3.3 噴出物の記載



1.新岳・古岳ステージ
1.1 新岳火山噴出物

新岳ラハール堆積物 (f)
命名:下司・小林(2007)口永良部島火山地質図.
分布:新岳西側山腹から向江浜にかけての渓流沿い.
模式地:向江浜.
最大層厚:10m以下.
形成年代:約1,000年前以降現世.
記載:新岳溶岩を覆う現世の河川堆積物.砂礫層からなる.1935年に向江浜集落が被災したラハールの堆積物などを含む.

新岳火砕丘堆積物 (Spc)
命名:下司・小林(2006).
分布:新岳山頂火口周辺の表層部.
模式地:新岳山頂火口壁上部.
最大層厚:約30m.
推定体積:約5×106m3
形成年代:約1,000年前以降.
記載:新岳溶岩噴出後現在までに新岳火口で繰返し発生したブルカノ式噴火〜水蒸気噴火に伴い火口周辺に形成された,成層した非溶結の火山角礫層.構成岩片の種類の違いから複数のユニットが認識できる.新岳火口の東側縁で最も厚く,その層厚は約30mである.

新岳火砕流堆積物 (Spf)
命名:下司・小林(2006).
分布:新岳東側及び西側中腹.
模式地:新岳西側山腹.
最大層厚:約20m.
推定体積:<5×106m3
形成年代:約1,000年前以降.
記載:新岳溶岩噴出後現在までに新岳火口で発生した爆発的なブルカノ式噴火に伴う小規模な火砕流の堆積物.非溶結の火山角礫からなり、複数のフローユニットから構成される.

新岳溶岩 (Sl)
命名:味喜ほか(2002).
分布:新岳山頂から西側山腹一帯,海岸まで.
模式地:ニシマザキ海岸.
最大層厚:約100m.
推定体積:2.4×10-1km3
形成年代:9世紀あるいは11世紀(味喜ほか,2002).
記載:新岳山頂部から流出した輝石安山岩質のブロック溶岩.地形的な特徴から複数のフローユニットが認識できる.ここでは先に流出した下部新岳溶岩と,それを覆う上部新岳溶岩の二つに区分する.味喜ほか(2002)の新岳上位溶岩流・中位溶岩流が上部新岳溶岩,新岳下部溶岩流が下部新岳溶岩に相当する.

1.2 新期古岳火山噴出物

七釜火砕流堆積物 (Fpn)
命名:下司・小林(2006).
分布:古岳火口から東側山腹の七釜付近.
模式地:一周道路七釜2号橋付近.
最大層厚:約1m.
推定体積:<2×106m3
形成年代:1725-1813年(cal AD)(小林ほか(2002))
記載:古岳火口から東斜面に流下したブロックアンドアッシュフロー堆積物.火砕流堆積物に含まれる岩片は非変質で発泡の悪い緻密な安山岩からなり,放射状冷却節理が発達する.古岳東側山腹では七釜火砕流堆積物の層厚は約1 mで,細粒物に乏しい緻密な岩片からなる基質の中に直径最大4 mの安山岩塊が散在している.七釜付近では最大厚さ約70 cmのブロックアンドアッシュフロー堆積物として分布している. ブロックアンドアッシュフロー堆積物の周囲200〜300mの範囲には,細礫および火山砂からなる火砕サージ堆積物が広がっている.

新期古岳火砕流堆積物 (Fpf)
命名:下司・小林(2006).
分布:古岳南〜東側山腹.
模式地:南側山腹の一周道路沿い.
最大層厚:10m以上.
推定体積:約1×107m3
形成年代:約3,000年前以降.
記載:薄い風化土壌を挟む複数の類似したブロックアンドアッシュフロー堆積物からなる.いずれも淘汰の悪い火山角礫層からなり,含まれる火山角礫は発泡の悪い緻密な岩片がほとんどで,放射状冷却節理が発達する.基質は細粒物に乏しい火山砂からなり,しばしば炭化植物片を多量に含んでいる. 1060〜910 cal BP,3220〜2950 cal BPの年代が報告されている(下司・小林、2006).

