航海中は,物理探査を主に夜間に航走しながら実施し,海底の堆積物や岩石採取は昼間に停船して行った.物理探査は約 2~4 マイル(1マイルは1.852 km)間隔の格子状の測線に沿って(第2図),エアガンを音源とするシングルチャンネル及びマルチチャンネル反射法地震探査,12 kHz シングルビーム測深器(PDR)による測深,3.5 kHz サブボトムプロファイラー(3.5 kHz SBP)による高分解能音波探査,プロトン磁力計による全磁力測定及び船上重力計による重力測定を行った.地質図範囲内の反射探査測線長は約4,800 km で,そのうちマルチチャンネル地震探査測線は約260 kmである.測位はGPSとロランC を併用した.
GH94–96航海のシングルチャンネル地震探査は約10 ktの船速で航走し,2台のボルト社製エアガン 1900 C に120 立方インチのチャンバーとwave shape kitを装着し,圧力約 1,500 psi (約 105 気圧)の高圧空気を8 秒間隔で発振させた.反射波は船尾より約 150 m 後方で曳航したハイドロフォンで受信し,アンプとフィルターを通した信号を船上で反射断面をイメージ化するとともに,デジタル探鉱器で記録した.そのデータを,地震探査データ処理ソフトを用いてバンドパスフィルターとゲイン調整処理などを行った.このようにして得られた反射断面上の垂直方向の分解能は 30~40 m で,これより薄い地層の認定は困難である.
GH99航海ではシングルチャンネル地震探査の代わりに,8 ktの船速で航走し,355 立方インチのGIガン1台を震源とし,6チャンネルのストリーマーで受信したデータを地震探査データ処理ソフトを用いて3重合して反射断面を得た.反射断面上の垂直方向の分解能は上記のエアガンとほぼ同じである.
GH94–96航海のマルチチャンネル地震探査は約5 ktの船速で航走し,3台のボルト社製エアガン 1900 C に120 立方インチのチャンバーを装着し,気圧約1,700 psi (約 120 気圧)の高圧空気を約10秒間隔で発振した.反射波は50 m 間隔の12チャンネルのハイドロフォンストリーマで受信し,デジタル探鉱器に記録した.得られたデータは地震探査データ処理ソフトを用いて12重合して反射断面を得たが,その垂直分解能は100~150 m程度である.
これらの反射断面データを地質学的に解釈したが,用いた反射断面はすべて時間断面なので,本地質図及び説明書では,地層の厚さ及び深さはすべて往復走時(秒)で記載している.3.5 kHz SBPで得られる断面は 2~3 m の分解能を持ち,泥質堆積物が分布する場合には海底下数十m までの堆積構造や変形構造を観察できるが,砂質堆積物の分布域では海底下の構造はほとんど見えない.本海域では海盆や緩傾斜斜面で海底下10~30 mの成層構造が観察できたが,斜面域では海底下の地質構造はほとんど観察できなかった.そのため,本地質図はエアガンを用いた反射断面のみを用いて作成した.
反射断面の解析は原則としてVail et al., 1977Vail, P. R., Mitchum, Jr. R. M., Todd, R. G., Widmier, J. M., Thompson,III, S., Sangree, J. B., Bubb, J. N. and Hatlelid, W. G. (1977) Seismic stratigraphy and global changes of sea level. In Payton, C. E. ed, Seismic stratigraphy - application to hydrocarbon exploration, AAPG Memoir, no. 26, 49–212.に従い,連続する反射面を同時間面と考え,反射断面上の不整合面とそれに連続する反射面を境界として層序区分を行った.ただし,地質構造が複雑で,水深も大きいため,反射面を連続的に追跡することが困難な領域もあり,不整合だけでなく,層厚変化や反射面の特徴も考慮した.本地質図範囲で海底地質層序の年代を直接決めるデータは得られていない.
また,地滑り域及び火山の分布は日本水路協会発行の海底地形デジタルデータ「M7009北海道西部日本水路協会(2009)M7009 Ver. 2.0 北海道西部.海底地形デジタルデータM7000シリーズ.」及び野ほか(2016)野 徹雄・平松孝晋・佐藤 壮・三浦誠一・千葉達朗・上山沙恵子・壱岐信二・小平秀一(2016)日本海及びその周辺の地形データの統合と赤色立体地図.JAMSTEC Report of Research and Development, 22, 13–29. の赤色立体地図を参考にした.