要旨集
地質調査研究報告
Vol.53 No.2/3 2002


地質調査総合センターによる「遠隔離島小規模地熱の探査に関する 研究協力」の総括

村岡洋文 ・ 内田利弘

5年計画のインドネシア−日本二国間研究協力プロジェクト「遠隔離島 小規模地熱の探査に関する研究協力」は1997年4月にスタートし, 2002年3月に終了する予定である.本報は本特集号への導入部として, 地質調査総合センターにより実施されたこのプロジェクトの総括を行う. 本報では先ず,このプロジェクトの背景として,目標,研究協力体制, 研究スケジュール,研究分担等について,レビューする.次いで, 地質調査総合センターの年次活動の成果の概要について述べる.


インドネシアの地方電化計画を支援する地熱開発

Sjafra DWIPA

インドネシアは豊富な地熱資源に恵まれている.しかしながら,2001年 までに開発済の地熱エネルギーは 787 メガワットに留まっている. インドネシアの地熱発電量をさらに増加させるには,コスト競争力の 弱さなどの障害を克服しなければならない.このことから,政府が 地熱蒸気開発リスクを分担し,公正な競争および民間業者の効果的な 参画を導入することが,新たに決定された.地方自治の支援策として, 政府は離島地域の開発を促進するインフラストラクチャ拡張のための 安定的電力供給および地方電化を最優先しており,30,934の村落が 電化された.我々は地熱開発における実り多い協力を期待しており, 発展の勢いを保つため投資家の参入を歓迎する.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


火山活動および熱水化学組成からみたインドネシア・フローレス島の 地熱有望地域

Asnawir NASUTION ・ 村岡洋文 ・ Mawardi RANI ・ 高島 勲 ・ 高橋正明 ・
赤迫秀雄 ・ 松田鉱二 ・ Muhammad BADRUDIN

フローレス火山弧の溶岩類は玄武岩からデイサイトの組成範囲をもつが, とくに安山岩に卓越し,ソレイアイト岩系ではピジョン輝岩,カンラン 石を,カルクアルカリ岩系では角閃石や黒雲母を斑晶として含む. 化学的には,広い範囲のSiO2 (51-67 wt.%) および Al2O3 (14-20 wt.%) 含量と低い TiO2 (<1 wt.%) 含量を示し,比較的高い Rb, Sr および Ba 含量を示す.これらKグループ元素はベニオフ帯の深度の増大に つれて増加する.ソレイアイトからカルクアルカリ溶岩にかけての ストロンチウム同位体比は0.7042−0.7045であり,これも島弧を横断 して沈み込むスラブの深度に比例していると推定される.フローレス島の 地熱有望地域は若い安山岩や玄武岩の火山地域に位置し,標高500− 1000 m にあって,火山活動後の断裂と断層や,カルデラ構造に伴う. 湧出熱水は広い化学的タイプを示し,硫酸塩型,塩素型,重炭酸塩型 にわけられる.硫酸塩型は主に噴気を伴って,高い火山地域(標高700 −1100 m ) に位置し,表層における H2S の酸化を示す (Ulumbu, Mataloko, Nage および Sokoria).重炭酸塩型熱水は Langageda や Mataloko 地熱有望地域でそれぞれ 700-1800 m と 200 m の深度まで 掘削されているが,200から240ºCの地下温度を示し,その高い 硫酸塩濃度が蒸気卓越型に伴うことを示している.同様の型は Sokoria 地域にも期待される.他方,高塩素型の地熱有望地域はおそらく熱水 卓越型か混在型を示すのであろう (Wai Sano, Wai Pesi, Jopu, Lesugolo および Oka).


地熱応用のための衛星リモートセンシングデータとその解釈: インドネシア,中央フローレス,ンガタ地域におけるケーススタディー

浦井 稔 ・ 村岡洋文 ・ Asnawir NASUTION

ンガタ地域において地熱資源探査を目的として,JERS-1の SAR, OPS およびASTER VNIR, TIRを用いたリモートセンシング調査を実施した. その結果,多数の直径5 km 以下の火山円錐丘がバジャワ付近の SAR 画像に見られた.その内のいくつかは南北方向に並んでいる.SAR は 全天候性の観測能力があるため,光学センサーによって雲の無い画像を 撮影することが難しい当該地域においても火山の特徴を詳細に捉える ことができた.一方,太陽高度が高かったため,OPS 画像では SAR 画像に比較して火山の特徴を捉えることは難しかった.近年打ち上げ られた新しい高空間分解能センサであるASTER TIR によってナゲ地熱 地域の熱異常が捉えられた.これらの結果は地熱応用における衛星 リモートセンシング調査の有用性と限界を実証するものである.


