サイエンス

10のテーマ

国際惑星地球年では「社会のための地球科学」をかかげて, 次の10テーマで社会と密接に関連する課題を設けています。

  • 地下水 --- 乾いた惑星の蓄え?
  • 災害 --- 危険を最小に,知識を最大に
  • 地球と健康 --- よりよい環境を作るために
  • 気候 --- 石に刻まれた歴史
  • 資源 --- 持続的利用に向けて
  • 巨大都市 --- 世界的な都市化の未来
  • 地球深部 --- 地殻からマントル,コアまで
  • 海洋 --- 時の深淵
  • 土壌 --- 地球の生きている皮膚
  • 地球と生命 --- 多様性のみなもと

以下,Eder and Janoschek(2007)*から各テーマごとの簡単な論点を紹介します。詳しくは,テーマごとに 英文小冊子 が用意されていますので,それをご覧下さい。


Eder, Wolfgang, and Werner R. Janoschek(2007): 国際惑星地球年とジオパークの役割,地質ニュース,No.635(2007.7),35-41.

地下水 Groundwater

この重要なテーマでは共通する以下の論点に対して,具体的な実行計画が想定されます。

論点

  • 地下水の量はどの位あり,それを持続的に利用するにはどうすればよいか。
  • 枯渇やそれに伴う人類/環境への悪影響を最小限にとどめるため, 再生不可能である「化石水」資源の採掘をどう定め,管理したらよいか。
  • 脆弱な地下水資源を汚染から守り,致命的な汚染を被った地下水を回復させるにはどうすればよいか。

実行計画

  • 国境をまたぐ地下水盆の同定を含めた淡水性地下水資源のマッピングと定量。
  • 淡水性地下水のシステムの流入,移動,流出プロセスと,それが生態系を作り上げる上で果たす役割を調べる。
  • 化石地下水源の状況を調査し,それらの賢明な使用について探る。
  • 地下水の汲み上げ,地下水塊の劣化による環境への影響を改善するため,影響を受ける湿地を保護し, 地下水の質や量の劣化を防止し,地下水システムを長期監視する。
  • 環境により水の価値が異なることを認識し,水資源の保全や保護対策を実施する。

災害 Hazard

以下に掲げる主要な論点を基に,すばらしい研究プロジェクトが期待されています。

  • 人類はこれまで岩石圏,生物圏,地形をどのように変えてきたか。 その結果,ある種の災害が生じやすくなり,社会的な脆弱性が増大したのだが。
  • 災害に対する人や地域の脆弱性をどんな技術や方法論で評価するか。 そしてそれを災害の規模に応じてどう使い分けるか。
  • 様々な地質災害に対する現在の監視,予知,軽減能力はどのくらいか。 この能力をどんな方法論や技術で向上させて世界の市民を守るか。
  • リスクや脆弱性の情報を用いて,政府などが地質災害を軽減する政策・計画を立てる際の障害はなにか。

地球と健康 Health

地球上の元素分布に人類が大きく影響を与えたことや,健康と自然条件が関連していることなどの知識は急速に増大しています。 以下の3つの主要な論点はこれらの問題に優先的に取り組むものです。

  • すでに判明している健康問題の環境的原因を特定し,それを最小限にとどめたり予防する方法を模索する。
  • 健康に害を与える可能性のある土壌,堆積物,水中の化学物質の上限値,下限値を特定する。
  • 人類,動物の健康に地球化学的条件がどう関連しているかを探る。

