GEOGrid:地球情報イノベーション

地球を見つめ深く理解する必要性*1

研究コーディネータ (地質)

佃 栄吉

地球観測情報統合化の夢

いま社会が直面しているさまざまな地球規模の問題に関しては、私たちの住む地球の情報を共有し、 多くの人の共通認識のもとでの解決に向けた判断がなされなければなりません。 地球環境の保全、エネルギー・資源の有効利用、自然災害の軽減など、将来に対する的確な予測を必要とする問題の解決においては、 高い信頼性と継続性が約束された、地球観測情報利用システムの構築が不可欠です。 将来のリスクを最小限にし、安心・安全な社会を築くため、いま世界中の人が共通の基盤となるシステムを求めていると言っても過言ではありません。 しかし、現状ではまだ、膨大な量の情報を自由に扱い利用できる、統合的なシステムは存在していません。

私たちの扱うべき情報は、大量かつ多種多様であり、複数の管理組織のもとで、複雑に絡み合って存在しています。 ユーザが容易に利用できることを意識しながらシステムを構築することは決して簡単なことではありません。 しかし私たちは、この「死の谷」*2を越え、安心して将来のビジョンが描ける持続発展可能な社会の実現を目指して、 「地球観測情報統合化の夢」を追い求めたいと思います。そのためのひとつの重要なツールとして、私たちはGEO Gridを提案し推進していきます。

産総研では、GEO Gridの開発を通して、 衛星観測データから地上・地下情報までを含む地球観測情報の大規模アーカイブと各種観測データベースやGIS*3(地理空間情報)データと統合したサービスを安全かつ高速に提供することを技術開発目標として、 地質・エネルギー・環境技術・情報技術の分野横断的な融合研究に取り組んでいます。

世界が求める全地球観測統合システム

2005年2月にブリュッセルで開催された第3回地球観測サミットで、全地球観測統合システム(GEOSS:Global Earth Observation System of Systems)の構築へ向けた10年実施計画がまとめられ、 日本を含めた世界各国の協力によって進められることとなっています。 日本では総合科学技術会議で「地球観測の推進戦略」*4が2004年末にとりまとめられ、 各府省・機関の連携のもとで文部科学省を事務局として進められています。GEO Gridは国内・国際的連携の仕組みとして、関係機関から強く期待され、産総研のイニシアティブが強く求められているところです。

着々と進むGEO Grid推進体制

産総研ではGEO Grid推進のため、内部に実施方針を決定する「推進会議」、具体的実施を総括する「運営会議」を立ち上げ、 さらに、外部機関との連携を調整する「連携会議」を設置しました。 また、その下には利用する研究者レベルでの課題別分科会を設け、活発な研究交流を行うことにしています。

国際的には、アジアを中心として利用ネットワークを広げることにしています。 地質分野で長年支援してきた東・東南アジア地球科学計画調整委員会(CCOP)での連携をベースとして、 積極的に活動を進めるため、2007年4月より担当者をバンコク事務局に長期派遣することになりました。

「地理空間情報高度活用社会」の実現に向けて

私たちの提供できるコンテンツとサービス基盤は、国民生活の利便性向上に大きく役立てられるものと考えています。 コンテンツとしては、地下地質情報、資源情報など、国土の利用・整備・保全に関わる情報を提供できるのが特徴です。 2次元の表層的なデータだけではなく、3次元さらにはそれに時間軸を入れた4次元の情報として、 自然災害の軽減、環境保全、地下空間利用などの判断のために重要な情報基盤を提供するサービスに貢献できるものを目指しています。

期待されるジオテクノロジーの発展

この特集ではGEO Gridの現状の全容を紹介します。 システムの概要、衛星情報を活用した資源探査システム、地質情報を中心としたコンテンツ、火山災害軽減を目指した応用例、 アジアにおける普及状況などにふれていますが、まだほんの一部の紹介にとどまっています。 これから多くの機関との連携と共に利用が広がっていくものと確信しています。

米国労働省によると、地球の情報技術(Geotechnology)はナノテクノロジー、バイオテクノロジーと並んで、 これから大きく発展し、新たな雇用や産業の創出が期待できる3大分野のひとつと言われています。 日本では「科学技術創造立国」に向けた育成すべき情報技術分野のひとつとして位置づけられ、 新たな情報コンテンツ産業分野として大きな期待が寄せられています。

国連により2008年を国際年として宣言された「国際惑星地球年」の活動(http://www.gsj.jp/iype/index.html)が、 2007年から2009年までのおおよそ3年の期間で行われます。 これは地球と人類の持続可能な未来のために、地球科学の知識と技術により、社会に貢献しようとする活動です。GEO Gridはまさに、この目的に大きく貢献できるシステムとなるでしょう。この期間中に是非、明確なマイルストーンを示せるようにしたいと思います。


*1:産総研 TODAY NO.2007-4 より(特集冊子がこちらからダウンロードできます)。

*2:基礎研究の成果が実際の製品となって社会に出るまでのギャップ,たとえばRIETIセミナ

*3:たとえばGISポータルサイト

*4:総合科学技術会議の決定・意見具申一覧からダウンロードできます。

ロゴについて

国際惑星地球年のロゴは, ドイツ教育研究省が2002年を地球を知る年として様々な行事に取り組んだときに使われたものです。 固体地球を表す真ん中の赤い環,そして緑の生命圏と濃紺の水圏,それらを覆う淡青色の大気からなっていて,惑星地球を象徴しています。 国際惑星地球年では,ドイツ教育研究省の好意により,そのモチーフを国際惑星地球年ロゴの基本としています。

IYPE日本

国際惑星地球年日本(略称IYPE日本)は,日本における国際惑星地球年活動を実りあるものにするために,IYPE国内委員会との密接な連携の下に,具体的な活動を実施する会です。IYPE国際法人との間でMOU(PDF: 124KB)を締結し,他国の国内委員会などと連携して国際的活動にも参加します。


国際惑星地球年2007-2009
PDF: 920KB)

... 2008-09-25

(c) 2007-2008 Secretariat, IYPE Japan, GSJ / AIST