構成されている地域もある。 また, 上部に粘土層の発達している場合もみとめられる。
厚さはおよそ 1.5~2 m ていどである。 しかし枝幸町市街西方では, 偽層の発達した, 厚さ 3 m 以上におよぶ砂層がみとめられる。
図幅地域の火山岩で構成されている山体の山麓には, 厚い崖錐堆積物が発達している。 とくに, 南部の徳志別集塊岩および辺毛内熔岩で構成される山体のまわりに, 模式的に発達している。
構成物は, ほとんど背後の山地から, 崩かい堆積した角礫や大塊と, 粘土などである。 礫の多いところや, 粘土の多いところなどがまちまちである。 また礫の大きさ形状もいろいろで, 径 1 m 以上にもおよぶ岩塊が散在している場合もある。
この堆積物は, 幌別川河口の北側に, 海岸線と平行して発達している砂丘を構成する砂層である。
ほとんど, 細粒から粗粒にわたる砂で構成され, まれに指頭大以下の円礫をふくんでいることもある。
砂丘と, まえにのべた第2段丘と接する部分では, 第2段丘堆積物の礫層をおおって, 砂丘砂が発達している。
図幅地域の冲積層は, 幌別川下流域の冲積氾濫原を構成するものが代表的である。 そのほか, 河川流域の河床礫や氾濫原堆積物および海岸の海浜堆積物などもふくまれる。
礫・砂・粘土および泥炭などで構成されている。 幌別川下流域の低湿地帯では, とくに泥炭層の発達が良好である。
この地域の海岸で, 幌別川河口から砂丘の連続している地帯では, 狭い砂浜が, 形成されているが, そのほかの地域では, ほとんど礫の多い岩石海岸となっている。
この図幅地域は, 新第三紀以降の地史で代表され, しかも, それは比較的単純な造盆地運動と, かなりはげしい火山活動の地史とみることができる。
日高累層群の堆積後, いちじるしい造構運動とはげしい削剥が続けられた。 しかし, 中新世後期になって, はじめてオホーツク海沿岸地域が堆積盆地へと遷移し, この図幅地域も全域が, その海域にはいった。 その初期には, 火山活動がかなり活発で, しばしば細粒の火山噴出物を堆積し, ほとんど生物の生棲できないような環境の海域であったようである。 しかし後期には, 比較的静穏な環境にうつり, 砂や泥の堆積が続けられ生物も生棲するようになった。 その後には, 堆積と埋積によって, 次第に瀕海となり, 亜炭が堆積するような条件が発生している。 そのころになると, ふたたび火山活動が活溌となって, 火山噴出物を交えた堆積がおこなわれている。 このような状態の後に, 爆発的な火山活動によって, 安山岩質熔岩・流紋岩質熔岩および安山岩質集塊岩などの噴出物が, ほとんど全域にわたって, ことに南部地域を広くおおった。 しかし, しばしば活動の休止期があって, 砂を主体とする堆積がおこなわれている。
乙忠部図幅や音威子図幅地域では, このようなはげしい火山活動の後に, 志美宇丹層や本幌別居およびペンケ層などの堆積盆の形成がおこなわれている。 しかし, 枝幸図幅地域では, この時期の堆積盆の形成はおこなわれず, なお活溌な火山活動地域であったようである。 ただ, ペンケ層の堆積盆は図幅の南西端地域まで, ひろがっていたことがあきらかである。 最終的な火山活動の産物として, 鮮新世後期に辺毛内熔岩が噴出している。
第三紀以降の削剥期には, 褶曲をともなう比較的緩慢な造構運動があって, 新第三紀の岩層をゆるやかに褶曲させている。 その傾向は, 新第三紀層が南により上位層が発達していることから, 南部で沈降する傾向にあったことがうかがえる。 しかし, このような傾向は, 段丘の形成期には, 逆の傾向としてあらわれているようである。 すなわち, 段丘地形は, 北部より南部で発達良好で段化が進んでいることなどから, 南部で上昇量の多かったものと堆察される。
この図幅地域の段丘は, 100 m を越す高位のものは, 面の形成も不明瞭であり, しかも段丘面とみられるものにも堆積物は, まったくみられない。 むしろ 50 m 以下の低い段丘(いわゆる低位段丘)だけが, 面の形成も明瞭で堆積物をのせていることが特徴的である。 このことは, オホーツク海沿岸地域の, 高位段丘形成期の基盤の上昇・沈降が特徴的なものであったことがうかがえる。
この図幅地域には, いままで開発された鉱山はない。 鉱産資源としては, 瑪瑙および亜炭があるほか, 小規模な採石がおこなわれている。 なお, 観光資源として, 海岸の景観をあげることができる。
金駒内熔岩の中には, まえにのべたように, 瑪瑙がしばしばレンズ状に介在している。 しかし, 観察できたものは, いずれも小さなレンズで, 採掘稼行のできるものではない。 ただ, イタコマイナ川下流域には, 瑪瑙塊の転石が多い。 ここでは, かって採掘されたといわれているが, 調査時には, 採掘跡も原産地も不明であった。
転石の瑪瑙の質は, 淡赤褐色のものが多く, ほとんどが非結晶質であるが, 縞模様が発達している。
枝幸層の中部および上部には, しばしば亜炭の薄層レンズや炭質物をふくんでいる。 これらは, まったく稼行の対象とはならない。 幌別川南岸地域には, 厚さ 50 cm 前後の亜炭層がみとめられるが, これでも鉱床として取扱えるほどのものではない。
図幅地域には, 火山岩が豊富に分布しているため, 割石などに利用できるものが多い。 なかでも, ウスタイベ安山岩・ウエンナイ熔岩などがもっとも採石に適している。
現在, 採石がおこなわれているのは, ウスタイベ海岸で, ここでは, 道路敷石用として採石されている。
またウエンナイ川下流の金駒内熔岩も, かつて採石されたようである。
このほか, 比較的ち密堅硬な岩相をしめす, 問牧川下流に発達する, ウエンナイ熔岩も利用度が高い。
ウスタイベを中心とした海岸線には, ウスタイベ安山岩とした, 節理と流理面の発達した岩石が露出している。 ことに, ウスタイベの岬附近では, 千畳岩といわれており, 特異な岩石海岸の景観をつくっている。 現在は, 枝幸町の公園となっていて, 図幅地域では唯一の観光資源である。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Abashiri - 2
By Hiroshi Osanai, Katsutoshi Mitani and Masahide Ōta (Geological Survey of Hokkaidō)
The Esashi sheet occupies an area between lat. 44°50' - 45°0' N and long. 142°30' - 142°50' E. Being situated in the northern part of Hokkaidō, the map area faces the Sea of Okhotsk. Esashi-machi is the principal town of the area and is a center of fisheries along the Okhotsk coast.