気候 Climate

サブタイトル「石に刻まれた記録」の下,以下のような研究課題が設定されています。

  • 最後の2つの氷期・間氷期サイクルにおける気候と環境の変動パターンの知識を増大させる。
  • 氷河の発達,衰退を決める条件を探る。
  • 氷期中の急変動イベントについて地質学的証拠からその周期と原因を探る。
  • 熱帯地域と南半球を重点的に,高分解能な古環境変動データの広汎な提供をはかる。
  • 熱機関としての熱帯の研究を進め,温帯の気候変動との関連を探る。
  • 文化的変容のあった地域を重点的に,保存状態のよい考古学的記録と古環境変動記録との関連を明らかにする。
  • 生物学,地質学,土壌学,海洋学の研究を進め,気候変動と地圏・水圏・生物圏の変動の関連を探る。
  • これには,将来の氷期再来の可能性解明のための,炭素フラックスの変動についての重点的な研究も含む。
  • 地球温暖化問題に光をあてて,今後沈降や隆起による海水準上昇の可能性がある地域を明らかにする。
  • モデリング研究者と古気候研究者間の協力を促進する。
  • 年代決定法の技術的開発を進める。
  • 各種のデータを解析し,現在の各地の気候システムの, 相互のリンケージ,感応性,慣性,時間差を明らかにする。

  • ワークショップを開催し,研究課題の優先順位を決定し,さらに新たな課題を設ける。

資源 Resource

以下に挙げたさしせまった主要な論点は,地球科学者,産業界,政治家や行政担当者が密接に協力して解決すべきものです。 そうして得られた結果は,世界中の社会生活をよりよいものにし続けるために役立つでしょう。

  • 持続可能な開発が叫ばれる中で,貴重な天賦の地質資源に関する知識を進歩させ, よりよい計画,管理,社会の安定と進歩に役立てるにはどうすればよいか。
  • メタン,メタンハイドレートは全世界のエネルギー需要のどの程度の割合を支えられるか, またどのような環境への影響が起こり得るか。
  • 持続可能な方法による新規の生産で,白金族元素など工業用鉱物資源の使用急増に応えるにはどうするか。

巨大都市 Megacities

非常に複雑なテーマであり,社会科学,土木工学を含めた学際的,多分野的な視点を必要とします。 3つの主要テーマごとにいくつかの主要な論点が掲げられています。

「生活の質」というテーマに関する主要な研究の論点

  • 「生活の質」というテーマから何がわかるか,そして「生活の質」を達成するのに必要な概念,要望,ニーズは何か。
  • 都市計画の企画の過程に誰が関わっているのか,それは公式の関係者か,非公式の関係者か.誰が決定権を持っているか。 それは筋の通った適切なものか。
  • 社会文化的システム内における個々の価値観を考慮しながら「生活の質」をモニターするにはどうすればよいか。
  • 大都市が人にとって,より優位性の高い創造的,魅力的な環境となるにはどうすればよいか。

「巨大都市を維持する」というテーマに関する主要な研究の論点

  • 大都市が拡大することで,エコロジカル フットプリント(人間一人が持続可能な生活を送るのに必要な生産可能な土地面積)のさらなる不均衡を生じるのではないか。
  • 都市計画,建設,管理維持の場をどのように改善すれば,このエコロジカルフットプリントを減少できるか。
  • 誰が大都市をより安定的,効率的,持続的な開発できるか,またそれを妨げるのは誰か。 行政,民間,公式・非公式な活動の交流を活性化するにはどうすればよいか。
  • 大都市が中小都市よりも内部効率を高めることができるか。 大都市での生活を農村部と同程度に持続可能なものにするにはどうするか。
  • 大都市住民の持続可能度と生活の質はそれ以外の地域の人より劣化しているか,向上しているか。 劣化しているとすればそれをどう向上させるか。リスクをどうやって受け入れられるレベルまで軽減するか。

「空間への侵略」というテーマに関する主要な研究の論点

  • 地表の開発,特に高層建築の開発の際に,どのように適切に配置し安全に建設できるようにするか。 地表と地下が互いに補い合い,持続的に土地利用を可能なよりよい都市計画のため,地表と地下の開発をどうやってうまく融和させるか。
  • 経済,社会,環境への要求をバランスよく満たすには,どんな長期政策の元で地表と地下の都市開発を行うか。 地上と地下の水資源をどのように確保するか。食料とエネルギーの供給はどのように確保するか。
  • さまざまな社会文化的,政治的認識がある中で,どのように大都市の地上と地下の経済的,社会的価値を評価し,管理するか。 大都市に対する将来の構想,モデルは何か。 可視化,意思決定支援システムなどを,政策決定にうまく用いるにはどうすべきか。 地上・地下についての新たな観測,モニタリングシステムや予測技術には何が必要か。

