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北太平洋大陸棚地域の生物地理復元:暖温な始新世と冷温な漸新世の比較から ユーリー B. グラデンコフ 最近のカムチャッカとサハリンの地質調査研究は,太平洋の海からアジア大陸の陸域へと漸移する地域の新生界層序に新たな展開を見せてくれている.これらの地域では,多くの地域層序の「階区分」や異なる生物群や非生物のイベントが認められてきた.カムチャッカでは次のような地域的な階区分を識別している:ユージノ−イルピンスキイ階(暁新世),クランスキー・キラキーヌンスキイ・ガイルクハビランスキイ階(始新世),それにアルギンスキイ階(漸新統)である.これらすべての「階」は,浮遊性と底生有孔虫,貝類,大型植物それに珪藻化石を産する.それゆえ,本論でこれらの化石に基づいて,標準的な「階」とその階を細分する「帯」についてその概要を要約する. 北太平洋地域における漸新統から下部中新統の最新珪藻化石層序 アンドレイ Yu. グラデンコフ 本論では現在の北太平洋地域における漸新統から下部中新統の珪藻化石層序と,加えて過去10 〜 15 年間に急速に進歩した内容を述べる.この北太平洋地域での過去25 年間,特に深海掘削のコア分析に基づいて,漸新統から下部中新統の珪藻化石帯の確立とそれを用いた化石帯の認定が劇的に進歩した.これら珪藻化石帯を基本として,これを陸上域における堆積シークエンスへ適応していった過程があるので,それらの研究意義についても触れる. 貝殻層のタフォノミーとシークエンス層序に基づいて復元したボゴール堆積盆(インドネシアジャワ島西部)の中期中新世から鮮新世の非対称な堆積環境 アスワン・エミー スパルカ・ソニア リジャニ・ インドネシア西ジャワのボゴール堆積盆の中期中新統から鮮新統にいたる二つの地域に,様々な貝殻層のタフォノミーの様相や貧化石帯の挟みなどが存在する.この二つとは堆積盆西部に堆積したサカブミ地域のニャリンダン層,および堆積盆東方に発達するカリワング層である.この中新世から鮮新世における6 オーダーの堆積シークエンス体には,コンデンセイション層や無堆積と侵食などの堆積面などを伴って様々な様式の貝殻層を含んでいる.これらの堆積体にはシークエンス境界や,ラビンメント面,ダウンラップ面,それにコンデンスセクションなどが認められる.ここでは,ある堆積様式の貝殻層の層序的パターンが堆積盆の位置や年代に応じて類似したり繰り返している.例えば,トップラップに関与している貝殻層はニャリンダン層中にのみ認められ,これは海進期堆積体(TST)の厚い堆積ユニットと高海水準期堆積体(HST)の薄い堆積ユニットを特徴づけている.対照的に堆積盆の東方にあるカリワング層の堆積サイクルはバックラップとダウンラップの様式で形成され,これはTST が薄く,HST が厚い特徴を有する.このような東西での対照的な堆積サイクルの構築構造は,中新世から鮮新世にかけてのボゴール堆積盆での非対称性の陸棚堆積の形成場を反映したものと解釈される. タイ北部マエモー炭鉱産タニシ類化石の炭素・酸素同位体に記録された古生物地理と古気候の変化 ベンジャヴァン ラタナシェーン・高嶋 勲・松葉谷 治 タイ北部のマエモー炭鉱のR-, Q-, K-石炭帯から産出したタニシ類化石の炭素13 ・酸素18 の同位体分析を秋田大学で行った.その結果,下部層の方が重い炭素同位体比を示した.R-石炭帯の炭素同位体は3.52-6.92 ‰ PDB で,Q-石炭帯では4.17-5.77 ‰,K-石炭帯では1.41-1.34 ‰ PDB 値を示した.酸素同位体比は下部層が上部層より重い値を示し,R 帯で-3.15 〜-5.10 ‰,Q 帯で-4.19 〜-6.04 ‰,さらにK 帯では-7.05 〜-8.04 ‰の範囲を示した. 