インドネシア,フローレス島中部,バジャワ地熱地帯のテクトニクス, 火山および層序に関する地質学的研究

村岡洋文 ・ Asnawir NASUTION ・ 浦井 稔 ・ 高橋正明 ・高島 勲 ・ Janes SIMANJUNTAK ・ Herry SUNDHORO ・ Dany ASWIN ・ Fredy NANLOHY ・ Kastiman SITORUS ・ 高橋 洋 ・ 小関武宏

遠隔離島小規模地熱の探査に関する研究協力(ESSEIプロジェクト)の 一環として,インドネシア,フローレス島中部のバジャワ地熱地域と その周辺地域において,1998年以来,広域地質の研究が実施されてきた. この地域では4Ma以降,中央部と南海岸部において火山活動が起こった. この両地域はフローレス島からアロール島にかけて特徴的なエシェロン 状火山島構造の要素を構成している.これら両地域では,過去250万年 の間に,約800 mの隆起が起こった.中央部においては約2.5Maに ウェラスカルデラが形成され,その後カルデラ火山活動の後は,ほとんど, 火山活動が終息している.何海岸部では,4Ma以降,現在に至るまで, 火山活動が続いている.とくに顕著な出来事はバジャワリフトゾーンの 出現であり,これは東側の北進するオーストラリア付加体ブロックと 西側の対照的に静止したスンダタンドブロックとの間に生じた南北方向 の左横ずれ剪断応力に関係づけられる.バジャワリフトゾーンはおそらく 0.8-0.2Ma頃の,NNW-SSE方向に伸びた火山体の形成によって始まった. 次いで,この稜線付近より,東側の火山体の崩壊が起こった.その後, この崩落域はバジャワシンダーコーン群を生成し,これはNNW-SSE方向 のリフトゾーンに沿って20kmにわたって配列する60個以上のシンダ- コーンから成る.調査地域の大部分の火山岩類は玄武岩質,ソレイアイト 岩系でああるが,このバジャワリフトゾーンの噴出岩は南北に伸びた 火山体とバジャワシンダーコーン群とを含めて,安山岩質,カルクアルカリ 岩系であり,かつ組成的に非常に均質な特徴をもつ.このことは, バジャワシンダーコーン群の多数のコーン配列の地下で岩脈群マグマが 相互に連結していることを示唆する.調査地域の3つの蒸気湧出域と いくつかの高温温泉湧出域は,熱源としてのバジャワリフトゾーンマグマ 系に密接に伴って分布している.


インドネシア・フローレス島中部バジャワ地熱地域の火山岩及び 変質岩の熱ルミネッセンス年代

高島 勲 ・ Asnawir NASUTION ・ 村岡洋文

インドネシア・フローレス島のバジャワ地熱地域周辺の火山岩と変質岩 の熱ルミネッセンス年代測定を行った.火山岩は,中心部の新期成層 火山岩群を対象に8個測定し,最も新しいイネリエ火山噴出物が32ka, それ以外の小成層火山が72-160kaとなった.この年代は,本地域に ついての初めての報告であり,地熱開発の点では十分熱源になり得る ものである.変質岩についても8個の測定を行い,マタロコ変質帯では, 33ka,ナゲ変質帯では54kaより若く,ともに地下に貯留層が期待される.


インドネシア・フローレス島中部バジャワ地熱地域の火山岩類の 地球化学的研究

村岡洋文 ・ Asnawir NASUTION ・ 浦井 稔 ・ 高橋正明 ・ 高島 勲

インドネシア・フローレス島中部バジャワ地熱地域から46個の火山岩類 の多成分分析を行った.このうち26個はバジャワシンダーコーン群と 呼ばれる多数のシンダーコーンを含め,バジャワリフトゾーンレイアイト が多いが,バジャワリフトゾーン火山岩類はカルクアルカリ安山岩で あり,26個の試料を通じて,主成分も微量成分もきわめて均質であることが わかった.バジャワリフトゾーン火山岩類を擬似三成分系図に プロットすると,その分布は相境界に規制されており,約3kbarあるいは 10kmの深度で平衡していたことを示す.この深さはこの地域の海洋性 地殻の底に地塊ことから,リフト方マグマ活動がこのような浅部での マグマ生成を可能にしたものと考えられる.バジャワリフトゾーン火山岩 類のマグマの均質性はマグマ発生域から地表までの短い距離と,途中で 停止することのない岩脈群としての上昇に起因している.


インドネシア共和国フローレス島中央部バジャワ地域の地質, 地球化学及び地質年代:バジャワ陥没地の地質構造と変遷

大竹正巳 ・ 高橋 洋 ・ 小関武宏 ・ 義山弘男

インドネシア共和国フローレス島中央部には,東西13-16km,南北12km 以上のバジャワ陥没地が位置する.鮮新世〜前期更新世にソレイアイト 系列の玄武岩〜安山岩質複成火山体が形成され,その後火山体中央部に おいて陥没が生じバジャワ陥没地が形成された.その陥没は,北−南, 北西−南東,北東−南西方向の断層によって分割された基盤岩ブロック の沈降によって生じたと推定される.陥没地はカルクアルカリ系列の 安山岩質の火山活動により安山岩溶岩・火砕岩に埋積され,引き続き 断裂沿いに多数の火砕丘が形成された.その後,陥没地南西縁において ソレイアイト系列の安山岩質成層火山(イネリエ火山)が成長した.


