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要旨集 地質調査研究報告 Vol.56 No.9/10 2005
物理定数からみた飛騨花崗岩類 金谷 弘・大熊茂雄
本研究は日本列島に分布する花崗岩類を対象にそれらが持つ物理定数, すなわち密度・孔隙率・磁化率・自
然残留磁化そしてQn比(Königsberger ratio)などを系統的に測定, 集約し, これら花崗岩類が共通して持つ
性質や, 各地域差, それぞれの形成年代がもつ特有の性質を明確にし, 地質構造の解明や, 公害, 環境問題, 災
害予知など各方面に必要な基礎資料を提供することを目標にしている.
東北日本,グリーンタフ帯の後期新生代深成岩類における酸素同位体比からの束縛条件 石原舜三・松久幸敬
東北日本,グリーンタフ帯の後期新生代深成岩類の64 試料の酸素同位体比(δ18OSMOW)を全岩法で求めた.深成岩 類はフォッサマグナ南部で大規模に露出し,新鮮な岩石が得やすい.ここでは低カリウム系列の丹沢トナル岩類が 極めて低い値,平均値で5.4‰を示す.低いδ18O 値はソレアイト火山岩類で一般的である.酸化的な苦鉄質火成岩 類がトナル岩類の出発物質と考えられる.しかし同じく低カリウム系列に属する甲府岩体の芦川型は平均7.4‰,新 島の場合は6.7‰であり,それぞれが固有の出発物質を持つことを示す.甲府岩体で一般的な磁鉄鉱系の花崗閃緑岩 類は平均して7.4‰であるのに対し,同じ岩体のチタン鉄鉱系徳和花崗閃緑岩類は9.4‰,御岳型黒雲母花崗岩は11.2 ‰を示し,共に高い値を持つ.その原因は火成岩起源マグマに18O に富む堆積岩類の混入があったためである.北 部フォッサマグナ以北の後期新生代深成岩類は露出規模が小さい.低いδ18O 値がしばしば認められ,固結時に地表 水の混入が推察される.その原因は岩体頂部が露出していること及び地形的に高所にあることに求められる.
日本海東部の海底堆積物中の微量セレンの地球化学的研究 寺島 滋・今井 登・池原 研・片山 肇・ 岡井貴司・御子柴(氏家)真澄・太田充恒 海底堆積物中セレン (Se)の地球化学的挙動を解明するため, 日本海東部で採取した表層試料と柱状試料を 分割して得た合計215試料中のSeを連続水素化物生成-原子吸光法で分析した.表層試料中Se濃度の平均値は, 0.60±0.45 ppm (n=81)で, 粗粒堆積物よりも細粒堆積物で高く, 概括的には採泥点の水深の増加に伴って 高濃度になり,有機炭素 (Org.C), 全硫黄(T.S)濃度との間に強い正相関がある.Seは, 亜セレン酸塩態, セ レン酸塩態, 元素態, 硫化鉄態, 有機物態等の形態で存在するが, 表層試料では元素態と有機物態が卓越し, 柱 状試料では有機物態の割合が多いと考えられた.今回分析した試料に関しては, 人為的汚染によるSe 濃度の 増加はないと考えられた.柱状試料中Se濃度の平均値は1.88±2.19 ppm(n=134)で表層試料よりも約3倍高 いが, これは日本海が還元的環境下にあった時代の堆積物に高濃度のSe(最高11.93 ppm)が含有されるため である.日本海深部の柱状試料中Se,Org.C,T.S等の濃度は, 海洋の酸化-還元環境, 外洋水の流入の有無, 気候変化に伴う生物生産量やガス状Se化合物発生量の増減等の影響で変動する.柱状試料中のSe濃度は,Org.Cや T.S濃度と同様に古堆積環境を解明するための指標として有用であろう.
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