北太平洋高緯度における中期中新世最温暖期の温暖化の度合:二枚貝Kaneharaia の成長断面の安定同位体分析に基づいて アントン オレイニク・ロイ マリンコヴィッチ Jr.・ 16Ma頃の中期中新世最温暖期(MMCO)は,新第三紀では最も温暖な期間であった.北太平洋地域におけるこの最温暖期のピークは,アラスカとカムチャッカの化石Kaneharaia(二枚貝網カガミガイ科)に記録されている.Kaneharaia の化石標本は,北太平洋高緯度の初期中期中新世と認定した次の2ヶ所産地から採集した.それはカムチャッカ半島北西部のシーアーチン層準とアラスカのナローケープ層である.これらの産地から多くのKaneharai 化石を採集し,最終的に成長に伴う炭素と酸素の安定同位体変動の分析可能な標本を得た.これらの化石の成長断面の分析値を,現在の亜熱帯域に生息するKaneharaia 類似の2種のDosinia の分析値と比較検討した.海洋のδ18Oの値をZachos等の用いた緯度補正を加味して-1.5 ‰と仮定すると,酸素同位体からのアラスカとカムチャッカの年平均水温は,それぞれ19.3 ℃と23.5 ℃,水温の年較差は19.8 ℃と11 ℃であることが示された.このような温度範囲は,現在の亜熱帯(北緯40 度)の混合水塊に比較可能で,北太平洋地域でのMMCO期の,まさに最温暖期のピークを示したものと考えられる. 太平洋と他の海洋の開閉事件に関連した北太平洋地域新生代の貝類化石群集と古気候変動:レビューと今後の展望 小笠原憲四郎・高野征宣・永戸秀雄・中野孝教 IGCP-355 の研究で,ドレーク海峡やインドネシア海路などの開閉の年代が明確になった.この成果を踏まえると,こ れまで地域的な地質・古生物学的事件と考えられていた事象が,この開閉事件に関連していることが示唆されるように なった.例えば,サハリンでの漸新世と中新世の境界で認められたシリカのバイオマーカーの変化は,珪藻群集の組成 変化であるが,これは北半球高緯度での冷水塊の出現に対応したもので,さらにその出現がドレーク海峡の成立と南極 循環流を反映したものであると考えられるからである.また,わが国の八尾−門ノ沢動物群の二枚貝Hataiarca の本邦 への侵入事件は,17 Ma のインドネシア海路が赤道地域で閉鎖された結果,黒潮が形成され幼生が海流に依存してわが 国に伝播した可能性が高い. 北西太平洋地域古第三紀貝類化石群の生物地理学 ‐中部日本区の形成と四国海盆の拡大‐ 本田 裕 日本を含む北西太平洋地域では,古第三紀貝類の海洋生物地理区の一つ中部日本区が,漸新世に北日本?西オホーツ ク区と台湾?南日本区の間に誕生した.同区は静岡,紀伊半島及び四国の太平洋岸に面した四万十帯の地域を含み,北日本?西オホーツク区の浅貝?幌内動物群の貝類とともに,多数の固有種(Lima sameshimai, Adulomya chitanii, Conchocele nakazawai, Pitar hataii, P. kotoi, P. murotensis,及びEmarginula tokuyamai )を産する.いっぽう,九州南東部 (宮崎県)の四万十帯,日南層群(漸新統?下部中新統最下部)からは,九州北部の芦屋動物群(漸新世)の特徴種を産 することから,同地域は台湾?南日本区に含まれる.中部日本区と台湾?南日本区との境界付近には,九州?パラオ海 嶺があって,古生物地理区の境界形成に九州?パラオ海嶺が何らかの関与をしていたと考えられる.四国海盆のリフ ティングと拡大は,中部日本区の形成と密接な関係がある. 北海道の始新統から産出したRobertsonites属を含む貝形虫化石の古生物地理的意義 山口龍彦・栗田裕司 北海道の始新統の貝形虫化石を初めて報告する.