インドネシア・フローレス島中部イネリカ火山の割れ目を形成した 2001年噴火

村岡洋文 ・ 安川香澄 ・ 浦井 稔 ・ 高橋正明 ・ Asnawir NASUTION ・
高島 勲

インドネシア・フローレス島のイネリカ火山において2001年1月11-16 日に95年間の静穏期を経てマグマ水蒸気噴火が起こった.この噴火と その結果生じた噴火割れ目について記述した.イネリカ火山は北北西− 南南東方向に16kmにわたって伸びるバジャワ噴石丘群の北部を構成して いる.噴火開始以降,火山灰降下は6日間続き,水蒸気放出は2ヶ月間 続いた.特筆すべき点は,この噴火の結果,N16ºW方向に伸びる幅約20m, 長さ約300mの噴火割れ目が形成されたことである.これは地下浅部に 薄い岩脈状マグマが侵入して生じた伸張性割れ目であると推定される.


インドネシア,フローレス島中部バジャワ地域の温泉の 地球化学的性質

高橋正明 ・ 浦井 稔 ・ 安川香澄 ・ 村岡洋文 ・ 松田鉱ニ ・ 赤迫秀雄 ・
小関武宏 ・ 久谷公一 ・ Dadi KUSNADI ・ Bangbang SLAEMAN ・
Asnawir NASUTION

インドネシア東部,ヌサ・テンガラ諸島東部,フローレス島中部の バジャワ地域の地熱性状を評価するため,温泉,湧水,河川水,降水を 採取し,地化学的な分析を行った.
マタロコ,ネゲ−ケリ ティオリブ−ボボ,ソカ,メンゲルーダ及び ゴウ−トゥカペラの5つの有望地熱兆候地帯は,イネリ,イネリカ及び エブロボ火山と30以上の単成火山群の近傍にあり,ンバイ地域は北東部 海岸地帯にある.温泉の温度は,マタロコで90ºC以上,ナゲで75ºC以上, ケリ ティオリブで70ºC以上,ンバイで60ºC以上,その他の地域で40-45ºCである.大部分の温泉は酸性硫酸塩型,ナゲ温泉水のみは 酸性硫酸塩−塩化物塩型の性質を示す.
ナゲ以外の酸性温泉の温泉水中の溶存硫酸塩と塩化物塩の起源は, 硫酸水素を含む相対的に低温の起源のみは,塩化水素や二酸化硫黄を 含む高温火山ガスと酸性変質帯の間隙水である可能性がある.


インドネシア,フローレス島中央部バジャワ地域の地下水の水素・ 酸素同位体組成

高橋正明 ・ 浦井 稔 ・ 安川香澄 ・ 村岡洋文 ・ 松田鉱ニ ・ 赤迫秀雄 ・
小関武宏 ・ 久谷公一 ・ Dedi KUSNADI ・ Bangnang SULASEMAN ・
Terry SRIWANA ・ Asnawir NASUTION

インドネシア東部,フローレス島中部のバジャワ周辺50km以内にある 湧水,河川水及び降水を採取し,その水素・酸素同位体組成を分析した.
 (1)水素−酸素同位体組成図上では,水試料は天水線近くに プロットされ,そのd値の変化は,冬季と夏季の降水の同位体組成の 違いを反映している可能性が考えられる.
(2)同位体標高効果は,水素同位体組成で-0.98‰/100m,酸素同位体 組成で-0.13‰/100mであった.これらの値は他の島で観測される値の 範囲内である.


インドネシア,フローレス島メンゲルーダにおける地熱エネルギーの 直接利用

Herry SUNDHORO ・ Sjafra DWIPA ・ Asnawir NASUTION ・ 高橋 洋 ・ Janes SIMANJUNTAK ・ Arif MUNAMDAR ・ 小関武宏

本地域には北東−南西方向の断層に沿って,少なくとも8箇所の温泉と 弱変質帯からなる地表地熱徴候が存在する.これらを調査した結果から, 本地域の地熱系はアウトフロー型であると考えられる.本論文の目的は, メンゲルーダ有望地域の地熱利用形態として直接利用と間接利用の いずれかが適しているかを指摘することにある.地質学・地球化学・ 地球物理学探査の結果によれば,メンゲルーダの地熱エネルギーに 対しては直接利用が推奨される.地熱エネルギーの直接利用は農産物の 乾燥・加水および観光である.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア,フローレス島中央部イネリカ火山周辺の地熱徴候の 地球化学

Dedi KUSNADI

インドネシア,フローレス島中央部イネリカ火山山頂から,これより 低地のゴウ地域およびさらに低地のメンゲルーダ地域までの,イネリカ 火山から東へ最大12kmにおよぶほぼ直線上の湧水および河川水試料の 地化学分析を実施した.全試料について主成分および微量成分を 分析した.
温泉および噴気の主成分・微量成分および希土類の濃度は,温度とpHに 依存する.すなわち,錯体を形成する配位子の性質,岩石の初期構成鉱物 パターン(溶脱または溶解を受けている),火山地域ではガラスとマグマ 鉱物(希土類の挙動をコントロールする卓越相),岩石の変質過程に おける2次鉱物の分別作用である.また複数のメカニズムが複合している ことは,自然状態で容易に観察できる.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア・フローレス島中部の重力異常

