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地質調査研究報告 Vol.59 No.11/12 (2008)

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表紙

東京低地北部から中川低地にかけた沖積層の基盤地形

東京低地北部から中川低地にかけた沖積層の基盤地形

   この基盤地形は、最終間氷期から最終氷期最盛期にいたる海水準低下に伴う河川の侵食によって形成された。最終氷期最盛期、北から南へと流下する中川と西から東へと流下する荒川は、東京低地北部において合流し、古東京川となって、東京湾口にかけて流下していた。この基底地形は、後の海水準上昇に伴って堆積した、東京低地や中川低地の軟弱地盤を構成する沖積層によって充填される。本図は、7,021 本のボーリング柱状図資料から認定した沖積層の基底深度分布を逆距離加重法によって平面補間することによって作成した。詳細は本号の田辺ほか (2008) を参照。

(図と文 : 田辺  晋)

目次

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論文
東京低地北部から中川低地にかけた沖積層の基盤地形 田辺  晋・中西利典・木村克己・八戸昭一・中山俊雄 (497-508) 59_11_01.pdf [2 MB]
東京低地北部における沖積層のシーケンス層序と古地理 田辺  晋・石原与四郎・中島  礼 (509-547) 59_11_02.pdf [18 MB]

要旨集

東京低地北部から中川低地にかけた沖積層の基盤地形

田辺  晋・中西利典・木村克己・八戸昭一・中山俊雄

   東京低地北部と中川低地における 7,021 本のボーリング柱状図資料から沖積層の基底面を認定し、ボーリング柱状図資料の位置情報と積層の基底面深度からなる数値情報を構築した。そしてこの数値情報をもとに、逆距離加重法による平面補間を行い、沖積層の基底面深度分布図を作成した。沖積層基底面深度分布は、沖積層の基底礫層が分布する地域については、その上面深度を採用している。この沖積層基底面深度分布図は、中川、元荒川、綾瀬川、荒川、古東京川沿いの開析谷や埋没段丘面・波食棚などの沖積層基盤地形の詳細をあらわす。また、本図と東京低地北部と中川低地における地盤高との対比から、沖積層の層厚と地盤高には明瞭な関係があることが明らかになった。沖積層の層厚が 40 m 以上の地域では地盤高は標高 2 m 以下、沖積層の層厚が 25 m 以下の地域では地盤高は標高 2 m 以上を示す。

東京低地北部における沖積層のシーケンス層序と古地理

田辺  晋・石原与四郎・中島  礼

東京低地は、下総台地、大宮大地、武蔵野台地に囲まれた、主として利根川によって形成された沿岸河口低地であり、東京低地の北部における沖積層は、基盤形状や利根川の流路変遷の影響などによって、複雑な岩相と分布を有することが知られている。本研究では 8 本の沖積層ボーリングコア堆積物の堆積相と放射性炭素年代値、2,308 本のボーリング柱状図資料を整理することにより、東京低地の北部の沖積層の 3 次元的な分布とシーケンス層序、古地理を明らかにした。
   最終氷期最盛期以降、中川と荒川、古東京川の開析谷を充填した沖積層は、下位より礫質な網状河川性堆積物、植物根を含む砂泥互層からなる蛇行河川性堆積物、貝化石を含む砂泥層からなるエスチュアリー性堆積物、貝化石を含む砂層からなる砂嘴性堆積物、貝化石を含み砂と植物片の含有量が上方に増加するデルタ性堆積物から構成される。そしてこれらの沖積層は、シーケンス層序学的な解釈を適応することにより、海進面が網状河川と蛇行河川性堆積物境界、最大海氾濫面がエスチュアリーとデルタ性堆積物境界に認定され、それぞれ >14,100 cal BPと 8,100〜5,900 cal BPの年代値を有することが明らかになった。砂嘴性堆積物は東京低地北部の東縁に局所的な堆積体を構成する。
   東京低地の北部では、後氷期の海水準上昇に伴って、網状河川から蛇行河川、干潟、内湾へと古地理が変遷した。荒川開析谷では約 10,000〜5,000 年前に卓越した利根川の土砂供給によって、砂州とデルタによる急速な埋積が進んだ。一方、中川開析谷ではその時期、供給土砂が欠乏し、潮流が卓越した流路が形成されたと考えられる。潮流が卓越した流路は約 5,000 年前以降、中川開析谷に流路を変遷した利根川の供給土砂によって内陸から陸化した。中川開析谷の流路口 (奥東京湾口) には、埋没段丘から削剥された砕屑物によって、約 8,000〜4,000 年前にかけて砂嘴が形成された。