新期古岳火砕丘堆積物 (Fpc1,Fpc2)
命名:下司・小林(2006).
分布:古岳山頂周辺.
模式地:古岳648.9 m三角点東側の古岳火口壁.
最大層厚:約80m以上.
推定体積:約1×107m3
形成年代:約3,000年前以降.
記載:新期古岳山頂部に分布する成層した火砕物堆積物.顕著な成層構造が発達する.淘汰の悪い火山角礫からなり,成層した砂礫質の薄層を頻繁に挟む.角礫の直径は最大50 cm程度で,明瞭な放射状冷却節理が発達するものが多数観察される.平床溶岩を挟む.平床溶岩より下位を新期古岳火砕丘堆積物1(Fpc1),上位を新期古岳火砕丘堆積物2(Fpc2)と呼ぶ.

平床溶岩 (FH)
命名:味喜ほか(2002).
分布:古岳山頂から南山腹,平床鼻にかけて.
模式地:平床鼻.
最大層厚:約30m
推定体積:5×10-2km3
形成年代:直上を1060〜910cal BPの火砕流に覆われる.
記載:古岳から南山腹に流下し海岸まで到達する新期古岳で最も新しい溶岩流. 輝石安山岩質のブロック溶岩からなる.中腹部では顕著な溶岩堤防が発達する.山頂部では,古岳山頂部の633mピーク付近の火口壁に,新期古岳火砕丘堆積物に挟まれた溶岩流の断面が露出しているが,その位置および岩相から平床溶岩の上流部と考えられる.

南七釜溶岩 (FN)
命名:下司・小林(2006).
分布:古岳山頂から南東山腹,七釜付近まで.
模式地:七釜南方.
最大層厚:約40m
推定体積:5×10-2km3
形成年代:数1000年前.詳細不明.
記載:古岳から南東に流下した溶岩流.表面を古岳火砕流堆積物に覆われる.輝石安山岩質のブロック溶岩からなる.地形的関係から平床溶岩よりも古いと推定される.中腹部では顕著な溶岩堤防が発達する.

新期古岳火山溶岩(Fl)
命名:下司・小林(2006).
分布:古岳南西〜東山腹.
模式地:古岳南西山腹一周道路沿い.
最大層厚:500m以上.
推定体積:5×10-2km3
形成年代:約11,000年前以降3,000年前ごろまで.
記載:新期古岳の火山体の主要部を構成する輝石安山岩溶岩流群.表面を古岳火砕流堆積物および平床溶岩・南七釜溶岩に覆われる.


1.3 鉢窪火山噴出物

鉢窪火山噴出物(Hu,Hl)
命名:下司・小林(2007)火山地質図.
分布:鉢窪集辺.
模式地:鉢窪南側海岸の海食崖.
最大層厚:400m以上.
推定体積:0.1km3
形成年代:約7,300年前以降3,000年前ごろまで.
記載:鉢窪を構成する溶岩流及び火砕岩.山体主要部を構成する火砕岩を下部鉢窪火山噴出物(Hl),表層を覆う溶岩流を主体とする噴出物を上部鉢窪火山噴出物(Hu) と呼ぶ.表層部を新期古岳溶岩に覆われる.

1.4 新岳および新期古岳噴出物
古岳・新岳−永迫テフラ(地質図には記載されていない)
命名:下司・小林(2006).
分布:新岳・古岳を中心とする,口永良部島の中部〜東部一帯.
模式地:湯向南方の牧場周辺.
最大層厚:3m以上.
推定体積:7.7×107m3
形成年代:約11,000年前以降現代まで.
記載:古岳−メガ埼テフラの上位に堆積する,K-Ahを挟んで緻密な安山岩質の角礫を含む褐色〜黒色の砂礫質火山灰層.これらの降下テフラは,古岳−メガ埼降下スコリアの上位にあること,およびその層厚が古岳・新岳山頂部ほど厚いことからから,新期古岳火山および新岳火山の成長に伴って噴出・降下したテフラであると考えられる.この火山灰層中には緻密な安山岩角礫や変質岩片が集中する特徴的なテフラ層が複数認められる.
永迫テフラ群に含まれるこれらのテフラはその岩相から主に2種類に分けられる.ひとつは非変質で比較的均質な岩相の安山岩質火山礫および火山砂からなるテフラで,もうひとつはさまざまな程度に熱水変質を被った角礫を含み粘土質の細粒部を持つテフラである.非変質岩片を主体とするテフラを構成する岩片はほとんど発泡していない緻密な青灰色〜灰白色安山岩からなる.これらの岩片には熱水変質の痕跡は見られず,新鮮な石基ガラスを保持している.非変質岩片は鋭利な破断面を持ち,また放射状冷却節理が特徴的に発達する.またしばしばパン皮状の表面構造を持つ火山弾が含まれる.細粒部は角張った外形のガラス質粒子と遊離した結晶片からなり,いずれもほとんど熱水変質の影響は見られない.またガラス質粒子は少量の気泡を含むが,軽石状の発泡組織を持つ粒子はごく稀である.このような非変質岩片を主体とするテフラ層中にはしばしば多量の炭化植物片が含まれる.一方,熱水変質岩片を主体とするテフラの岩片はさまざまな程度に熱水変質を受け褐色〜白色岩化した安山岩からなる.また細粒部は粘土質であり,黄鉄鉱の微粒子が含まれる.