駒澤正夫 ・ 松久保和人 ・ Zulkarnain NASUTION ・ Herry SUNDHORO

インドネシア・フローレス島中部で重力調査がおこなわれ,総測点数は 800点に達した.イネリエ火山,イネリカ火山,マタロコ地熱地帯など 火山や地熱活動の活発な調査域南部は,高重力異常となって基盤の 盛り上がりを示した.基盤構造が盛り上がっている構造は,通常の火山 でも多数観測されている.但し,マタロコ地熱地帯はやや基盤が深く カルデラ状の構造が想定できる.また,イネリエ火山の表層密度は,1.7 g/cm³程度と解析され異常に小さい.山体自体が固結した溶岩の比率が 小さいことが考えられるが,重力の鉛直勾配が局所的に1割程度大きく なっていれば,通常の火山の表層密度である2.2g/cm³程度の結果を 得ることになる.現時点までの経験では,後者のケースは稀である. 調査地中部のウェラスカルデラについては北側だけが確認できる馬蹄形 で,南側のカルデラ壁は不鮮明である.原因としては,後に生じた メンゲルーダより西方に伸びる地溝構造に関連する造構運動により消滅したと 考えられる.


インドネシア,フローレス島ゴウ地域の地熱資源に関する地学・ 地球物理学・地球化学探査の総合結果

Herry SUNDHORO ・ Sjafra DWIPA ・ Asnawir NASUTION ・ 高橋 洋 ・ Janes SIMANJUNTAK ・ Arif MUNANDAR ・ 小関武宏

本論文の目的は,インドネシアのフローレス島ゴウ地域における地熱 エネルギー利用可能性を確認し記述することである.ゴウ地域における 地球化学総合調査の結果を概観すると以下の通りである.地質層序は 火山岩類および堆積岩類からなり,その下位に第三紀の基盤岩がある. 地表地熱徴候は北東−南西方向のメンゲルーダ断層に沿って分布し, 温泉・噴気・変質岩などからなる.マナガラ,ワトゥ・ウティ,トゥカペラの 各温泉の温度は最高47.5ºCで,湧出量は毎分5〜7リットルである. 温泉はすべて高濃度の酸性硫酸塩泉であることが特徴である.また, メンゲルーダ断層に沿った温泉近傍の地表では粘土化変質がみられる. 土壌ガス水銀濃度の高い場所はマナガラ温泉およびワトゥ・ウティ温泉 の周辺に集中しており,最大564ppbである.AB/2=1000mでの低見掛 比抵抗(10Ωm未満)の水平分布もこれらの温度周辺に集中しており, 北東方向に開いた形状である.この有望地域は少なくとも約2cm²に 及ぶ.低費抵抗帯の垂直分布は深度350〜700mである.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア,ヌサ・テンガラ州フローレス島マタロコ地熱地帯で ワイ・ルジャ断層の位置決定に用いたHead-on測定

Arif MUNANDAR ・ Achmad ANDAN ・ Janes SIMANJUNTAK

Head-on法は,地下に伏在する比抵抗異常をマッピングすることを目的に 開発され,特殊な電極配置を用いる.これはシュランベルジャ配置の 電流電極A,Bの方向に対してほぼ垂直に,第3の電流電極を遠く離れた 場所に追加的に配置するものである.今回の調査では,インドネシアの フェローレス島マタロコ地熱地帯において,破砕帯の位置を決定する ためにHead-on法を用いた.Head-on法の見掛比抵抗プロファイルによれば, ワイ・ルジャ断層は北西−南東方向で北に53º傾斜した正断層 である.マタロコ地熱地帯の主な地熱徴候(噴気,温泉,変質)は, ワイ・ルジャ断層に規制されている.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア東部フローレス島バジャワ地熱地域における比抵抗法 データの解析

内田利弘 ・ Achmad ANDAN ・ ASHARI

インドネシア東部に位置するフローレス島バジャワ地熱地域において インドネシア鉱物資源調査局が取得したシュランベルジャ法電気探査 データについて2次元解析を実施し,地熱貯留層に関する考察を行った. 当該地域にはマタロコ,ナゲ,ボボといった比較的規模の大きい地表 徴候地がある.電気探査はそれらの場所における貯留層構造の解明を 目的として行った.2次元解析はマタロコ地区10側線,ナゲ地区2側線, ボボ地区4側線に対して行った.大部分の側線では,地下浅部に高比抵抗 層が分布し,これは変質をあまり受けていない新期火山噴出物層に対応 するものと解釈される.マタロコ徴候地を含むいくつかの個所では,深部 に高比抵抗基盤を捕らえた.マタロコ徴候地では,低比抵抗層の比抵抗は 非常に小さく,高比抵抗基盤が存在することを考慮すると,下部に有望な 地熱貯留層が存在するものと推測される.しかし,本シュランベルジャ 法電気探査の最大電極間隔AB/2は1000mあるいは2000mであり, 探査深度は十分とはいえず,他の場所で地熱貯留層の存在を示唆する 高比抵抗基盤の存在を確認することはできなかった.


