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3.結果:地磁気・重力異常の特徴

地磁気全磁力異常図を第3図,フリーエア重力異常図を第4図,ブーゲー重力異常図を第5図に示す.図の作成にはGMT6(Wessel et al., 2019Wessel, P., Luis, J. F., Uieda, L., Scharroo, R., Wobbe, F., Smith, W. H. F. and Tian, D. (2019) The generic mapping tools version 6. Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 20, 5556–5564.)を使用した.海底地形名称は海上保安庁海洋情報部の提供する海底地形名リストに準拠している.

地磁気全磁力異常(第3図)は,-280 ~ 380 nTの間で変化している.奥尻海盆北部で最小値の-280 nT,奥尻島北方で最大値の380 nTとなる.奥尻島北方の東西方向約25 kmの正の磁気異常は茂津多海脚の陸側周辺まで北北東方向へ連続している.その正の磁気異常は,北緯42度35分付近で北西方向に分岐し,0 ~ 40 nT程度の正の磁気異常帯として奥尻海嶺に沿うように連続している.後志舟状海盆は東側を茂津多海脚,西側を奥尻海嶺で区切られた舟状海盆であり,図中にはその南半分が示されている.ここでは-70 ~ 20 nTの磁気異常が見られる.なお後志舟状海盆の磁気異常については,北東-南西から東西方向に広がる正負の地磁気異常が特徴的で,その変化の方向はリフトの発達方向とおおむね一致しているため,縁海盆のリフティング時の火成活動に起因している可能性が指摘されている(佐藤,2023佐藤太一(2023)積丹半島付近重力異常図・磁気異常図.海洋地質図,no.94,産業技術総合研究所地質調査総合センター.).北緯42度34分,東経139度10分周辺には北北東-南南西の走向を持つ比高約700 mの地形的高まり(森ほか,2019森 宏・阿部信太郎・青柳恭平・大上隆史(2019)1993年北海道南西沖地震震源域南部の地質構造と震源断層の関係.地震,71,233–241.では西奥尻海嶺と命名)が見られ,北緯42度40分近辺で奥尻海嶺と接続している.ここでは50 nT程度の正の磁気異常が点在して見られる.日本海盆側では,海底下の火山性小丘が北緯42度40分~北緯42度50分,東経138度50分~東経139度10分の海域で報告されている(岡村,2026岡村行信(2026)奥尻島北方海底地質図.海洋地質図,no.97,産業技術総合研究所地質調査総合センター.).各小丘に対応する磁気異常は見られないが,比較的長波長の磁気異常が見られ,火成活動と関連する可能性はある.奥尻島の北方から東方にかけては,稲穂海丘,滝ノ澗海丘,沖ノ根といった北西―南東方向に並ぶ火山性のマウンドが分布しており,その地質構造から中新世の火山と推定されている(岡村,2026岡村行信(2026)奥尻島北方海底地質図.海洋地質図,no.97,産業技術総合研究所地質調査総合センター.).稲穂海丘(約160 nT),滝ノ澗海丘(約240 nT)に対応するダイポール型磁気異常が観測されてはいないが,顕著な正の磁気異常の直上に位置しているため,磁気異常は一帯の火成活動に起因するものと推測される.沖ノ根は-140 nTの負の磁気異常を呈すが,こちらもマウンドに対応するような磁気異常は見られない.奥尻海峡には小規模な南が正で北が負のダイポール型の磁気異常が見られるが,海底地形では対応する地形は見られず,埋没した磁化物体によるものと推測される.渡島半島の沿岸部は短波長の磁気異常が顕著である.陸域の火成活動(産業技術総合研究所地質調査総合センター編,2025産業技術総合研究所地質調査総合センター 編(2025)20万分の1日本シームレス地質図V2.産業技術総合研究所地質調査総合センター,2025年7月18日更新,https://gbank.gsj.jp/seamless/.(2025年7月28日閲覧))が沿岸部にまで及んでおりそれが磁気異常として観測されていると考えられる.