地球深部 Deepearth

本科学テーマにおける活動は,以下の2つの論点に焦点をあてる必要があります。

  • 地表における物質循環と,その地球深部へのフィードバックへの理解をどうやって深めるか。
  • 地球上のプロセスに対する深い理解を,どのように予知精度向上につなげるか。

プロジェクトの提案は以下の項目に沿うことが望ましいとされています。

  • 衛星や地表,あるいは試錐孔でのモニタリングなど,現場でのリアルタイムのモニタリングプログラム。
  • 地質工学,地球化学分野の実験施設。
  • 自然生息環境や人類生活圏の脆弱性についてのデータも含む,全世界的または地域的な変化について,過去のデータを含めた地質情報データベース。
  • 地球の変動モデリングシミュレーションとリスクや影響評価についての知識基盤の構築。

海洋 Ocean

海洋科学のテーマには主要な論点として以下の二つが設けられています。

  • 中央海嶺での岩石圏,水圏,生物圏の相互作用はどうなっているか。 この相互作用が地球の生命誕生にどのような役割を果たしたか。
  • 地球上の様々なプロセスは大陸縁辺の生成と発達にどのような影響を与えるか。 そして大陸縁辺は人類にどのような利益と脅威を与えるか。

主要論点への回答は,以下のような用語を含む研究タイトルが導かれるだろう。

  • 深部構造
  • 堆積物
  • 資源と流体
  • 災害
  • データ同化
  • 技術の進歩

土壌 Soil

地質学全般と土壌学が密接に協力し,学際的,多分野的な手法で以下の主要な論点に取り組み,問題解決に当ることが期待されています。

  • 社会と環境のためには現在の知識基盤のどの部分を拡充すべきか。
  • 土壌科学の知識基盤を,広範な地球科学とどう結びつけるか。
  • 一般社会との意思疎通を深めるにはどうしたらよいか。
  • 土壌に関する昔からの知識を最大限に利用するにはどうすればよいか。

地球と生命 Life

選ばれた主要な論点は以下の2つです。

  • どうすれば生物圏における動的プロセスを解明できるか。
  • こうして得られた知識を用いて,人類社会が生き残るために不可欠である地球の生命維持システムをどのようにして健全に保ちつづけるか。

上記の論点に関する答からは,生命という科学テーマの主要課題が導きだされることでしょう。 もっとも,生命は環境との戦いによって進化してきた,というべきかもしれません。

  • 環境変化と,生物多様性を生み出す原動力
  • 進化古生物学
  • 陸地における生物の発達
  • 地球生物学:生物圏-岩石圏の相互作用
  • 太古の生態系における安定性と可変性
  • モデリング

ロゴについて

国際惑星地球年のロゴは, ドイツ教育研究省が2002年を地球を知る年として様々な行事に取り組んだときに使われたものです。 固体地球を表す真ん中の赤い環,そして緑の生命圏と濃紺の水圏,それらを覆う淡青色の大気からなっていて,惑星地球を象徴しています。 国際惑星地球年では,ドイツ教育研究省の好意により,そのモチーフを国際惑星地球年ロゴの基本としています。

IYPE日本

国際惑星地球年日本(略称IYPE日本)は,日本における国際惑星地球年活動を実りあるものにするために,IYPE国内委員会との密接な連携の下に,具体的な活動を実施する会です。IYPE国際法人との間でMOU(PDF: 124KB)を締結し,他国の国内委員会などと連携して国際的活動にも参加します。


国際惑星地球年2007-2009
PDF: 920KB)

... 2008-09-25

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