インドネシア東部フローレス島バジャワ地熱地域におけるMT法データの 2次元及び3次元解析

内田利弘 ・ Tae Jong LEE ・ 本田 満 ・ ASHARI ・ Achmad ANDAN

地質調査総合センター,新エネルギー・産業技術総合開発機構, インドネシア鉱物資源調査局間の共同研究の一環として,インドネシア 東部に位置するフローレス島バジャワ地熱地域においてMT法による 比抵抗調査を行った.解析に用いた3次元インバージョン手法は, 平滑化拘束つきの線形化最小二乗法に基づいており,地下の比抵抗 パラメタに加え,見掛比抵抗に含まれるスタティックシフトを同時に 求めることができる.2次元及び3次元解析モデルを比較した結果, 両者が互いに整合性がとれていること,及び,本3次元インバージョン 解析手法を実測のMT法データに十分適用できることを確認した.しかし, 2次元解析,3次元解析とも不完全な要素を含んでいる.地質構造が複雑 で3次元性の強い地域に2次元解析を適用すると,側線下や測方にある 3次元的構造のため,2次元モデルには偽造が生じることがある.逆に, 本研究で用いた3次元解析法では,均質媒質を仮定して求めたヤコビアン 行列(感度行列)をすべての反復で用いているので,コントラストの 大きい構造の場合,得られるモデルの信頼性が悪くなることがある. バジャワ地熱地域の中心であるマタロコ地区における比抵抗解析結果は 以下のような特徴を有している.地下浅部には薄い高比抵抗層があり, これは変質をあまり受けていない火山噴出物に相当する.しかし,地表 徴候のある区域では浅部から低比抵抗を示す.その下部には,調査域全体 にわたって低比抵抗層が広がっている.特に地表徴候地の下は1 ohm-m 程度の低比抵抗層であり,その層厚は400-500m程度である.この低比抵抗は 貯留層の帽岩になっていると解釈され,浅部坑井調査からもモンモロナイトの 分布が確認されている.高比抵抗基盤は地表徴候地の下でも 最も浅く(深度は約500m),西方に向かって急激に深くなっている.


貯留層モデリングのためのインドネシア・フローレス島のマタロコ及び ナゲ地熱地帯における自然電位マッピング

安川香澄 ・ Achmad ANDAN ・ Dendi S. KUSUMA ・ 内田利弘 ・ 菊池恒夫

インドネシア・東ヌサテンガラ諸島・フローレス島のマタロコ及び ナゲ地熱地帯において自然電位(SP)調査が行われた.その結果, マタロコ地域では,地熱徴候地において最大のSP世異常が観測された. 数値シミュレーションの結果は,上昇流域の範囲を示している.一方, ナゲにおいては,明白な正異常を示す特異な1観測点は存在しなかった. ナゲのワエバナ川に沿ったSPプロファイルは,局所的な流出ゾーンが 川に沿っていくつも存在していることを示している.


マタロコ地熱地域の浅部井MTL-1の掘削と地価地質

Sri WIDODO ・ Fredy NANLOHY ・ Kastiman SITORUS

1999年10月,「遠隔離島小規模地熱の探査に関する研究協力(ESSEI)」 の一環として,インドネシア火山調査所(VSI)によってフローレス島 ンガダ郡のマタロコ地熱地帯で浅部調査井MTL-1が掘削された.掘削 予定深度は250mであったが,103.23mまで掘削した時点で突発的な蒸気噴出に遭遇した.坑井をシャットダウンした状態で坑口圧は3bar,地表 での蒸気温度は115ºCであった.蒸気はマタロコ地熱貯留層の深部で 生産され,坑井近傍のワエ・ルジャ破砕帯を通って地表に濡れ出ていたものである.地下地質は,安山岩質凝灰岩,輝石安山岩,安山岩質凝灰 角礫岩および安山岩からなり,中温(120-190ºC)熱水による変質を 受けて2-15%の膨潤度を含む変質粘土となっている.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


マタロコ地熱地域における掘削およびグラウチング工程

J.SIMANJUNTAK and M. YUSUP

マタロコ地熱地域のMT-1井では突発的なブローアウトにより半径20mの 範囲で蒸気のリークが起こったが,グラウチングによりこれを止めること に成功した.安全主義に基づき,本坑井は地表までセメントで埋め戻された.次にリグを一旦分解して,MT-1から35m北東に位置するMT-2井の 地点に移動した.MT-2周辺の地盤はMT-1とほとんど同様に不安定で あることを考慮して,蒸気リークを防ぐためMT-2から半径5mの範囲に グラウチングを実施し,その後リグアップを行った.マタロコ地熱地帯 におけるグラウチングは,結果として,MT-1のブローアウトを起こした 地表断裂からの蒸気リークを防ぐのに極めて有用であった.グラウチング はMT-2周辺の基盤を固めることに成功し,MT-2の掘削中から長期閉鎖 期間まで蒸気リークは全く起こらなかった.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア・フローレス島・マタロコ地熱地帯における調査井MT-1 とMT-2の掘削および噴出試験