1.5 古期古岳噴出物

古岳−メガ埼テフラ群
約13,000〜11,000 cal BPごろに古岳で発生した玄武岩質安山岩マグマの準プリニー式噴火によって噴出したテフラ.古岳アグルチネート,古岳スコリア質火砕流堆積物,メガ埼降下スコリア層からなる(下司・小林(2006)).


古岳−メガ埼降下スコリア層 (Fsfa)
命名:下司・小林(2006).
分布:古岳から口永良部島東部一帯.
模式地:メガ埼灯台付近.
最大層厚:10m.
推定体積:2.2〜3.7×10-1km3
形成年代:約13,000〜11,000 cal BP
記載:古岳を中心として口永良部島の中心部から東部にかけて分布する玄武岩質安山岩降下スコリア層で,島内における層厚分布からその分布主軸は古岳山頂付近から東方の海上に伸びると推定される.古岳−メガ埼降下スコリアは主に黒色の玄武岩質安山岩スコリアからなり,風化すると鮮やかな赤褐色を呈する.降下スコリア層は少なくとも2層認められ,下位からメガ埼降下スコリア1および2と呼ぶ.二つの降下スコリア層の間にはスコリア混じり褐色火山灰が5〜10 cm程度存在するが,多くの地点ではメガ埼スコリア1および2が直接重なっている.メガ埼スコリア1および2はそれぞれ,基底部の暗青色〜暗灰色の成層した火山砂礫層とそれを覆う黒色のスコリア層からなる.火山砂礫層は発泡の悪い黒色スコリア片に富み,粒径は古岳火口から東に約2.5 km離れた七釜東方で2〜4 mmである.降下スコリア層は淘汰の良い角張ったスコリアから構成される.スコリア粒子は比較的発泡が良く,その平均粒径は七釜東方で3〜5 cmである.メガ埼降下スコリア1の下部には,直径20 cmを超える大型のスコリア塊や石質岩片が集中している.また上部には,黒色スコリアに混じって灰白色の軽石片が散在する.これに対しメガ埼降下スコリア2は黒色のスコリアのみからなり,スコリア径は同一地点のメガ埼スコリア1に比べてやや小さい.

古岳アグルチネート (OFa)
命名:下司・小林(2006).
分布:古岳・新岳間の657mピーク周辺.
模式地:657mピーク南側の崩壊壁.
最大層厚:200m
推定体積:6×10-1km3
形成年代:約13,000〜11,000cal BP
記載:下司・小林(2006)の古岳溶結火砕岩.口永良部島の最高点のピーク(標高657 m)を構成する厚さ200 m以上の玄武岩質安山岩アグルチネートからなる.657 mピークの南側に開いた崩壊壁に露出する古岳アグルチネートは強溶結部と弱溶結部が互層している.強溶結部は全体に緻密で粗い柱状節理が発達し,酸化度や気泡の分布の違いを反映したユータキシティック構造が顕著に見られる.強溶結部の一部は二次流動によって先端部が舌状に膨らんだ構造を示している.強溶結部と弱溶結部の境界は漸移的であり,弱溶結部では直径1〜2 mの火山弾が識別できる.