夕張地域の中部始新統石狩層群赤平層と幌内層から貝形虫化石5 種が産出した.Robertsonites 属が多産した.この属は現在,北極海を中心にオホーツク海,アラスカ湾,北大西洋北部に分布する.始新統産のものは初めての報告で,最古の記録である.Robertsonites 属は北海道以南の始新統からはまだ報告がない.瀬戸内海の始新統岩屋層から報告されているHanaiborchella reticularitriangularis も含まれていた.このことは北海道の始新世の貝形虫は,同時代の瀬戸内海の貝形虫と共通性を持つ.しかし両者の種構成は異なっていた.この貝形虫の違いは古水温の違いを反映している可能性がある. 新種Robertsonites ashibetsuensis sp. nov. および他4 種を記載した. 北海道の中新世岩石穿孔性二枚貝による生物侵食構造 鈴木明彦・平中伸英 北海道羽幌地域の中新統三毛別層から産出する岩石穿孔性二枚貝化石とその生痕化石の詳細な検討に基づいて,古環境変遷を復元した.調査地点の羽幌地域曙では,始新統逆川層と中新統三毛別層の明瞭な不整合が見られる.大型生痕化石Type I は棍棒型をなし,所属未定のグループに相当する.この生痕化石中には,二枚貝化石Platyodon nipponica が含まれていた.一方,小型生痕化石Type II はフラスコ型で,Gastrochaenolite turbinatus に同定される.この生痕化石中には,二枚貝化石Penitella kotakae が含まれていた.不整合におけるこのような産状は,いずれも明らかに自生的な産状を示すものである. 本州北東部,常磐および相馬地域の大型植物化石群集から推測される前期中新世の陸上気候 矢部 淳 東北日本太平洋側に位置する常磐および相馬地域において,主として海岸低地の植生を代表すると考えられる5つの大型植物化石群集を検討し,前期中新世の植生と陸上気候の変化を明らかにした. 北西太平洋中緯度地域における浮遊性有孔虫化石帯N.15 帯とN.16 帯境界の数値年代 林 広樹・高橋雅紀 福島県棚倉地域の久保田層下部について詳細な浮遊性有孔虫生層序を検討した結果,化石帯N.15 帯とN.16 帯の境界を定義する生層準Neogloboquadrina acostaensis の初産出を凝灰岩鍵層KT-1 の直上に認めた.この凝灰岩鍵層の放射年代に基づき,本地域におけるN. acostaensis の初産出年代を10.6 Ma と見積もった.これまでに報告されている深海掘削のデータから判断すると,この生層準は少なくとも中緯度地域では同時性を示し,年代対比に有用であると考えられる. 仙台平野南西部に露出する中部中新統?鮮新統の年代データ:奥羽脊梁山地の隆起と関連して 藤原 治・柳沢幸夫・入月俊明・島本昌憲・ 仙台平野南西部の3 つの地質セクションから得られた中部中新統‐鮮新統の年代層序データを報告する.ここで報告する27 個のFT 年代測定値と浮遊性有孔虫化石および珪藻化石の分析結果は,調査地域周辺のテクトニックな変動の復元に貢献する.名取川下流の河床に露出する旗立層は地質年代として,ほぼ13 Ma から11.5 Ma に相当する.綱木層はほぼ10 Ma から8.3 Ma の期間に堆積した地層であり,梨野層下部は6.4 Ma 頃に堆積した.年代と層相のデータを総合すると,この中部中新統‐鮮新統には4 つの比較的大きな不整合が認められる.それらは9 Ma 頃,6.4Ma 頃,最後期中新世,および3.5Ma 頃である.最も古い不整合は本研究で新たに見出された.これらの不整合の形成時期は,Nakajima et al.(2006)が復元した奥羽脊梁山地の段階的な隆起の歴史と良く対応する.本研究で示したデータは,東北 本州弧の隆起時期のより詳しい推定を可能にする. |