要旨集
地質調査研究報告
Vol.56 No.11/12 2005


常磐地域及びその周辺の第三系の地質と年代層序

須藤 斎・柳沢幸夫・小笠原憲四郎

 常磐地域いわき平地区に分布する第三系の岩相層序と珪藻化石層序を検討した.また,さまざまな化石及 び放射年代に基づき,常磐地域及びその周辺の第三系の年代層序と古環境変遷を総括した.常磐地域及びそ の周辺の第三系は下位より,最上部始新統‐最下部漸新統の白水層群,下部中新統の湯長谷・白土・高久層 群,中部‐上部中新統の多賀層群及び鮮新統の仙台層群からなり,各層群は不整合で画される.従来,湯長 谷層群「平層」の 1 部層とされた「上矢田砂岩層」は特に部層として区分する必要はないことがわかった.湯 長谷層群の水野谷層と本谷層は,前期中新世の珪藻化石帯 NPD 2B に,白土層群の南白土層と高久層群の下 高久層は珪藻化石帯 NPD 3A の上部に対比されることが明らかになった.また,白水層群の石城層の下部に 認められる動植物群集の冷涼化は,南極大陸に最初に氷床が成立し世界的に冷涼化した始新世/漸新世境界の Oi-1 イベントに対応する可能性が高いことが判明した.種々の化石記録を総合して新第三紀における常磐地域の 古水深変化が明瞭に復元できた.前期中新世の古気候変遷については,20 Ma 頃に亜熱帯,19 〜 18 Ma 頃に暖温 帯‐中間温帯,17.5 Ma に熱帯‐亜熱帯,そして 16.4 Maに冷温化したことが明確になった.


新潟県糸魚川市海川周辺地域に分布する鮮新統産軟体動物化石群集と古環境

遠藤満久・天野和孝・柳沢幸夫

 新潟県糸魚川市海川周辺の海成堆積物は,鮮新統の川詰層と名立層よりなる.名立層の下部は珪藻化石層 序のNPD 7Bb 帯に,上部はNPD 8 帯及びNPD 9 帯に対比される.両層の軟体動物化石群集中には,上部漸 深海帯‐下部浅海帯の Conchocele-Solemya 群集,Acila-Lucinoma 群集,Conchocele 群集,Portlandia 群 集及び Macoma-Axinopsida 群集と,下部浅海帯の Acila 群集及び Ophiodermella-Turritella 群集の計7 群集が 認識される.以上の群集特性の解析結果から,海川周辺域は鮮新世を通して,上部漸深海帯‐下部浅海帯で あったことがわかる.