三宅島ヘリ観察報告: 2004.07.27

観察・報告:宮城磯治 (産総研・深部地質環境研究センター)

同乗者:宮下さん&菊地さん(気象庁)、森さん(東大)

ヘリ:警視庁ヘリ・おおとり5号


概要:

天候は晴れ。三宅島付近の上空約300mの風速は12ノット、風向は80度。
三宅島山頂部は雲底高度600m程度の雲に覆われていたが、雲の切れ目から
火孔および陥没カルデラの一部を目視できた。

噴煙について:
総量は2004年1月14日(観測=宮城)や4月1日(観測=川辺)と大差ない。
白色噴煙の到達高度は、島雲のため不明だが、島雲の高度(約1500m)よりは低い。
青白いガスが島の風下(阿古〜新澪池にかけて)山麓を流れ下り、その量は以前
と大差ない。COSPEC観測時にはやや強いh2S臭を感じた。

カルデラ内について:
断片的な観察であったが、カルデラ壁と火孔は、最近の観察と大きな変化はない。
4月1日と比較すると、発煙量はカルデラの南リムに近い大穴のほうが、
より内側の穴より多く見えるが、これは気象条件の違いと思われる。
カルデラ底は乾いており、水溜りは一つも確認できなかった。

山麓部について:
島の東側(風下)における植生の回復は、谷部を主体としており、
尾根部では地面や樹々が茶色である。大路池はやや濁った緑色を呈していた。


もくじ: | 三宅島まで | 三宅島(山麓) | 火山ガス観測 | 新島 | 陥没カルデラ内 | 池の様子 | 帰投 |


画像;スライドショーは→こちら

三宅島まで

:午前8時の東京ヘリポート(集合時間は9時)。東側の遊歩道より。 観測当日の天候は、朝のうち曇り、のち晴れ。


左:お世話になったヘリ、おおとり5号(ベル412)。
右:火山ガス観測機材の設置。

:午前9時43分、東京ヘリポートを離陸。離陸直後、都内の視程はあまり良くない。

:左:伊豆大島(雲に覆われていない)。
中:新島(雲に覆われていない)。
右:神津島(雲に覆われている)。
伊豆大島→新島→神津島と、南にゆくほど島雲が多くなる。

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三宅島(山麓)

:神津島よりも南にある三宅島は、やはり、島雲にすっぽり覆われていた。

これまでの観察では、卓越風の風下にあって火山ガスの直撃を受けていた坪田
(三宅島空港)〜三池にかけては、植生の回復の遅ればかりが目立っていた。
しかし今回の観察では、山麓部の窪地や谷地に鮮かな緑色が増加しているのが
印象的であった。但し山頂〜山腹部は茶色のままであり、浸食が進行している。

三宅島の山麓写真を反時計回りにならべる↓(実際の撮影順はこの逆)。

伊豆〜伊ヶ谷。

伊ヶ谷〜阿古。

阿古〜村営牧場。

村営牧場〜坪田。

坪田。

坪田(三宅島空港)〜三池。

三池〜赤場暁(火の山峠)。

島下〜伊豆(大久保浜)。

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火山ガス観測

:COSPEC(※1)とDOAS(※2)観測を同時に実行。
山麓を流れ下る、青白い火山ガス。
※1:コスペック;Correlation SPECtrometer;紫外線相関スペクトロメター; SO2の紫外領域で光吸収を利用して、濃度積を測定する。
※2:ドアス;Differential Optical Absorption Spectroscopy;コスペックと ほぼ同様の機能が、より小型軽量になっている。

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新島

:新島空港に着陸。
ヘリは給油、人間は昼食。

:新島空港を離陸。
午前中に比べて、神津島(右写真の左の奥)にかかる島雲がやや少なくなった。

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陥没カルデラ内

:噴煙と島雲を慎重に避けながら、雲の切れ目を探す。

:カルデラ底。水気がないように見える。

:カルデラ内壁。

:主火口。カルデラ縁に近い、大穴からの煙量が多目に見えるが、島雲が巻き込んだものと思われる。

:火口観測終了。島雲がすっぽり覆っていた。よく見えたものだと思う。

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池の様子


左:大路池(午前中に撮影)。緑色に濁っている。
中:伊豆の貯水池(午後撮影)。やや澄んだ青緑色である。
右:洗足池(東京都大田区;同日午後撮影)。濃い緑色である。

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帰投

観測終了は13時55分。

:上陸(左)。横浜上空(右)

:東京ヘリポートに到着。

ヘリクルーの皆様、どうもありがとうございました。


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