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地質調査研究報告 Vol.65 No.1/2 (2014)

表紙

花崗岩の風化物,希土類含有サプロライト

花崗岩の風化物,希土類含有サプロライト 華南からベトナム北部にかけて花崗岩が深部まで風化し,粘土鉱物に富む軟岩(サプロライト)が発達し,数千ppmに達する希土類元素(REE)を含むことがある.これがイオン吸着鉱と呼ばれるもので,華南を中心としてハイブリッド車に必要な重希土類元素を供給している.江西省最南部の龍南地区が最も著名であるが,その周辺域,更にはベトナム北部の花崗岩地域でも写真で示すような厚い風化殻,サプロライトがREE異常を伴っている.源岩の時代は今回,三畳紀であることが確定したが,サプロライトの生成年代は現世をかなり遡る可能性もあり,その年代論は興味深い.

(写真・文:石原舜三)

目次

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タイトル著者PDF
論文
富山県南砺市法林寺地区のボーリングコアにおける火山ガラスを含む大山倉吉テフラ(DKP)の認定とその北陸地域の活断層の活動性評価における意義 丸山 正・齋藤 勝 65_01_01.pdf [2MB]
概報
日本列島における年代未詳岩石の K-Ar 年代測定
― 地質図幅作成地域の火成岩(平成 24 年度版)―
松本哲一・高橋 浩・星住英夫 65_01_02.pdf [1.1MB]
短報
Zircon U-Pb age of the Triassic granitoids at Nui Phao, northern Viet Nam Shunso Ishihara and Yuji Orihashi 65_01_03.pdf [3.2MB]

 

要旨集

富山県南砺市法林寺地区のボーリングコアにおける火山ガラスを含む大山倉吉テフラ(DKP)の認定とその北陸地域の活断層の活動性評価における意義

丸山 正・齋藤 勝

北陸地域でこれまでに確認されている大山倉吉テフラ(DKP)については,重鉱物の屈折率が報告されている一方,火山ガラスは風化変質により粘土化しているため屈折率が報告されていなかった.富山県南砺なんと法林寺ほうりんじ地区において採取されたボーリングコア中に新鮮な火山ガラスを多数含む軽石質テフラが検出された.この軽石質テフラの火山ガラス,斜方輝石及び普通角閃石の屈折率は,いずれも給源地付近でのDKPの値とほぼ一致している.北陸地域におけるDKPの火山ガラスの屈折率が初めて明らかにされたことにより,DKPの同定がより確実になった.さらにDKPが挟在する有機質シルト層の花粉分析により,海洋酸素同位体ステージ(MIS)3を示唆する植生相が認められた.火山ガラスを含むDKPは法林寺断層の下盤側(低下側)の砺波平野地下から検出された.砺波平野をはじめ北陸地域の盆地を限る活断層の下盤側断層近傍では,DKPが広く保存されている可能性がある.同テフラを指標として,断層両側におけるMIS 3の段丘面及び同面を構成する地層の分布高度を明らかにすることにより,下盤側の埋積による影響も考慮した過去およそ5.5万年前以降の長期的な正確な把握が可能になると期待される.

日本列島における年代未詳岩石の K-Ar 年代測定
― 地質図幅作成地域の火成岩(平成 24 年度版)―

松本哲一・高橋 浩・星住英夫

産業技術総合研究所の陸域地質図プロジェクトで作成される地質図幅の正確さを向上するため,平成 24年度内に5個の深成岩試料に対して K-Ar年代測定を行った.これら深成岩試料については,粉砕・粒径揃えを施した後にアイソダイナミック・セパレーターおよびタッピング処理にて分離・精製した黒雲母濃集フラクションをK-Ar 年代測定に用いた.K-Ar 年代が得られた試料ごとに,岩石名と簡単な記載,産地,試料提供者,周辺の地質状況,K-Ar 年代,分析データ,測定結果の地質学的意義を記述した.

ベトナム北部,ヌイパオにおける三畳紀花崗岩類のジルコンU-Pb 年代

石原舜三・折橋裕二

ベトナム北部のレッドリバー断層以東には“三畳紀”花崗岩が古生層中に広域的には南北方向に貫入する.ヌイパオ産試料から造岩鉱物のジルコンを分離し,U-Pb法で年代測定を試み,250 Ma前後の三畳紀最早期の年代であることを確認した.この花崗岩には錫・タングステン鉱徴地が多数記載されており,また最近,その風化部にイオン吸着REE鉱床が発見されているので,今後はそれぞれの鉱化年代を明らかにする必要がある.