The topography can be roughly divided into the following three morphologic provinces :
The geologic system constituting this map area is as follow table [ Table 1 ] :
The Pre-Cretaceous system is represented by the Uennai formation. This formation, constituting the basement of the map area, is throught to correspond to a part of the Hidaka super-group. It consists largely of schalstein and clay slate, and is intercalated with sandstone and chert.
The Neogene system comprises sedimentary facies, such as the Esashi formation and the Penke formation, and various kinds of volcanic rocks overlying the former.
The Esashi formation is widely distributed throughout the map area and unconformably covers the basal Uennai formation. It consists chiefly of conglomerate, sandstone, tuff and mudstone. The lower part markedly varies in lithology and abounds in conglomerate, sandstone and tuff. The upper part, consisting largely of sandstone and mudstone, is well stratified, intercalated with lignite seams. The upper part yields the following shell fossils which indicate the age of Upper Miocene.
The volcanic rocks, which are developed over the Esashi formation, are classified by their distribution area, lithologic differences and the stratigraphic sequence.
The lowermost volcanic rock that rests directly upon the Esashi formation is the Kemomanai lava. This lava, poorly exposed in the middle reaches of the Kemomanai River, is dark bluish-gray, compact and hard olivine bearing hypersthene augite basaltic andesite, having platy Joints.
Evidently covering the Kemonanai lava, the Kinkomanai lava is extensively distributed in the district north of the Horobetsu River. This lava is light brownish-gray hornblende dacite, generally having a flow structure. Locally the rock is much weathered, and has partly altered due to impregnation. It often contains globular opal and lenticular agate.
The rock named Okajima lava is roughly contemporaneous with the Kinkomanai lava and is supposedly a heteropic facies of the latter. Its distribution is limited to a small area centering on Okajima on the southern coast. The rock is light brownish-gray biotite liparite containing quartz and plagioclase phenocrysts accompanied by a small quantity of biotite. It is characterized by a more conspicuous flow structure than that of the Kemomanai lava.
In the district south of the Horobetsu River is found the Tokushibetsu agglomerate which is widely distributed probably overlying the Okajima lava. The agglomerate is composed of augite hypersthene andesite, locally showing a facies of lava. It is rarely intercalated with thin beds of tuff and tuff-breccia.
The Uennai lava covers the above-mentioned Esashi formation, the Kemomanai lava and the Kinkomanai lava, and forms mountains of gentle slopes in the district north of the Horobetsu River. This lava is hypersthene augite glassy andesite, locally varying in lithologic facies. In the lower reaches of the Toimaki River to the north, this lava is hard and compact, without showing a distinct flow structure, but in other districts the rock becomes coarse-grained. easy to be weathered, and its flow structure is more conspicuous.
These volcanic rocks are considered to have been effused during the period ranging from Late Miocene to Early Pliocene.
Covering the Tokushibetsu agglomerate, the Penke formation is developed in the southwestern corner of the map area. The formation, consisting largeIy of sandstone, is extensively distributed in the area of the adjacent sheet map where the formation is known to yield fossils which indicate the age of Pliocene.
Volcanic rocks presumably younger than the Penke formation is the Penkenai lava.
The Penkenai lava, covering the Tokushibetsu agglomerate to the south. It is an augite hypersthene andesite lava.
In the districts of Kawajiri, Usutaibe and Ochikiri, dykes are known to occur, as are respectively called the Kawajiri dacite, the Usutaibe andesite and the Ochikiri liparite. These dykes are all intruding the Esashi formation and are considered to be genetically related to the aforesaid Kinkomanai, Okajima and Uennai lavas.
The Quaternary system can be divided into the terrace deposits (the first and second terrace deposits) which constitute the terrace planes along the coast and rivers, the talus deposits at the foot of volcanic rock bodies, the sand gravel beds forming sand dunes, and the alluvial deposits in the flood plains and on the coast, These Quaternary deposits are unconsolidated, being composed chiefly of sand, gravel and clay. The first terrace deposits in the lower reaches of the Toimaki River are intercalated with peat.
Mineral resources of the map area are only agate and stone for civil engineering.
Agate is found in the Kinkomanai lava, especially abundant in the boulders in the Itakomanai-zawa, tributary of the Horobetsu River, where exploitation of agate was once carried out.
With regard to stone for civil engineering stone, the Usutaibe andesite and the Kinkomanai lava are quarried merely as ballast, and no resources of a large scale are known.
The district where the Usutaibe andesite is distributed presents a unique scenery of rocky coast, on account of the rock's platy and columnar joints and the flow structure, and serves as the sole spot for sightseeing in the map area.
昭和 37 年 3 月 10 日 印刷 昭和 37 年 3 月 15 日 発行 著作権所有 北海道開発庁