古岳スコリア質火砕流堆積物 (OFs)
命名:下司・小林(2006).
分布:七釜周辺.
模式地:七釜周辺.
最大層厚:約20m
推定体積: 5×10-2km3より大きい.
形成年代:約13,000〜11,000cal BP
記載:古岳スコリア質火砕流の本質物質はやや発泡の悪い黒色の玄武岩質安山岩質スコリアからなる.スコリアの最大直径は50 cmで,ほとんど円磨していない.パン皮状の表面構造を持つスコリア質ブロックが含まれる.火砕流堆積物の基質はおもにスコリア質の火山灰からなる.構成粒子の粒度の違いや堆積構造から判断すると古岳スコリア質火砕流堆積物は複数のフローユニットから構成されている.


2.高堂森‐野池ステージ
2.1 野池火山噴出物

野池火山上の小規模水蒸気噴火噴出物 (Np)
命名:下司・小林(2007)火山地質図.
分布:野池東方の小火口群の周辺.
模式地:野池東方の小火口群の周辺.
最大層厚:約10m
推定体積: 1×105m3より小さい.
形成年代:約13,000〜11,000cal BPより新しい.
記載:野池火山の山腹に分布する小規模な火口群の周辺に局所的に分布する,熱水変質した火山岩片や粘土からなる噴出物.おそらく古岳−メガ埼降下スコリア層より上位.

野池‐湯向テフラ
野池‐湯向テフラは野池火山山頂部から約15000年前に発生したプリニー式噴火によって噴出した軽石質テフラで,湯向降下軽石堆積物と寝待火砕流堆積物・野池火砕丘堆積物からなる(下司・小林,2006).

湯向降下軽石層 (Ympfa)
命名:下司・小林(2006).
分布:野池から口永良部島東部.
模式地:湯向付近.
最大層厚:約10m
推定体積: 約1.8×10-1km3
形成年代:約15,000cal BP.
記載:湯向降下軽石は,野池山北東山腹を中心に分布する安山岩質の降下軽石である.湯向降下軽石は島の北西部にあたる番屋ヶ峰地区を除くほぼ全島にわたって分布しており,島内における層厚分布から湯向降下軽石の分布主軸は野池山頂付近から口永良部島の北東山腹を通り東北東方向の海上に伸びていると推定される.分布主軸の延長上にあたる屋久島・種子島では該当するテフラは未報告である.湯向降下軽石は淘汰のよい角張った軽石からなり,本質物質はやや発泡の悪い灰白色の安山岩質軽石からなる.また降下軽石層の下部には少量の暗灰色のスコリアや縞状軽石が含まれる.

野池火砕丘堆積物 (Nc)
命名:下司・小林(2007)火山地質図.
分布:野池東方の小火口群の周辺.
模式地:野池東方の小火口群の周辺.
最大層厚:約100m
推定体積:約2.3×10-1km3
形成年代:約15,000cal BP.
記載:野池火口の周辺に分布する低い火砕丘を構成する堆積物.露出はきわめて限られるが,火口近傍に降下した軽石からなる.野池−湯向テフラの火口近傍相.

寝待火砕流堆積物 (Npf)
命名:下司・小林(2006).
分布:野池山北斜面,寝待温泉.
模式地:寝待温泉上方の一周道路沿い.
最大層厚:約20m
推定体積:約2×10-1km3
形成年代:約15,000cal BP.
記載:寝待火砕流堆積物は野池火山の北山腹にあたる田代東方から湯向付近にかけて広く分布する安山岩質の軽石質火砕流堆積物である.また小規模な分布が野池山西側山腹にも認められる.やや発泡の悪い灰白色〜灰色の安山岩質軽石と,暗灰色の安山岩質スコリアからなり,灰白色の細粒火山砂〜火山灰を伴う.火砕流堆積物の表層部はしばしば酸化して暗赤色〜暗紫色を呈する.軽石の最大直径は20 cmで,やや円磨している.野池山の北側山腹では寝待火砕流堆積物は固く溶結し,本質物質は圧密によりレンズ状を呈する.また火口から北東に約3 km離れた湯向付近では,寝待火砕流堆積物は谷部を埋めた非溶結の軽石流堆積物として分布している.

野池火山噴出物 (Nk)
命名:下司・小林(2006).
分布: 野池火山の火山体
模式地:西ノ湯から折崎海岸にかけて
最大層厚:400m以上
推定体積:約2.7km3
形成年代:約10万年前〜約3万年前
記載:野池火山の火山体主部を構成する安山岩溶岩流及び火砕物.山頂部は一部弱溶結した火砕物からなり,山麓部には複数のブロック溶岩が広く分布する.地形的に最も新しい折崎付近の溶岩を覆うテフラから約32,170±140 cal BPの年代が報告されている(小林ほか2002).