末吉喜和 ・ 松田鉱ニ ・ 下池忠彦 ・ 小関武宏 ・ 高橋 洋 ・ 二子石正雄 ・ Kastiman SITORUS ・ Janes SIMANJUNTAK

地熱エネルギーが広く賦存すると考えられているフローレス島のマタロコ地熱地帯において, 2本の調査井を掘削した.坑井MT-1は,ワエ・ルジャ川北側において掘削深度1,000mで計画したが,深度207.26m付近 で蒸気層に遭遇し,蒸気が噴出した.ただちに坑口弁を閉じたが,同時 に坑井周辺の地表部から蒸気が噴出し,坑井周りの地獄化が懸念された ため,MT-1坑口周辺をセメントグラウト作業を実施した.グラウト完了 後,清水注入により噴出を停止させ,坑井をセメントで埋め戻した. 2本目の坑井MT-2は,MT-1と同一基地から掘削深度230mで計画したが, 深度162.35m付近で蒸気層に遭遇した.同深度で仮噴出試験を実施し, 噴出に成功したため,掘り止めを決定した.MT-2では,本格的な噴出 試験をリップ・プレッシャー法により実施し,坑口圧力・蒸気流量の 測定,同時に化学同位体分析のために,噴出流体のサンプリングを行った. 噴出量測定から,本坑井の最大蒸気量は4.57kg/sec.(16.5ton/hr)で あることが確認された.


短波長赤外線反射スペクトルを用いたインドネシア,ヌサティンガラ 東部フローレス島中央部マタロコのMT-1およびMT-2井における 熱水変質鉱物の特徴

Dany ASWIN ・ Fredy NANLOHY

短波長赤外線反射スペクトルは,鉱物の調査,特に鉱化作用に関連する 変質鉱物の認定に広く用いられている.本手法は地熱調査にも,特に 地熱系の物理・科学的特性に関連する熱水変質鉱物の決定に,極めて 有用である.MT-1およびMT-2井において検出された主な熱水変質鉱物 は,モンモリロナイト(±沸石),ハロイサイト,カオリナイト,イライト,ディッカイトである.スメクタイト・グループ(モンモリナイト)と カオリン・グループ(カオリナイト,ハロイサイト,ディッカイト)が 重なっていることは,2種類の流体環境があったことを示している. スメクタイト・グループは非酸化性環境で生成するのに対し,カオリン・ グループは酸性環境で生成する.Al-OHバンドの長波は地表付近から 坑底に向かって減少傾向を示し,モンモリロナイトに富む(Al-OHバンド の吸収が高い)状態からイライトに富む(Al-OHバンドの吸収が低い) 状態へと変化することを反映している.すなわち,Al-OHバンド波長の データにより,地表付近のスメクタイト卓越ゾーンから坑底のイライト 卓越ゾーンへ移化することが明らかとなった.また,このことから 地熱系の熱史も明らかになると考えられる.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア,ヌサテンガラ東部,フローレス島中央部マタロコ地熱 地帯の坑井MTL-1,MT-1およびMT-2による地下地質

Fredy NANLOHY ・ Kastiman SITORUS ・ KASBANI ・ Ajafra DWIPA ・ Janes SIMANJUNTAK

マタロコ地熱地帯はンガタ郡の郡都バジャワ市の東にあたり,東方を エブロボ,北西方をイネリカ,南−南西方をイネリエの各火山に囲まれて いる.本地域の地表地質は第三紀−第四紀の火山噴出物を主とする. 火山活動には少なくとも2回の活動期が識別できる.1回目は第三紀の マウンバウ溶岩と緑色凝灰岩からなる基盤で,2回目は第四紀の ワトゥマヌ,ロトゲサおよび円錐火山群を特徴とする火山岩類である.
浅部井MTL-1,MT-1およびMT-2の坑井地質によれば,MT-1および MT-2の層序はほぼ一致するが,MTL-1はデイサイト質の火山灰を特徴と する.全体として,マタロコ地熱地帯の地下地質は,第四紀のデイサイト 質火山灰と,火砕岩類および普通角閃石安山岩を挟む輝石安山岩から なる.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア・マタロコ地熱系のMT-1及びMT-2井から得られた 流体包有物の研究

佐脇貴幸 ・ 村岡洋文

マタロコ地熱系のMT-1及びMT-2井から得られた流体包有物について, マイクロマーモメトリー及び化学分析を行った.MT-1井坑底部の流体 包有物の均質化温度は,マタロコ地域の地質学的・地球化学的データから 推定されている温度構造と一致する.しかし,MT-2井坑底部均質化温度 データは,推定されている坑底温度(200ºC)よりも20-30ºC程度高い. 全ての流体包有物の塩濃度は低い.MT-1井坑底から得られた流体包有物 についてのガス成分の半定量分析によれば,流体包有物の主成分は H2Oであり,微量のCO2とCH4を伴う.これらのデータは,流体包有物 が,本地熱系の浅部で,少量のガスを含む220-235ºCの凝縮水から形成 されたことを示している.また,MT-2井に関しての,均質化温度と水の 沸騰曲線の比較から,地熱活動開始以降,本地域が少なくとも100m程度 の侵食を被った可能性が示唆される.


