要旨集
地質調査研究報告
Vol.55 No.7/8 2004


埼玉県草加市柿木地区で掘削された沖積層ボーリングコア(GS-SK-1)の堆積相・堆積物物性と放射性炭素年代

石原与四郎・木村克己・田辺 晋・中島 礼・
宮地良典・堀 和明・稲崎富士・八戸昭一

 埼玉県の中川低地地下には,最終氷期に形成された開析谷を埋積する沖積層が分布する.本報告では,中川低地中央部に掘削された GS-SK-1 コア(GS-SK-1A,GS-SK-1N,GS-SK-1T)から得られた堆積相,放射性炭素年代,堆積物物性をもとに,中川低地における沖積層の 層序,堆積環境を明らかにした.GS-SK-1Aに認められる沖積層は次のような河川‐浅海性堆積物であることがわかった.すなわち, 下位から(1) 河川チャネル充填堆積物である礫‐砂礫層,(2) 氾濫原‐塩水湿地堆積物である砂泥互層,(3) 泥質干潟堆積物である 貝化石を含む塊状泥層,(5) 内湾(プロデルタ‐デルタフロント)堆積物である巣穴状生痕やリップル砂層を含む塊状泥層,(6) 河川 チャネル充填堆積物‐氾濫原堆積物である砂泥互層から構成される.19点の放射性炭素年代(48,350〜1,270 yrBP)はこれらの開析谷 充填堆積物が,1 回の海進・海退に伴って形成されたことを示唆する.そして堆積物物性(N値,泥分含有率,湿潤・乾燥密度,帯磁率, 含水比,L*a*b*による色調)は堆積相やその境界に関連して変化することが明らかになった.


東京都江戸川区小松川地区で掘削された沖積層ボーリングコア(GS-KM-1)の堆積相・堆積物物性と放射性炭素年代

宮地良典・木村克己・石原与四郎・田辺 晋・
中島 礼・堀 和明・中山俊雄・斎藤文紀

 東京低地に位置する東京都江戸川区小松川地区で掘削した沖積層ボーリングコア(GS-KM-1)について,堆積相,AMS 放射性炭素年代, 堆積物物性を解析し,堆積環境,堆積相と堆積物物性との関係,層序について検討を行った.本コアは,Unit 1 からUnit 9 の9つの 層相ユニットに区分され,そのうち,深度67.3 〜 65.0mのUnit 1 は下総層群相当で,その上位に沖積層にあたるUnit 2 からUnit 9 が 重なる.沖積層は堆積相・貝化石相の特徴に基づいて,下位から河川チャネル充填堆積物(Unit 2 とUnit 3),塩水湿地‐泥質干潟と そこに形成された潮汐チャネルや氾濫原の堆積物(Unit 4とUnit 5),砂質干潟‐砂州堆積物(Unit 6),プロデルタからデルタフロントの 堆積物(Unit 7 とUnit 8),デルタプレーンの河川チャネル‐氾濫原堆積物(Unit 9)の5 つの堆積相にまとめられる.21 試料の放射性 炭素年代値は,沖積層が11,000 yrBP 以前から2,000 yrBP まで,一つの海進・海退のサイクルを示し整合的に積み重なったことを 示している.層相区分と,泥分含有率・湿潤かさ密度・乾燥かさ密度・帯磁率・含水比及びN値等の堆積物物性の特徴とがよく対応して いることがわかった.


東京低地と荒川低地から得られた3本のボーリングコアの堆積相と放射性炭素年代: DKコア(江東区新砂),TNコア(足立区舎人公園),HAコア(東綾瀬公園)

石原与四郎・木村克己・中島 礼・宮地良典・田辺 晋・中山俊雄・斎藤文紀

 東京低地及び荒川低地の埋没谷を充填する更新世末期‐完新世の沖積層は,下部が河川‐汽水性の七号地層,上部が海成‐河川成の 有楽町層からなる.これらの低地に掘削された3 つのオールコアについて,堆積相,放射性炭素年代について検討した.その結果次の ようなことが明らかになった.すなわち,(1) 堆積相は下位から,河川チャネルを充填する礫層,蛇行河川もしくは自然堤防/ 氾濫原 堆積物である上方細粒化する砂層及び砂泥互層,プロデルタと考えられる原地性の貝化石を伴う均質な泥層及びデルタフロントと 考えられるリップル砂層を含むリズミカルな砂泥細互層,デルタプレーンの砂泥互層と重なる;(2) 3 つのコアから得られた42 個の AMS 年代(DK コア:19 層準,TN コア:8層準,HAコア:15層準)はそれぞれ12,000〜1,000 yrBPまでの連続的な堆積曲線を描く; (3) 堆積相から,これらの堆積物が下位から河川システム,エスチャリーシステム,デルタシステムと累重することがわかった.


東京都江戸川区小松川と埼玉県草加市柿木において掘削した沖積層ボーリングコアから産出した貝化石群集

中島 礼・木村克己・宮地良典・石原与四郎・田辺 晋

 東京低地の小松川と中川低地の草加において掘削した2 本の沖積層オールコアボーリング(小松川:GSKM-1A;草加:GS-SK-1)中に みられる貝化石群集の検討を行った.小松川における沖積層から,6 種の巻貝,15 種の二枚貝,3 種のツノガイ類が同定された.また, 草加の沖積層からは,12 種の巻貝,23 種の二枚貝,1種のツノガイ類が同定された.貝化石の群集構成や産状に基づき,両コアの 沖積層は下位より,汽水域の潮間‐潮下帯泥底,海域の潮下帯砂底,海域の潮下帯泥底(内湾),海域の潮下帯砂泥底へと堆積環境が 変遷し,この変遷は汽水域から海域,そして汽水域への1回の海進・海退サイクルを示す.両コアともに沖積層中部に厚い泥層が特徴的に みられるが,小松川コアの泥層は海成であり,一方草加コアの泥層は汽水成という違いが明らかとなった.