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地質調査総合センター第8回シンポジウム「公共財としての地質地盤情報−ボーリングデータの整備と活用−」報告
伊藤 忍(地質調査情報センター)


写真1 eEarth(欧州地質データ共有プロジェクト)について話す株式会社建設技術研究所の礒部猛也氏.


写真2 ボーリングデータを使用した更新統下総層群の区分と対比について話す中澤氏.

 2007年7月25日,秋葉原コンベンションホールにおいて,地質調査総合センター第8回シンポジウム「公共財としての地質地盤情報 ―ボーリングデータの整備と活用―」が開催されました.一般参加者,講演者等あわせて131名が出席するという盛況でした.このシンポジウムでは地質地盤情報協議会が主催者として名を連ねています.協議会の活動についてはニュースレターで何度か紹介していますが,2006年度の活動の成果として「地質地盤情報の整備・活用に向けた提言 ―防災,新ビジネスモデル等に資するボーリングデータの活用―」をまとめて公開しました.この提言書はどなたでもhttp://www.gsj.jp/Sgk/ で見ることができますので,ぜひ一度ご覧になってください.今回のシンポジウムでは,協議会の2006年度の活動の集大成として,前半でこの提言書の内容と,作成に至る背景が紹介され(写真1),後半ではボーリングデータの活用例が紹介されました.

 司会は財団法人国土技術センターの桑原啓三氏と北海道土質試験共同組合の榎本義一氏が引き受けてくださいました.地質地盤情報協議会会長の栗本史雄氏の挨拶に引き続き,地質調査情報センターの佐脇貴幸氏が提言書の紹介を行いました.続いて,国内外のボーリングデータの取り扱いについて紹介された後,独立行政法人土木研究所の平野 勇氏によるコメントがありました.平野氏は,自分が国土交通省を代表して発言するわけではないと断りながらも,国土交通省のデータについては責任を持って公開していきたいという意思表示がなされました.

 後半ではまず最初に,地質情報研究部門の中澤 努氏が,ボーリングデータを使用した更新統下総層群の区分と対比について話されました(写真2).筆者は,ボーリングデータが地質図幅作成にどのように利用されるのかについて知らなかったので大変興味深いものでした.今回出席された方の多くはコンサルタント会社の方でしたが,筆者と同じような感想を持ったようです.続いて,同じく地質情報研究部門の木村克己氏他が,ボーリングデータから作成した3次元地質モデルを紹介しました.動画を用いた3次元モデルの紹介は,大変インパクトの大きいものでした.最後に社団法人全国地質調査業協会連合会情報化委員長の中田文雄氏が,ボーリングデータの公開から始まる新ビジネスについて紹介がありました.

 司会の桑原氏・榎本氏が事前に十分に準備してくださったおかげで,総合討論は大いに盛り上がりました.ボーリングデータ収集に関する法制化について,どの程度の範囲をカバーする法律が必要かという展では参加者の考え方は様々であったように思いましたが,最終的に法制化が必要な部分があるという点では一致していたように感じました.また,建築の際のボーリングについては様々な思惑に富んだ発言があったように思いますが,N値だけ取得して終わりという現状に問題があるという点で参加者の認識は一致していたように思います.

 最後に産総研の加藤碵一理事の挨拶で閉会となりました.

 今回のシンポジウムの直前に,2007年新潟県中越沖地震が発生しました.会場のロビーに,関連する地域の図幅等を急遽展示しましたが,参加者の注目を集めていたようです.

 総合討論でGUPIの岩松 暉氏が,「地質地盤情報協議会の役割は,世論を形成することである」と述べられました.地質地盤情報協議会では,今後も地質地盤情報のあるべき姿を模索し発信することにより,世論形成の一翼を担っていけると良いと思います.





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