2.2 カシ峯火山噴出物

カシ峯火山噴出物(Ks,Kl,Kpc)
命名:下司・小林(2006).
分布: カシ峯からメガ埼付近
模式地:カシ峯南側の海食崖
最大層厚:250m以上.
推定体積: 約0.1km3
形成年代:約5万年前以前.
記載:カシ峯を構成する安山岩溶岩流及び火砕物.下部の成層火山体を構成する噴出物を古期カシ峯火山噴出物(Ks),それを覆う溶岩流を主体とする噴出物を新期カシ峯火山噴出物(Kl, Kpc)と区分する.中位にAT火山灰層(29,000 cal BP)を挟むロームに覆われることから,その噴出時期は約5万年前より古いと考えられる.

2.3 高堂森火山噴出物

高堂森火山噴出物(Td)
命名:下司・小林(2006).
分布: 高堂森から湯向.
模式地:湯向西方海岸.
最大層厚:400m以上
推定体積:約3.3km3
形成年代:約10万年前以前.
記載:高堂森火山の火山体主部を構成する安山岩溶岩流及び火砕物.最上部の噴出物の間にK-Tzテフラ(95ka)が挟まれることから,その主要部は10万年前以前に形成されたと考えられる.


4.後境・番屋ヶ峰ステージ

4.1 番屋ヶ峰火山噴出物


番屋ヶ峰火山噴出物(By1,By2)
命名:下司・小林(2006).
分布: 番屋ヶ峯
模式地:番屋ヶ峯
最大層厚:300m以上.
形成年代:約20万年前以前.
記載:番屋ヶ峰火山は口永良部島北西部を占める.火口地形の分布や溶岩流・火砕物の傾斜方向などから推測すると,番屋ヶ峰火山は活動時期や活動中心の異なる複数の火山体の集合からなると思われる.ここでは一括して番屋ヶ峰火山体とし,被覆関係および侵食,熱水変質の程度から,大きく古期番屋ヶ峰火山噴出物(By1)と新期番屋ヶ峰火山噴出物(By2 )に区分した.古期番屋ヶ峰火山噴出物は番屋ヶ峰火山の主に中央部から西部にかけて露出し,熱水変質により褐色から白色岩化した安山岩質溶岩および火砕岩から構成される.新期番屋ヶ峰火山噴出物は古期噴出物を覆って,番屋ヶ峰火山の山頂部から東部および北西端部に分布する変質の弱い安山岩質溶岩流からなり,火砕丘堆積物や土石流堆積物を少量伴う.番屋ヶ峰の山頂部には,侵食によって拡大した火口と思われる凹地が認められる.番屋ヶ峰の東山麓に流下している,番屋ヶ峰火山新期山体最上部の溶岩流は野池火山の溶岩流に覆われている.


4.2 後境火山・城ヶ鼻火山噴出物

後境火山噴出物(Gy)
命名:下司・小林(2006).
分布:後境から寝待温泉にかけての海岸
模式地:寝待温泉付近の海食崖.
最大層厚:250m以上.
形成年代:50万年より古い.
記載:口永良部島主部の北側から東側海岸にかけての海食崖下部に露出する熱水変質を被った溶岩と火砕岩からなる火山体を後境火山とする.分布が限られているためその火山体構造は明らかではないが,後境付近に露出する火砕岩層・溶岩は南側に向かって傾斜していることから,現在の寝待〜後境海岸よりも北側にその火山体中心が存在していたと思われる.

城ヶ鼻火山噴出物(Jo)
命名:下司・小林(2006).
分布: 湯向東方から城ヶ鼻付近.
模式地:城ヶ鼻付近の海食崖.
最大層厚:200m以上.
形成年代:50万年より古い.
記載:口永良部島の北東端に分布する,熱水変質を被った溶岩と火砕岩からなる火山体を城ヶ鼻火山とする.城ヶ鼻付近に露出する火砕岩層・溶岩もまた南側に向かって傾斜していることから,後境火山同様に現在の海岸よりも北側にその火山体中心が存在していたと思われる.


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