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要旨集 地質調査研究報告 Vol.56 No.5/6 2005
岐阜県平岩ほたる石鉱床の地質と日本のほたる石鉱床区における重要性 石原舜三
日本のほたる石鉱床はチタン鉄鉱系火成岩類から構成されるスズ- タングステン- 銅鉱床生成区に産出す る.鉱床は主に鉱脈型と接触交代型,ごく一部で角礫型である.珪長質なチタン鉄鉱系の火山岩,斑岩類に 関連するほたる石が鉱石量の77% を占め,ほたる石は主に浅成の貫入岩関連の低温熱水性環境で生成した. 平岩鉱床は東北東系広域裂か群の再活動とそれへの花崗斑岩マグマの突上げに伴う裂かの開口,フッ素に富 むフェルサイト マグマから分離した熱水の注入と固結により大規模鉱床に発展したものと考えられる.
南部北上山地,氷上花崗岩体に胚胎される玉山金鉱床の鉱化年代とその成因に関する考察 村上浩康・石原舜三
玉山金鉱床はチタン鉄鉱系の氷上花崗岩体の南西部に胚胎し,白雲母ペグマタイト中に金が濃集するとい う,北上山地に分布する他の金鉱床と比較して特異な産状を示す.この鉱床の白雲母の年代測定を実施した ところ,111.7 ± 3.0 Ma が得られた.この年代は,南西方の白亜紀花崗岩類(気仙川岩体)の黒雲母年代と 誤差の範囲で一致しており,ペグマタイト石英中に認められる流体包有物の圧力補正温度(約400 oC)が白 雲母の放射性アルゴン閉鎖温度(約350 oC)を上回っていることなどから,白亜紀花崗岩類の活動による若 返りの値と考えられる.含金ペグマタイトの石英のδ18O値 (δ18OSMOW=10.0‰) は一般のチタン鉄鉱系ペグ マタイト中の石英 (>10.0 ‰) と似た値を示し,この鉱床はチタン鉄鉱系の氷上花崗岩マグマの固結最末期に 生じたものである.石英‐白雲母ペアを用いた酸素同位体比平衡温度から,ペグマタイトの生成温度は865 oC 以下と推定され,形成後に氷上花崗岩体が受けた数次に亘る熱履歴を経験して現在に至ったものと考えられる.
宮崎地域の重力異常について 名和一成・村田泰章・駒澤正夫・森尻理恵・広島俊男・ 牧野雅彦・村上文敏・岸本清行・大熊茂雄・志知龍一 産総研地質調査総合センターでは,20 万分の1 重力図の系統的整備を行っている.新たに測定したものを 加えた陸域の重力データと,地質調査所GH83-1航海で測定した海域の重力データを統一的に処理・編集して, 「宮崎地域重力図(ブーゲー異常)」を出版した.この重力図には,宮崎沖堆積盆地や九州外帯の屈曲構造に 対応する長波長の異常や,人吉・小林・都城盆地に対応する短波長の異常が見られる.また,短波長を抽出 したフィルター図では,宮崎平野下の負異常や,過去の研究でも指摘された宮崎平野北部と西部の高重力異 常が確認できる.一方,九州山地にも高重力異常が分布するが,重力補正に用いた仮定密度と実際の山体の 密度との差から生じる見かけのものである.このため,基盤構造推定に利用する際には,地形の影響を考慮 する必要がある.
岩石標準試料JG-2(花崗岩)から溶出するウラン核種(238U,234U)の挙動に関する予察的検討 金井 豊
核種の溶解・吸着・沈殿現象を化学反応的に把握し,溶出に関与する化学因子を明らかにするため, JG-2 (花 崗岩) を用いたバッチ式の溶出実験を予察的に行った.その結果,花崗岩からのウランの溶出反応には化学環 境として酸化還元電位も関与するのであろうが,pHが大きく関与していることが判明した.また,温泉水に おけるウラン濃度と泉質に関連して,塩化物イオンよりは硫酸イオンの方が溶出しやすいことが溶出実験に よって推定された.更に,岩石からのウランの溶出実験を今後行う場合における反応系や反応液の条件設定 など幾つかの課題について検討した.ウラン同位体核種については,フィールドで観測される1 より大きな U-234/U-238 放射能比を実験でも示し,モデルを用いて放射能比に影響するパラメータについて検討した.
中部北太平洋のセジメント・トラップ試料にみられる放散虫沈降群集の季節変化と緯度変化
中戸章友・本山 功・川幡穂高
北太平洋中緯度域の3つの海洋気候区,亜北極域,漸移帯域,亜熱帯域において同時に実施された3 地点の セジメント・トラップのPolycystina目放散虫フラックスについて検討した.亜北極域では夏期に生産性が高 まる.漸移帯域と亜熱帯域では表層水温の季節変化と生産性の間に特定の関連性は見られなかった. Polycystinaの年間フラックスを海洋気候区間で比較すると,亜北極域で最も高く,亜熱帯よりも漸移帯の方 で低い値を示す.この大小の順序は,全粒子,オパール,有機物のフラックスの地点間の大小関係と一致し ていない.個々の水域内においては科レベルの群集組成に顕著な季節変化はみられず,年間を通じてむしろ 安定している.各々の気候区内では季節変化に乏しいということは,放散虫がおもに季節的水温変化の影響 を受けない水深に生息していることによると考えられる.水域間では年間の科レベルの群集組成に顕著な違 いが認められた.亜北極域ではPlagiacanthidae科が卓越し,漸移帯域ではActinommidae科の割合が多い.亜 熱帯域では特に優勢になる科はみられない.このような海洋気候区間での群集の顕著な違いはおそらく水温 の違いが一義的に効いているためであろう.ただし,放散虫群集組成がおもに反映しているのは,季節温度 躍層以深の水塊の違いであって,季節温度躍層以浅の表層水の季節変動ではないものと考えられる.
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