インドネシア・フローレス島・マタロコ地熱地帯における調査井噴出 流体の化学・同位体的研究

松田鉱ニ ・ Terry SRIWANA ・ Sofyan PRIMULYANA ・ 二子石正雄

インドネシア・フローレス島のマタロコ地熱地帯において掘削された 調査井MT-2(深度162.35m)から噴出した蒸気一相の地熱流体は, 不凝結ガス濃度が比較的低く(0.61〜0.69wt%),そのガス成分はCO2を 主体(91 mole%)とするものである.その噴出蒸気は地下深部の熱水 卓越層から派生したものと考えられる.水素・酸素・炭素・硫黄・ ヘリウムの同位体組成や微量ガス成分の化学組成から,噴出蒸気中の (H2O)は主にマグマ水の混入もしくは岩石との反応の影響を受けている 天水を起源とし,一方ガス成分のほとんどはマグマ起源であると みなされる.各種の化学同位体温度計及び調査井の坑内実測温度によれば, 比較的浅部に発達する蒸気卓越層の温度は192〜230ºC,深部の熱水卓越 層の温度は270〜306ºCと推定される.調査井MT-2からの距離がほぼ 200m以内にある調査井MT-1及び噴気帯における噴出蒸気の化学性状は MT-2の噴出蒸気と類似しており,それらは共に深部の熱水卓越層を 起源とし,その熱水卓越層が大きな規模で広がっていることを示唆する.


インドネシアのヌサテンガラ州フローレス島マタロコ地熱地帯における 自然電位モニタリングによって確認された坑井操作に対する貯留層応答

安川香澄 ・ Enar KUSDINAR ・ 村岡洋文

インドネシアのヌサテンガラ州フローレス等マタロコにおいて,坑井 操作によって生じる貯留層内の電位変化を検出する目的で,自然電位 (SP)モニタリングを行った.噴気試験の期間にわたり,坑井周辺の 地表のSP分布をモニタリングした.電位の基準点の問題を解決するため, 全測点での電位の平均値を常にゼロと仮定した"相対"自然電位の 概念を取り入れた.その結果,貯留層状態に応じた相対自然電位の 変化がはっきりと観測された.このように,相対自然電位モニタリング は,貯留層範囲およびその水理学的状態を把握に利用することができる.


マタロコ地熱地帯における地質,熱水変質分布と重力,比抵抗分布との 相関について

田篭功一 ・ 齋藤博樹 ・ 小関武宏 ・ 高橋 洋 ・ Sjafra DWIPA ・ 二子石正雄

フローレス島中央部に位置するマタロコ地熱地域他で,地熱構造を抽出 する目的で地球化学的な調査を実施した.地上調査から,マタロコ, ウォロレアおよびゴウの各地熱地帯は重力あるいは地形上から推定 されるカルデラ状構造("バジャワカルデラ"と仮称)内に位置している ことが明らかになった.マタロコ地熱地帯は,バジャワカルデラの南東 の縁部で北西−南東方向の延長1,200mの変質帯で特徴づけられ,これは, ほぼワルエジャ断層に沿って分布している.地表には主としてカオリン, アルナイトの変質鉱物が認められる.また,この変質帯の分布に一致 して,低比抵抗ゾーンが広い範囲で分布された南北系の線構造と ワルエジャ断層との交差点付近は,深部に優勢な地熱貯留層が賦存する ことが推定される.


