活断層・古地震研究報告  第4号 トップへ

邑知潟南縁断層帯・石動山断層の活動履歴調査 (その1 / 水白地区)

杉戸信彦・水野清秀・堤  浩之・吾妻  崇・下川浩一・吉岡敏和

邑知潟南縁断層帯石動山断層の活動履歴・変位速度の解明を目的としたトレンチ掘削調査・ボーリング調査を、石川県鹿島郡鹿島町水白において実施した (第12図)。その結果、次の成果が得られた (第34図)。

(1) トレンチ壁面において逆断層運動に伴う変位・変形が観察された。断層上盤側のボーリングコア (Core.1) の層序も考慮すると、地下浅部における断層面は30〜35°で南東に傾斜すると推定される。

(2) トレンチ壁面より、石動山断層はAT火山灰 (26,000〜29,000年前) の降下時以降に4回以上活動しており、最新活動時期は約3,200年前以降、1回前の活動時期は約3,700年前〜2,100年前 (より限定した場合は約3,200年前〜約2,400年前)、2回前の活動時期は約4,900年前〜3,700年前と推定される。

(3) 最近2回の断層運動に伴う上下変位量は合計で約2.2 mであった可能性が高い。その場合、断層面の傾斜を考慮すると、1回あたりの変位量は平均で1.9〜2.2 mと見積もられる。

(4) 断層上盤側の露頭 (Loc.1)、および下盤側のボーリングコア (Core.2) においてそれぞれ見いだされたAT火山灰が10.5〜11.6 mの上下変位量を示すことから、変位速度は0.63〜0.89 mm/yr以上と見積もられる。


第1図



能登半島南部の地形と活断層の分布。段彩陰影図は国土地理院発行の50 mメッシュ数値地図を用いて作成した。活断層の分布は活断層研究会編 (1980、1991)、池田ほか編 (2002)、中田・今泉編 (2002)、および本研究による調査結果に基づく。


第2図



(a) 鹿島町水白地区付近の地形面・変位地形の分布。図の位置は第1図に示す。等高線は鹿島町発行1/2,500都市計画図 (1997) より抜粋した。等高線間隔は2 m。(b) トレンチ掘削・ボーリング調査地点付近の地形。図の位置は第2図 (a) に示す。等高線はEDMによる測量データを用いてSurfer (Golden Software Inc.) で作成したのち若干の変更を加えたもので、その間隔は0.25 m。


第3図



(a) トレンチ北東壁面全景と低断層崖の写真。トレンチの位置は第2図 (b) に示す。(b) トレンチ南西壁面全景と低断層崖の写真。トレンチの位置は第2図 (b) に示す。


第4図

拡大する

水白地区における地形・地質構造の解釈。断面位置は第2図 (b) に示す。