要旨集
地質調査研究報告
Vol.52 No.10 2001


日本の主要なガス田より産する天然ガスの有機地球化学的研究

猪狩俊一郎

これまでにほとんど測定例のないネオペンタンを含む日本の天然ガスの 軽質炭化水素組成を測定した.エタン/プロパン比,ネオペンタン/イソペンタン比,ネオペンタン/イソブタン比の対数間には直線関係が観察 された.この関係は,水素引き抜きによる炭化水素の分解によるものと 説明された.
移動に伴う,軽質炭化水素の分別作用に対する岩石種の効果について 研究を行った.収集の岩石や,鉱物を充填したカラムを用いた ガスクロマトグラフィーにより,それぞれの炭化水素の保持時間を 測定した.メタン,エタン,プロパン,イソプタン,n-ブタン, イソペンタン,n-ペンタンについて測定を行った.層間水を持つ 粘土鉱物,及びゼオライトを用いた場合に分別が観察された. それぞれの炭化水素の保持時間の順番は粘土鉱物やゼオライトの種類 に依存した.また,鉱物の空焼き時間の増加とともに分別は大きくなり, 空焼きなしでは,非常に小さい分別が観察されるのみでだった. これらのことは,分別には粘土鉱物やゼオライトの水か抜けた層間や 細孔が重要であり,鉱物が水和している通常の地下条件下では粘土鉱物 やゼオライトによる,炭化水素の分別は重要でない事が明らかになった.
日本の水溶性ガス田の天然ガスのメタンの炭素同位体比を測定した. その結果,これまで一般に水溶性天然ガスは微生物起源と考えられて きたが,熱分解起源のものも存在することが明らかになった.
秋田・新潟の油田ガスのメタン・エタン・プロパンの炭素同位体比を 測定した.エタンの炭素同位体比とプロパンの炭素同位体比の間には 強い相関が観察された.この相関は速度論的に説明可能だった.一方 メタンとエタンの炭素同位体比の間には弱い相関が観察されるのみ だった.これは微生物起源ガスの混入の影響と推定された.さらに, これらの同位体比を用いることにより,熱分解ガスと微生物起源ガスの 混合率を計算することができ,秋田・新潟の油田ガスは,ほとんどが 両者の混合ガスであることが明らかになった.


日本の中部地方の対照的に異なる科学的性質を持つ白亜紀後期 −古第三紀花崗岩類の成因

石原瞬三・呉澄宇

白亜紀後期−古第三紀の流紋岩類(11試料)と花崗岩(白川29,土岐 7,苗木9,領家10,合計55試料)について,XRFとICP-MS法により11 主成分,32微量成分について分析した.白川地域の花崗岩類では苦鉄鉱質アンクラーヴが 優白質花崗岩に混在する.白川花崗岩類はハーカー 図上で高ナトリウム組(モンゾ閃緑岩−花崗閃緑岩)と低ナトリウム組 (花崗岩)とに分けられる.前者は同様な化学的特徴をもつ,現在の飛騨帯に 見られるような苦鉄鉱質火成岩起源の変成岩類や花崗岩類に 由来するものと考えられる.一方,花崗岩はハプロ花崗岩と呼べる 珪長質度を持ち,そのRb/Sr比は分別残液に見られる高い値を示さず, これは中性火成岩の部分溶融に由来するマグマの初期溶融相と判断 される.共にY, HREEに乏しく,源物質に柘榴石などの存在が推察 される.
山陽−領家帯の白亜紀後期−古第三紀の花崗岩類は美濃帯とその南方 延長部の領家変成岩類に貫入するIタイプチタン鉄鉱系であり,山陽帯 の土岐・苗木が厚顔は親石元素に富むが,苗木花崗岩では特にRb, Y, Th, UおよびRb/Srが高い.そのREEパターンはHREEに富むフラット型で 著しい負のEu異常を示し,これが分化したIタイプマグマから固結 したことを暗示する.