フリーエア重力異常(第4図)は-40 ~ 120 mGalの間で変化しており,海底地形つまり水深の変化との相関が強く見られる.ブーゲー重力異常(第5図)は70 ~ 200 mGalの間で変化している.全体的には,渡島半島沖からから西方へのブーゲー重力異常の増加が特徴的である.奥尻海嶺及びその西側の高まり(西奥尻海嶺)や,後志舟状海盆の深まり,及び茂津多海脚の高まりでは起伏に対応したフリーエア重力異常が見られたが,ブーゲー重力異常では見られない.このことは,これら海底地形で観測されたフリーエア重力異常は主として海底地形の起伏に起因するものであると考えられる.一方で奥尻海嶺では,ブーゲー重力異常の等重力線の幅が狭く,西に向かい130 mGalから170 mGalへと急増する様子が見られる.第6図に示す広域ブーゲー重力異常(産業技術総合研究所地質調査総合センター,2013産業技術総合研究所地質調査総合センター(2013)日本重力データベース DVD版,数値地質図, P-2. )によると,この急増は,奥尻海嶺全体に見られる.この特徴は奥尻島の南西方向に連続しており,松前海台の北西側に発達する直線的な北西落ちの正断層の崖(森ほか,2019森 宏・阿部信太郎・青柳恭平・大上隆史(2019)1993年北海道南西沖地震震源域南部の地質構造と震源断層の関係.地震,71,233–241.)の走向とおおむね一致している.奥尻海嶺の東側に位置する後志舟状海盆と奥尻海盆は,大陸性地殻に残存した背弧リフト帯であることが示唆されている(e.g., Jolivet et al., 1991Jolivet, L., Huchon, P., Brun, J. P., Le Pichon, X., Chamot-Rooke, N. and Thomas, J. C. (1991) Arc deformation and marginal basin opening: Japan Sea as a case study. Journal of Geophysical Research, 96(B3), 4367–4384.Jolivet and Tamaki, 1992Jolivet, L. and Tamaki, K. (1992) Neogene Kinematics in the Japan Sea Region and Volcanic Activity of the Northeast Japan Arc. In Proceedings of the Ocean Drilling Program, 127/128 Part 2 Scientific Results. Ocean Drilling Program, 1311-1331.Horne et al., 2017Horne, A. V., Sato, H. and Ishiyama, T. (2017) Evolution of the Sea of Japan back-arc and some unsolved issues. Tectonophysics, 710–711, 6–20.).後志舟状海盆のブーゲー重力異常は120 ~ 130 mGalで周囲との重力差が小さく,渡島半島沖まで連続している.奥尻海盆のブーゲー重力異常は60 ~ 80 mGal(第5図第6図)と後志舟状海盆よりも値は小さい.ブーゲー重力異常は一般的には地殻や堆積層の厚さ,または密度分布を反映すると解釈できるため,残存リフト帯とされる上記二つの海盆でのブーゲー重力異常の様相の差は,後志舟状海盆でよりリフティングが進行した,奥尻海盆の堆積層厚が厚い,などが可能性として挙げられる.渡島半島の沿岸部の特徴としては,北緯42度18分,東経139度47分及び,北緯42度38分,東経139度47分を中心に直径約20 kmの周囲よりも120 ~ 140 mGal程度の高ブーゲー重力異常が挙げられる.海域と陸域(産業技術総合研究所地質調査総合センター,2013産業技術総合研究所地質調査総合センター(2013)日本重力データベース DVD版,数値地質図, P-2. )を横断して見られる特徴であり,前者は毛無山,後者は狩場山といった火山活動(吉井ほか,1973吉井守正・秦 光男・村山正郎・沢村孝之助(1973)久遠地域の地質.地域地質研究報告5万分の1 図幅,札幌(4)第66 号,地質調査所,57p.)に起因する重力異常に対応するものと考えられる.

後志舟状海盆西側の160 mGalを超える高ブーゲー重力異常の海域は,日本海盆の海洋性地殻に起因する重力異常を示唆している(佐藤,2023佐藤太一(2023)積丹半島付近重力異常図・磁気異常図.海洋地質図,no.94,産業技術総合研究所地質調査総合センター.).岡村(2026)岡村行信(2026)奥尻島北方海底地質図.海洋地質図,no.97,産業技術総合研究所地質調査総合センター.によれば松前海台の北西部の正断層の崖は,海洋性地殻と大陸性地殻の境界で,日本海形成時の大陸地殻を分断した正断層性の崖であった可能性が高い.これまでの研究から後志舟状海盆と奥尻海盆が大陸性地殻の残存リフトと理解されていることを考慮すると,奥尻海嶺から奥尻島南西部まで連続的に見られる急な重力異常の変化は,海洋性地殻と大陸性地殻の境界と解釈することが可能である.奥尻海嶺は第四紀の逆断層の活動によって形成された隆起帯とされるが(e.g., 岡村・加藤,2002岡村行信・加藤幸弘(2002)日本海の変動地形および活断層.大竹政和・平 朝彦・太田陽子編 日本海東縁の活断層とテクトニクス,47–69,東京大学出版会.森ほか,2019森 宏・阿部信太郎・青柳恭平・大上隆史(2019)1993年北海道南西沖地震震源域南部の地質構造と震源断層の関係.地震,71,233–241.),奥尻海嶺は上記の構造的境界での圧縮変動が原因の一つである可能性がある.


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