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要旨集 地質調査研究報告 Vol.53 No.11/12 2002
海底堆積物中の白金とパラジウムの存在量とその地球化学的挙動 寺島 滋・三田直樹・中尾征三・石原舜三
日本列島周辺海域(陸源性堆積物),マリアナ海嶺(半遠洋性堆積物),太平洋中央部(遠洋性堆積物)で 採取された海底堆積物284試料について,溶媒抽出分離―黒鉛炉原子吸光法によりppbレベルの微量の 白金(Pt)とパラジウム(Pd)の正確な存在量を定量し,地球化学的挙動を考察した.比較のため, 湖沼堆積物及び堆積岩類も分析した.遠洋性堆積物は,陸源性堆積物に比べ平均値で約3倍のPt, Pdを 含有しており,半遠洋性堆積物は中間的な含有量であった.多くの試料は,PdよりもPtに富む特徴が 認められたが,赤道付近の生物生産が活発な海域にはPdに富む珪質堆積物が分布しており, 生物濃縮の可能性を示唆している.試料を採取した地点の水深とPt, Pdの含有量の間には一定の傾向は 存在しないが,堆積速度との間には負の関係があり,堆積速度の遅い海域で高濃度を示す. 深海底堆積物におけるPt,Pdの供給源として宇宙物質の影響が指摘されているが,Mn/Pt, Cu/Pt等の 存在比は宇宙物質のそれよりも地殻物質に類似している.地殻物質の風化・変質により溶出したPt, Pdが, 主として難溶性の酸化物態あるいは還元されて元素態となり,鉄やマンガン等の遷移金属とともに 海底堆積物に移行すると考えた.堆積層内におけるPt, Pd等の鉛直分布の特徴から,初期続成作用に伴う 移動と濃集の影響は,極く一部を除いて無視できると判断された.これまでに報告されたPt, Pdの 地殻存在量(Pt, Pdとも0.4-10 ppb)にはかなりのばらつきが認められるが,本研究で陸源性堆積物, 湖底堆積物,堆積岩等合計281試料の分析値から算出した地殻存在量はPt 2.7 ppb,Pd 1.9 ppbである
関東平野の土壌中微量有害元素(As, Sb, Pb, Cr, Mo, Bi, Cd, Tl)の地球化学的研究
−土壌地球化学図の基礎研究(第3報)− 寺島 滋・太田充恒・今井 登・岡井貴司・御子柴真澄・谷口政碩
土壌地球化学図の作成に関する予察的研究の一環として,関東各地から採取した火山灰質土壌と 沖積層土壌中の微量有害元素(As, Sb, Pb, Cr, Bi, Cd, Tl)を分析し,地球化学的挙動を研究した. 柱状試料における元素濃度の鉛直分布を支配する要因としては,土壌母材の起源,堆積環境,粒度組成, 生物濃集,続成・風化作用の影響等が重要である.Mo, Cr以外の元素は最表層部で高濃度を示す場合が 多いが,これは人為的な汚染ではなく,主として生物濃集と考えられた.かって海水の影響下にあった 土壌はAs, Sbに富む傾向があり,海水中元素の吸着を示唆する.関東平野の火山灰質土壌の母材は, 北部では主として赤城山,男体山起源の安山岩質噴出物,南部では富士山起源の玄武岩質噴出物である. 土壌中の多くの重金属は,母材の起源を反映して北部よりも南部で高いが,As, Pb, Bi, Tlは概括的には 南部よりも北部で高濃度を示す.沖積層土壌には,基盤岩由来の砕屑物が混入する等の理由で系統的な 南北変化は存在しない.微量有害元素のほとんどは,テフラ層が風化しても低濃度にならず, As, Sb, Pb等では最大20%程度の濃度増加が推察された.地殻と土壌中の元素濃度を比較した結果, As, Sb, Pb, Biは土壌中に顕著に濃集される傾向があり,その原因としては生物濃集,海水の影響, 風化・続成作用の影響,広域風成塵の混入等が考えられた.
中国地方および九州地方の新生代貝類化石標本 栗原行人・鵜飼宏明・中島 礼・岡本和夫・松江千佐世・柳沢幸夫
1994年,著者の一人岡本は広島大学を退官するにあたり,在職中に収集・研究した中国および 九州地方(一部北陸地方を含む)の新生代貝類化石標本を,旧地質調査所の地質標本館に寄贈した. これらの貝類化石標本には,新種創設の基準となったタイプ標本(例えば,Acesta (Plicacesta) watanabei Nakano and Okamotoのホロタイプ)や現在ではほとんど採取不可能となってしまった産地の 保存良好な標本(例えば,島根県邇摩郡仁摩町の川合層産標本)が含まれており,本邦の新生代貝類 化石研究の上で非常に貴重な標本である.今回,地質標本館に寄贈された標本の整理と登録が終了したので, それらの標本のリストと,産地図および一部の標本の図版を添えて研究資料として公表する.
鏡下における実用的な斜長石双晶決定法 高橋裕平
天然の岩石には多様な斜長石双晶形式が出現するが,その意味の理解には最近の地質学的な解析の結果を 加味した再検討が必要である.そのためには,迅速で信頼性の高い斜長石双晶決定法が要求される. そこで小論ではその方法を整理した.双晶決定には自在回転台を利用する.双晶は接合面と対称軸の 位置関係から定義できるので,まず接合面を劈開あるいは対角位での光学的な伸長性から決定する. 次に垂直双晶か平行双晶か複合双晶かを,対称軸と接合面の関係に基づく光学的な特性から決定する. これらの結果を組み合わせることで,天然に産するほとんどの斜長石双晶形式を同定できる.
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