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要旨集 地質調査研究報告 Vol.56 No.3/4 2005
近畿地方田上花崗岩の化学的特性 石原舜三・中野聰志・寺島 滋
滋賀県南部,田上花崗岩体の代表的試料6 個について主化学成分と微量成分とを明らかにし,特に希土類 元素と放射性元素の持つ意味について考察した.田上花崗岩は珪長質( 73.3 〜 76.7% SiO2;8.0 〜 8.9% Na2O+K2O) であり,Rb/Sr 比は高くマグマ分化が進んでいる.アルミナ過剰度は1.05 前後であり,I タイプ に入る.粗粒な中心相はF, Li などに富み,細粒周縁相はこれら揮発性成分に乏しい.田上花崗岩は全体的に 希土類元素と放射性元素に富み,特に重希土類元素に卓越し,フラットな希土類パターンを示す.その原因 は,原岩が還元的な珪長質物質であり,かつマグマ分化作用が進んだことに求められる.雲母粘土化変質作 用の熱源は花崗岩中の放射壊変熱であった可能性が指摘された.
つくば市で2001年2月から2002年6月に採取したエアロゾル粒子の非水溶性成分の季節変化 太田充恒・寺島 滋・金井 豊・上岡 晃・今井 登・松久幸敬・ 清水 洋・高橋嘉夫・甲斐憲次・林 政彦・張 仁健 2001 年2 月から2002 年6 月にかけて,つくば市で粒径別に採取されたエアロゾル試料の非水溶性成分の化 学組成を測定し,粒径別に見た化学組成の特徴やその季節変化について考察を行った.粒径別に見た化学組 成の特徴について調べたところ,大気中エアロゾル濃度は>11.0 μm, 3.3 〜 4.7 μm, 0.43 〜 0.65 μm にピー クを持つパターンを示した.ダストイベント(黄砂の飛来)が発生すると,2.1 〜 7.0 μm の粗粒粒子に著しい濃 度増加が認められた.Al2O3をはじめとする多くの元素の大気中濃度は,この大気中エアロゾルの濃度変化と よく似たパターンを示し,粗粒粒子は主として鉱物質エアロゾルから構成されることを示した.ただし,Cu, Pb などの一部の元素は,Al2O3 とは明らかに異なる濃度変化を示し,人為起源の炭素質エアロゾル由来と考 えられた.次にエアロゾル粒子の季節変動について調べたところ,通常時は細粒粒子を構成する炭素質エア ロゾルの寄与が粗粒粒子を構成する鉱物質エアロゾルの寄与よりも大きいが,春期ではその関係が逆転する ことが明らかとなった.また,ダストイベントが発生した時は,通常時の10 倍にも達する鉱物質エアロゾル の寄与が認められ,それに応じてAl2O3などのほぼ全ての元素に対して非常に高い大気中元素濃度が確認され た.一方,細粒エアロゾル粒子の大気中濃度変化はダストイベントとは対応しないものの,Al2O3の濃度変化 と良い対応を示した.しかし細粒粒子中のCu, Pbは春期に非常に高い濃度を示すものの,Al2O3とは異なる季 節変化を示した.したがって,細粒粒子には局地的に巻き上げられたダスト粒子と人為起源物質の両方の寄 与が認められる事が明らかとなった.
中部地方,飛騨帯花崗岩類の起源物質の多様性 石原舜三
飛騨帯の古期花崗岩類はチタン鉄鉱系に属し,その全岩酸素同位体比(δ18OSMOW)は高く(平均10.5 ‰), 中生代前期花崗岩類は磁鉄鉱系に属し,低いδ18O値(平均7.9 ‰) を持つ.δ18O 値は帯磁率やFe2O3/FeO 比と 逆相関する点で,日本の白亜紀‐古第三紀花崗岩類と共通の性質を示す.古期花崗岩類は大きいアルミナ飽 和度を持ち,その起源物質には,頁岩類の関与が考察される.一方,古期花崗岩類の多くは高いSr/Y比を示 し,チタン鉄鉱系であるが,アダカイト質である点で特異であり,これは環太平洋地域における最初の発見 である.アダカイト質岩の混在は中生代前期花崗岩類にも認められ,特に地殻物質の混入が考えられる早月 川,打保,八尾,庄川などの内側深成岩体,及び能登半島の諸岩体で顕著である.これらの事実はアダカイ トの成因の多様性を物語っている.
長野県佐久盆地千曲川河床の下部更新統大杭層産長鼻類足跡化石 長森英明・吉川博章・畠山幸司・寺尾真純・田辺智隆
長野県東御(とうみ)市の千曲川(ちくまがわ)河床に分布する下部更新統小諸層群大杭層より長鼻類の足跡化石を確認した.足跡 化石の産出層準は,約1.3 Ma のフィッション・トラック年代を持つ羽毛山軽石の約2m上位である.印跡動 物は,同層準からStegodon aurorae (Matsumoto)の体化石が産出していることと,日本の長鼻類生層序から Stegodon aurorae と推定される.足跡化石を含む層準の堆積環境は,河川の氾濫原と推定される.
四国三波川帯・瀬場地域の研究史: 青矢睦月
四国三波川帯・瀬場地域には,変斑れい岩の固体貫入に伴う接触変成作用によって生じたとされるエクロジャ イト質塩基性片岩が報告されていた.その後の調査研究により,エクロジャイト質塩基性片岩(またはその構成 鉱物であるオンファス輝石)が変斑れい岩から離れた地域にも多産すること,及び多重変形とオンファス輝石成 長時期の関係が明らかにされた結果,瀬場地域のエクロジャイト質塩基性片岩はすべて,単一の広域変成作用に よって生じたものと考えられるようになった.この研究史から,高度変成地域の野外調査では:1)変成履歴の 鍵を握る鉱物の存否,特にその地質図スケールでの分布範囲の特定には細心の注意を払わなくてはならないこ と;2)岩石学に加えて,構造地質学の視点,特に多段階変形の正確な分類が必要となることが示唆される.
米国ヤッカマウンテン高レベル放射性廃棄物最終処分場における安全規制について 高木哲一
米国では,2002 年にネバダ州ヤッカマウンテン地域への高レベル放射性廃棄物最終処分場の立地が正式に 承認され,2005 年に処分場建設のための許可申請書が,10 CFR Part 63 に従い,米国エネルギー省から米 国原子力規制委員会に提出される予定である.米国原子力規制委員会は,10 CFR Part 2の手順と日程に従っ て許可申請書の厳正な審査を実施する.許可申請書及び修正された許可申請書の内容が,最終処分場の永久 閉鎖前・後において国民の健康と安全を十分に保証するものであると判断された場合,原子力規制委員会は 建設認可及び処分場の操業許可証の発行を行う.
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