インドネシア共和国フローレス島中部バジャワ地域のウォロボボ,ナゲ, マタロコ地熱地帯における地熱系に関する概念モデル

赤迫秀雄 ・ 松田鉱ニ ・ 田篭功一 ・ 小関武宏 ・ 高橋 洋 ・ Sjafra DWIPA

インドネシア共和国で遠隔離島小規模地熱の探査に関する研究協力が 実施された.このプロジェクトの主要な目的はインドネシア版地熱資源 総合解析システムを構築することにある.この目的のため,フローレス 島中部のバジャワ地域がモデルフィールドとして選定された.初期に おける広域の地質調査と地化学調査により,バジャワ地域内ではモデル フィールドとして選定された.初期における広域の地質調査と地化学調査 により,バジャワ地域内ではウォロボボ,ナゲ,マタロコ地熱地域 ポテンシャルが高いと推定された.このため,探査の重点はこれら3地熱 地帯におかれた.
ウォロボボ地熱地帯では,変質帯付近のこの断裂帯を高温のマグマ起源 ガスや蒸気が上昇しており,供給源付近は525ºC程度の温度と推定される. このガス・蒸気が地下水に吹き込み,地下300m付近に強酸性SO4型熱水 (170〜180ºC)が分布していると推定される.変質帯の南方約2.5km付近 に湧出するCl濃度の比較的高い温泉水の起源はこのような熱水層の 1つと推定される.また,変質帯は主としてこの熱水層から派生した ガスや蒸気によって形成されたと考えられる.
ナゲ地熱地帯では,ワエバナ川沿いの北東・南西方向の断層に沿って 高温のマグマ起源ガスや蒸気が上昇している.このガス・蒸気が地下水に 吹き込み,地下200m付近に強酸性SO4型熱水(約150ºC)が分布して いると推定される.この熱水が地下水による希釈を受けてワエバナ川 沿いに湧出している.
マタロコ地熱地帯では,マタロコ変質帯周辺の火口丘群から地下へ浸透 した天水を起源とする深部熱水がマグマからの熱やガス,岩石との相互反応によって 形成されている.この熱水はまだ確認されていないが,マタロコ変質帯の東西両側に 推定される南北方向の断裂帯に沿って地下400m ないし500m付近の粘土化した難透水層の下端付近まで上昇している. また,北西−南東方向のワエルジャ断層沿いの断裂帯も熱水の流動を 規制していると考えられる.この貯留層は270〜306ºCの温度と推定 される.この貯留層から派生した蒸気・ガスはワエルジャ断層沿いの 断裂帯に沿って上昇している.これらの蒸気.ガスが浅層地下水に吹き込んで 生成された酸性SO4型熱水がワエルジャ川沿いの地表付近に分布 している.


インドネシア,フローレス島ンガダ郡マタロコ地熱地域MT-2井の長期 噴出

Kastiman SITORUS ・ Fahmi SULISTYOHADI ・ Janes SIMANJUNTAK

調査井MT-2(全長180.02m)は,2001年4月22日から7月14日までの 長期にわたるDおよびD/2タッピングによるオリフィス法坑井試験を 成功裏に終えた.MT-2井の最適生産量は,商業的坑口圧5.5 bargの 条件下で約16.0t/hであり,これはタービン効率を80%,出口圧を 0.5 barとした場合の発電量で1.48 Mweに相当する.この坑口圧では, 生産蒸気は163.0ºC以上(20.28〜21.28ºCの過熱状態)の高エンタルピー 流体または乾き蒸気(2784.0〜2785.3 kj/kg)となる.坑井からの 安定生産を確認するため,噴出試験データのドローダウン解析が行われた.
5回にわたる噴出中のP-Tクスター検層,および噴出/密閉圧力ビルドアップテストの 結果は,深度130〜175mでの温度がさらに高い(182.40〜 192.30ºC)ことを示した.密閉後の圧力回復データ解析によれば,生産 ゾーンの流量は比較的高い(14.43 darcy-meters).この高い流量は, 蒸気流動中のスキャンファクターが負(-5.583)であることに起因する ようである.
坑井MT-2から生産される過熱蒸気は,非凝縮ガスが極めて少ない(0.18 〜0.59 vol%または0.43〜1.83 wt%).H2S,CO2および他の非凝縮ガス 濃度はそれぞれ約0.41〜0.89 ppm,3.74〜15.58 ppm,0〜0.07 ppm である.従って,この蒸気は腐食を起こしにくいものである.

(要旨翻訳:水垣桂子(地圏資源環境研究部門))


インドネシア版地熱資源総合解析システム(iGEMS)の開発

小関武宏 ・ 高橋 洋 ・ 下池忠彦 ・ 比屋根一雄

iGEMSはNEDOが日本国内の探査用に開発した地熱資源総合解析システム (iGEMS)に改良を加え,インドネシア版として構築したものである. iGEMSは市販のパソコン上で最小限のデータを用いて容易に解析が可能 であり,かつGEMSの最大の特徴である「上昇流を加味した3次元温度 分布の推定」及び「資源量算出機能」を実現できる解析システムとして 構築された.iGEMSは大きく二つのプログラムから構成される.IGEMS 本体とSurferである.iGEMS 本体は主に解析機能,断面図データの生成 機能や,解析パラメータや断面線を簡単な地図上で表示しユーザーに 入力させる機能も持つ.Srferは,各種の調査データや断面線を簡単な 地図上で表示しユーザーに入力させる機能である.解析機能は@熱源の 設定,A伝導性温度分布の推定,B活動度指数の推定,Cディスチャージ 域の設定,Dディスチャージ域内での活動度指数の分布,E上昇流動を 加味した温度分布の修正,F容積法を用いた地熱資源量の算定からなる.
本システムを用いてバジャワ地域の資源量を算出した結果,マタロコ地域 では3cm²において74MW,25MW/cm²,ナゲ地域では4cm²において,92MW, 23MW/cm²であった.インドネシアは世界でも有数の地熱発電国であり, 本システムを使用することにより,今後の地熱開発において円滑な資源量 評価が実施されると期待される.