GSJニュースレター No.9  2005.6
第2回国際石油会議参加報告  大久保 泰邦 (地質調査情報センター)
 第2回国際石油会議は,2005年5月16〜19日,エジプトのカイロで開催された.会議の主催者はエジプト石油省であり,協賛が米国物理探査学会(SEG),エジプト地球物理学会(EGS),エジプト石油探査学会(EPEX),エジプト石油協会(EPA)である.第1回は2002年,カイロで行われている.

 初日は,開会式,展示会のオープニング,またSEGの75周年,EGSとEPEXが25周年記念となり,その祝賀もあわせて行われた.開会式では,エジプト石油大臣をはじめ,SEG等の学会会長が挨拶を行った.開会式の参加者は1000名に達すると思われる.日本からの出席は,牛島九州大学教授,帝国石油の船山正昭氏(カイロ駐在),荒川浩樹氏,山本 亮氏,アラビア石油の山口 薫氏(カイロ駐在)と筆者の6名であった.

 この会議は開会式の他に2日目以降の技術講演,ショートコース,展示会などから構成されている.技術講演の主な内容は,炭化水素システムやアフリカのいくつかのデルタにおける地下構造などの石油地質,陸海境界での地震探査や地震データ処理などの物理探査,4次元モニタリングや貯留層の定量化・モデル化などの貯留層工学,掘削,生産管理など,石油に関する上流から下流までの幅広い技術に及んでいる.

 ショートコースでは,Rodney Calvert博士(Shell)が「4次元貯留層モニタリングと定量化の手法」という演題で講演を行った.Calvert博士のこの講演は,2005年8月12日に米国物理探査学会,欧州物理探査学会と日本の物理探査学会が主催して産総研臨海副都心センターで行われるショートコースでも予定されている.

 将来のエネルギーを考えた場合,石油は有限であり,石油代替エネルギーの開発を考える必要がある.この会合の参加者はこのことは分かっているようだ.エネルギーの重要と供給のギャップを埋めるためには技術が重要な役割を占めるとの議論も交わされた.

エジプト事情

 帝国石油はエジプト,リビヤの北アフリカでの鉱区獲得などの活動を数年前から行っている.石油ピークに関する研究連盟(ASPO)の今年の報告では,エジプトの石油生産のピークはすでに訪れ,生産量は年々減少しているとのことである.しかし,近年天然ガスや大水深石油が発見されるという明るいニュースもある.

 エジプトはナイル川沿いを除きほとんどが砂漠であり,主な産業は農業,石油開発と観光である.GDPは一人当たり1530ドル(2001年世銀による)と低く,さらに一部の富裕層がそのほとんどを牛耳るため,人口7000万人の大部分は貧困層とのことである.人口はますます増加している一方,産業が少ないため,失業者が増加しており,貧富差はさらに広がることが予想される.カイロ市があるナイル川東側は緑が多く,巨大な町となっているのと比較し,クフ王のピラミッドやスフィンクスなどの遺跡群があるナイル川西側は砂漠であり,住居は少ない.エジプト政府は人口の密集の緩和策として,遺跡群の周辺に水路を建設し,街づくりを推進している.

 日本との関係を考えた場合,石油探査,地下水調査,遺跡調査,地雷探査,砂漠化などの環境調査においての技術協力であろう.帝国石油などの石油会社がエジプトで石油探査事業を展開している他,九州大学では地雷探査について技術協力を行っている.2004年に地質調査情報センターに勤務していたSalem博士は九州大学で学位を取得し,現在エジプト原子力マテリアル局に所属している.彼の専門は磁気探査であり,この手法を利用して,水雷探査,石油探査などに応用している.地下水調査については,砂漠化を含めて,人工衛星データ等を用いた研究協力を行える分野と考える.

クフ王のピラミッドやスフィンクスなどの遺跡群があるナイル川西側は砂漠であり,住民は少ない.この裏側には最近人工的に作られた都市がある.
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GSJニュースレター No.9 2005.6
(独)産業技術総合研究所地質調査総合センター
GeologicalSurvey of Japan,AIST