GSJ研究奨励賞

地質調査総合センター研究奨励賞

賞の概要

 地質調査総合センター(GSJ)では、研究者が推進する先端的研究成果の社会発信を加速するため、プレスリリース等の成果発信を奨励しています。そこで、プレスリリースされた研究成果を対象に、社会課題の解決や当該学術分野に大きな影響を及ぼすことが期待される研究を選考し、令和2年度(2020年度)より毎年「地質調査総合センター研究奨励賞(GSJ Research Award)」として顕彰しています。

受賞テーマ一覧(受賞者の所属はプレスリリース時のもの)

令和5年度
わが国最大の巨大噴火の全体像が明らかに-阿蘇4火砕流の詳細な分布図と地質情報を公開-

2023年4月12日プレスリリース
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2023/pr20230412/pr20230412.html

掲載誌 大規模火砕流分布図、産総研地質調査総合センター
タイトル 阿蘇カルデラ阿蘇4火砕流堆積物分布図
URL https://www.gsj.jp/Map/JP/lvi.html
受賞者
  • 星住英夫(活断層・火山研究部門)
  • 宝田晋治(活断層・火山研究部門
  • 宮縁育夫(熊本大学、活断層・火山研究部門)
  • 宮城磯治(活断層・火山研究部門)
  • 山崎 雅(活断層・火山研究部門)
  • 金田泰明(茨城大学、活断層・火山研究部門)
  • 下司信夫(活断層・火山研究部門)
選出理由 約9万年前に阿蘇カルデラで発生した巨大噴火による火砕流分布について、地下の分布も含め詳細を明らかにし、従来の地質図では把握が困難であった火砕流の詳細な分布、堆積物の層厚および特徴、日本列島全域に堆積した火山灰の分布をデジタルデータで整備したものである。過去の巨大噴火の発生履歴・影響の情報は、地域の防災や国土利用計画への活用が期待される。また、本研究成果は、プレスリリース後から新聞やWebメディアなどで多数報じられており、社会からの反響も大きい。
令和4年度
紀伊半島南部の橋杭岩周辺で巨大津波の証拠を発見
-巨礫の移動から南海トラフ沿いの1707年宝永地震津波よりも大きな津波が来襲したことを解明-

2022年9月12日プレスリリース
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2022/pr20220912/pr20220912.html

掲載誌 Tectonophysics
タイトル Evidence from Boulders for Extraordinary Tsunamis along Nankai Trough, Japan
著者

Yuichi Namegaya, Hideaki Maemoku, Masanobu Shishikura, Tomoo Echigo

URL

https://doi.org/10.1016/j.tecto.2022.229487

受賞者
  • 行谷 佑一(活断層・火山研究部門)
  • 宍倉 正展(活断層・火山研究部門)
選出理由 本研究は、和歌山県串本町にある名勝橋杭岩の周辺の巨礫の分布について、現地調査とシミュレーションを組み合わせ、南海トラフ沿いで過去最大とも呼ばれる1707年宝永地震の津波よりも大きな津波がこの地域に来襲したことを解明したものである。本研究成果は国際誌Tectonophysics誌に掲載され、学術的にも高く評価されているとともに、防災対策や国土利用の戦略への活用が期待できるものである。またプレスリリース後から 83 件ものメディアで報じられており、社会からの反響も大きい。
令和3年度
ついに完成!東京都心部の3次元地質地盤図
-東京23区の地下の地質構造を立体的に表現できる次世代地質図-

2021年5月21日プレスリリース
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2021/pr20210521/pr20210521.html

掲載誌 都市域の地質地盤図、産総研地質調査総合センター
タイトル 都市域の地質地盤図「東京都区部」
URL https://gbank.gsj.jp/urbangeol/
受賞者
  • 中澤 努(地質情報研究部門)
  • 野々垣 進(地質情報研究部門)
選出理由 本研究は、5万点にも及ぶボーリングデータを統一的な視点でとりまとめ、東京都心部の地質構造を立体的に見ることができる3次元地質地盤図を完成させたものである。3次元地質地盤図は、一般社会から見ても理解しやすく実用度の高い情報を提供しており、今後の都市開発やインフラ整備、防災・減災等に大いに役立つものである。プレスリリース後の社会からの反響も非常に大きく、インフラや不動産関係にも大きなインパクトを与えていることから、今後の幅広い分野での利活用が期待される。
令和2年度
地下で発見!ゲノムが膜で包まれたバクテリア-新しい門に分類される常識外れの細菌の培養に成功-

2020年12月14日プレスリリース
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2020/pr20201214/pr20201214.html

掲載誌 Nature Communications
タイトル Isolation of a member of the candidate phylum ‘Atribacteria’ reveals a unique cell membrane structure
著者 Taiki Katayama, Masaru K. Nobu, Hiroyuki Kusada, Xian-Ying Meng, Naoki Hosogi, Katsuyuki Uematsu, Hideyoshi Yoshioka, Yoichi Kamagata and Hideyuki Tamaki
URL https://doi.org/10.1038/s41467-020-20149-5
受賞者
  • 片山 泰樹(地圏資源環境研究部門)
選出理由 GSJは天然ガス資源の効率的な利用や資源量の正確な評価に向け、生命工学領域との分野融合により、地下微生物の活動を調べている。本研究は分類学において最上位階級にあたる『門』レベルで新しい細菌の培養に成功し、新門の学名 “Atribacteria” を提案した点で当該学術分野において重要な成果を創出した。また、本細菌は原核生物であるにも関わらず、真核生物の特徴であるはずの核膜のような細胞内膜を持つことを発見し、原核生物の定義を変えうる点で教科書を書き換える歴史的発見と言える。今後は本細菌が多く生息する地下環境の天然ガス資源の形成過程に果たす役割の解明に期待する。