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地質調査研究報告 Vol.53 No.9/10 (2002)

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表紙

明延鉱床のゼノサーマル型鉱脈

明延鉱床のゼノサーマル型鉱脈

   明延鉱床は兵庫県中西部にあって、807年の発見、1599年より本格的に操業を始めた日本を代表する大規模鉱脈型鉱床であると共に、ゼノサーマル型鉱脈の世界的な模式地とされた。すなわち鉱液が亜火山性の高温・浅所の環境で急冷したために、Sn, W, Cu, Zn, Pb, Ag などが密接に共沈し、複雑鉱を形成した。写真は知恵門第15脈 (N65oW, 80oN, 13mL) における Sn-Cu 期の石英脈 (幅1.5m) である。脈際にグライゼン化などがなく、変質が微弱な点に注目。明延鉱山は金属価格の低迷により、深部に鉱石を残しながら1987年3月に閉山された。

(石原舜三)

目次

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論文
宮城県南部・福島県北部に分布する中新統の珪藻化石層序と貝類化石 柳沢幸夫・栗原行人 (635-643) 53_09_01.pdf [3,573 KB]
富山県灘浦地域の中新統姿層の珪藻化石層序の再検討 渡辺真人 (645-655) 53_09_02.pdf [803 KB]
鉱化花崗岩特性 (I) : 西南日本内帯のモリブデンとタングステン鉱床生成区 石原舜三 (657-672) 53_09_03.pdf [1,060 KB]
鉱化花崗岩特性 (II) : 兵庫県中西部地域の多金属鉱化域 石原舜三 (673-688) 53_09_04.pdf [1,117 KB]
Late Jurassic radiolarian fauna from the Ikenohara Formation of the Kurosegawa Belt in the Toyo-Izumi area, Kumamoto Prefecture, Kyushu, Japan Nobuharu Hori, Makoto Saito and Seiichi Toshimitsu (689-724) 53_09_05.pdf [7,645 KB]

要旨集

宮城県南部・福島県北部に分布する中新統の珪藻化石層序と貝類化石

柳沢幸夫・栗原行人

   宮城県南部亘理地域の中新統山入層および福島県北部相馬地域に分布する中新統赤柴層の珪藻化石層序と貝類化石を報告した。山入層および赤柴層の珪藻化石群集は両者とも Thalassiosira yabei 帯 (NPD 5C) の最下部に属し、その時代は中期中新世末である。また、赤柴層中部から産出した貝類化石群集は、塩原型動物群に含められる。これは珪藻化石年代と矛盾しない。この研究の珪藻化石層序により、この地域の中新統についてより正確な年代を与えることができた。

富山県灘浦地域の中新統姿層の珪藻化石層序の再検討

渡辺真人

   富山県氷見市灘浦地域の中新統姿層の珪藻化石層序を再検討し、高分解能の珪藻化石層序を確立した。姿層中には Crucidenticula nicobaric a帯 (NPD 5A)、Denticulopsis praedimorpha 帯 (NPD 5B) と Thalassiosira yabei 帯 (NPD 5C) が認められ、Yanagisawa and Akiba (1998) による生層準 D 51, D 52, D 53およびD 55が認められた。姿層のC. nicobarica 帯 (NPD 5A) からD. praedimorpha 帯 (NPD5B) 下部にかけて、C. nicobarica が 10-20% 産出するが、生層準 D51 (first occurrence of Denticulopsis praedimorpha var. minor ; 12.9 Ma) と D52 (last occurrence of C. nicobarica ; 12.7-12.8 Ma) の間の2層で、産出頻度が 1% 以下と大きく低下することが判明した。姿層の堆積速度曲線を作成した結果、姿層最上部の珪藻質泥岩と大境海緑石砂岩層の間に、時間間隙があることが推定された。

鉱化花崗岩特性 (I) : 西南日本内帯のモリブデンとタングステン鉱床生成区

石原舜三

   花崗岩類の化学的性質と関連鉱床との成因的関係を追及する目的で、Mo 鉱床生成区と Sn-W 鉱床生成区、さらに不毛区から採取した 47 試料にていて偏光蛍光エックス線解析法で分析した。Mo 鉱床生成区の花崗岩類は Al2O3、アルミナ飽和指数 (ASI)、Ga、K2O、Rb で最も低い。苦鉄質成分では V、Cr、Zn、Co は鉄の2価、3価の規制を受けて、その含有量が変化する。微量成分としての Mo は Mo 鉱床生成区で高く、不毛区で最低である。従って、これは同鉱床探査の岩石地化学探査の指示元素として使いうる。W は Sn-W 鉱床生成区で高く、以外にも Mo 鉱床生成区でも高い。微量の W、Sn は、Sn-W 鉱床生成区における鉱床探査指示元素として使いうる。今回の分析試料は1969年代に湿式分析 (ロ-レン・スミス法) したものであり、そのため両分析方法による比較を試みた。相関係数が低いものは、MnO (0.83)、P2O(0.85)、Al2O(0.87)、Na2O (0.88) で認められた。両分析法の一致線からの隔たりが大きいものは、P2O5 (0.79)、MnO (0.83)、K2O (1.15) であり、湿式分析法のカリウムが低くでる。一方、CaO と SiO2 さらには原子吸光法による微量 Sn については、良い一致性を示した。

鉱化花崗岩特性 (II) : 兵庫県中西部地域の多金属鉱化域

石原舜三

   兵庫県中西部地域の白亜紀後期の火山深成岩帯には、小規模な銅・鉄・砒素鉱床が知られている。関連する花崗岩類は小規模に露出し、鉱化能力を持つ産状を示す。花崗岩類38個について主成分14、微量成分31について偏光蛍光X線分析し、花崗岩類の鉱化能力について評価した。花崗岩類は磁鉄鉱系 (八頭-神崎花崗岩類、引原花崗岩) とチタン鉄鉱系 (用瀬花崗岩、和田山花崗岩) に分けられる。Cu, Fe, As などの鉱床を伴う磁鉄鉱系花崗岩類は帯磁率測定から、特に値が高い磁鉄鉱を多く含む花崗岩類に関係している。岩石化学的性質は磁鉄鉱系とチタン鉄鉱系で異なる性質を示し、磁鉄鉱系では鉱化花崗岩が Cu でやや高い傾向がある。CuS 鉱物は花崗岩マグマで安定相を作るために花崗岩中の銅含有量は銅鉱化能力を指示する可能性があるが、当地域の含有量 (平均4 ppm) はチリ (同62 ppm) や北上山地 (同37 ppm) と比べて極めて低く、銅鉱化能力の適格性が高いとは言えない。Pb-Zn 鉱化に関しても、その低い珪長質度とアルミナ飽和度から不適格な花崗岩類と言える。

熊本県東陽-泉地域の黒瀬川帯池原層から産出する後期ジュラ紀放散虫化石群集

堀  常東・斎藤  眞・利光誠一

   熊本県中央部の東陽-泉地域に分布する黒瀬川帯から保存良好な後期ジュラ紀を示す放散虫化石が産出した。泥岩を主体とする上部ジュラ系池原層において採取された2試料 (GSJ R76489 および GSJ R76490) からはそれぞれ330種および329種の放散虫種が識別された。それぞれの試料中の放散虫群集は非常に類似しており、松岡 (1995a) の年代論に基づけば、本放散虫群集は Oxfordian の年代を示す。本試料からの放散虫群集は、多量の Spumellaria を含む点で、同時代の付加体中の放散虫群集と異なる。これは池原層の堆積場が付加体とは異なる可能性を示しており、池原層は trench slope の環境下で堆積した可能性が示唆される。